【2018年1月~】積立NISA創設! 現行NISAと何が違う? | MONEYIZM
 

【2018年1月~】積立NISA創設!
現行NISAと何が違う?

2014年1月からスタートした少額投資非課税制度、通称NISAに2018年1月から新たな種類が加わることが決定しました。現行のNISAとの違いは何なのか、そして現行のものと比べてどのような点において優れているのか、この新しい制度について詳しく解説していきます。

そもそもNISAとは

NISAとは少額投資非課税制度の愛称であり、そもそもはイギリスのISA(Individual Savings Account)という制度を手本にしたものです。イギリスでは国民の約4割が、貯蓄や投資の手段としてこの制度を利用しています。NISAのNはNIPPONのNであり、これには日本での定着を願う気持ちが込められています。
NISAを簡単に説明すると、その正式名称「少額投資非課税制度」からも読み取れるように、少額の投資に対しては税金が課されないという内容です。本来、投資で得られた利益に対しては20%の税率で税金が課されますが、専用の口座(NISA口座)を郵便局や各金融機関にて開設し、上場株式や投資信託をそこから購入すると、そこで発生した配当金や利益などが非課税になります。非課税となる条件は各NISAの種類によって異なるので、NISAの種類をよく確認しましょう。
この制度を上手に活用することができれば、本来税金がかかってしまう投資による利益をそのまま受け取ることが可能になり、通常より多くのお金を得ることができると考えられます。また、投資上限額も他の投資と比べて、さほど大きな額ではありません。この2つのポイントによって、比較的気軽に投資を始めることが可能になると考えられます。このように、NISAはより幅広い人が投資を気軽に行えるようにするための制度なのです。

現在あるNISAの種類

現在、NISAには一般のNISAとジュニアNISAの2種類があります。ここではその2つがそれぞれどのようなものなのか説明していきます。

一般のNISA

先ほど説明した通り、NISAは、専用のNISA口座で投資の取引を行うことによって、その投資によって得られた利益や配当金にかかる税金がなくなるという制度です。しかし、全ての投資に対してこれが適用されるということはなく、もちろん非課税となるためにはいくつかの条件があります。
まず、「少額の投資」という条件があるように、非課税となる投資額の上限は年間120万円です。つまり、毎年120万円までは投資をしても、その投資した商品の値上がりによる利益や、その商品による配当金に対して税金が発生しなくなるということです。ただし、年間120万円以下という言葉の意味は、例えば一年のはじめに120万円分の投資商品を買って、それが値上がりしたため年内にすべて売ってしまった場合でも、120万円の購入枠は全て使い切ってしまっているので追加で購入することはできない、ということです。
また、一つの口座が非課税となる期間は5年間で、期間中の払い出しは自由です。そして、毎年上限120万円の口座を開設し続け、最大10年間制度が継続します。これらを総合して考えるとつまり、5年間で最大600万円の投資によって得られる利益が非課税になるということです。5年間の期限が切れてしまった場合には、それをすべて売却する、普通の口座に移す、あるいは新しいNISA口座を作る(その年の最大120万円分を割く)ことで今持っている資産を移管する、という方法をとることができます。

ジュニアNISA

ジュニアNISAとは、その名の通り子ども向けのNISAです。とは言っても、実際に子どもが投資を行うことは非常に難しいため、ほとんどの場合では保護者が代わりに資産を運用することになります。
ジュニアNISAは、先ほど説明した一般向けのNISAと内容はほぼ同じですが、非課税限度投資額は80万円であり、自然災害など特別な事情がある場合を除いて原則、18歳になると払い出すことができます。
ジュニアNISAは、その特性上、大型投資を行うためというよりも、子どもの将来の教育費などのための貯蓄に用いられるケースが多いです。また、単純に投資の非課税枠を増やすために用いることも可能です。例えば家族構成が夫婦と子供1人の場合、ジュニアNISAとNISAの両方をフルで活用すれば年間非課税枠が320万円になります。

積立NISAは何が違う?

ここまで従来のNISAについて説明してきましたが、では新たに始まる積立NISAとはどのようなもので、現行のNISAとはどのような点において異なるのでしょうか。詳しく説明していきます。

積立NISAの概要

積立NISAは、年間40万円の投資信託に対する投資を上限に、20年間にわたってその投資によって得られる配当金が非課税になるというものです。また、一概に投資信託と言っても細かな規定があり、条件としては信託契約期間が無期限あるいは20年以上であること、毎月分配型ではないこと、そしてヘッジ目的の場合を除きデリバティブ取引を行わないことなどが挙げられています。その対象となる商品は、約5,400の公募株式投資信託の中でわずか50程度と非常に限られています。
その主な理由は、積立NISAはより少ない投資額に対してより長期間にわたって非課税が続くことによって、通常のNISAと比べ長期にわたった安定な投資を実現することを主な目的としている点にあります。

現行NISAとの違い

ここでは説明を簡潔にするため、ジュニアNISAは比較対象外としてしまいますが、やはり一番大きな差は非課税投資額の上限と、一つの口座の非課税期間の長さです。現行のNISAでは、投資ができる額が比較的多くても期間が短いため、将来的に成長しそうな商品を持っていても、非課税期間が終わってしまった場合に手放さなければならなくなる可能性があります。しかし積立NISAを利用すれば、最初に投資できる額こそ少なくなるものの、より長期的に安定した成長が見込める商品に投資すれば、長期間にわたって非課税の恩恵を受け続けられるようになります。
また、対象となる商品の範囲も、現行のNISAと比べて先ほど説明したように狭くなっています。現行のNISAでは、比較的価格変動が激しい株式や投資信託もすべて適用範囲内になっていますが、積立NISAでは単価が安く、価格変動が緩やかでなおかつ予測しやすい種類の投資信託のみが適用範囲内になっています。積立NISAは、得ることができる利益は少ないものの、従来のNISAよりもさらに負担もリスクも少なく、長期間にわたって安心できる投資を実現できる可能性を持っています。

積立NISAの目的

先ほど述べたように現行のNISAとの違いは、積立NISAがより長期にわたって安定的に資産形成できるように支援するための制度であるということです。
日本の家計における投資信託などへの投資の割合は欧米に比べて低く、多くの家計では預金をすることで資産を蓄えています。実際、預金金利はそれほど高いものではなく、得ることのできる利益は比較的少ないと言えます。また同時に、預金が増えても経済に対する活性化効果はあまりありません。
一方で、投資は預金よりも多くの利益を得られる可能性はもちろんあるものの、損失が出てしまうリスクがあるというのもまた事実です。
このリスクをなくしつつ投資を行うためには、長期にわたって資産を分割して安定な商品に対して投資を行うことが有効であり、積立NISAは比較的安定な商品に対象を絞り、投資によって得られた利益を非課税にすることによって、これを推進しようという目的があります。そして、安定な商品に対する投資を毎年文字通り積み立てていくことで、投資による利益を増やすと同時に、預金と同様に貯蓄が可能です。利用者にとっても、安定な商品に投資しているため損失のリスクが少なく、貯金するのと同じような感覚で、預金利息よりも多くの利益をあげることが可能です。さらに、より多くの人が投資を行うことによって経済も活性化されることが予想されます。
積立NISAは、安定な商品に対する投資によって得られる利益を長期にわたって非課税にすることで預金よりも利益率の高い投資環境を提供し、より多くの方に対して長期的な投資を促進することで最終的には日本の経済の活性化にもつなげようという狙いがあるのです。

積立NISAのメリット・デメリット

では、ここからはより具体的に積立NISAについて見ていきましょう。積立NISAにはどのようなメリット・デメリットがあるのか、詳しく解説していきます。

積立NISAのメリット

先ほど述べた通り、積立NISAは投資上限額が比較的低く、適用対象も比較的安定な商品で、適用期間が長く設定されています。そのため投資による大幅な損失のリスクは低く、仮に価格変動等によって多少の損失が出てしまっても、適用期間は非常に長いので焦る必要もありません。何と言っても安心しながら、税金の心配もせずに投資を続けられる、というのが積立NISAの最も大きなメリットです。

積立NISAのデメリット

積立NISAのデメリットとして挙げられるものは様々ありますが、まずは現行のNISAで考えられる様々なデメリットと同様のものについて説明します。
一つ目は、損益通算ができないということです。通常の口座での投資の場合、ある口座で損失が出ても別の口座での投資で利益が出ている場合は、その利益を使って損失を相殺することが可能です。しかし、NISA口座ではこれが可能ではありません。そのため、例えばNISA口座で20万円の損失が出ていて、別の一般口座で20万円の利益が出ている場合、通常ならば損益通算をして利益0円とみなし税金が発生しないのですが、片方がNISA口座である場合20万円の利益に対して税金がかかってしまいます。また、損失を翌年以降に繰り越すこともできないので注意が必要です。
次にあげられるのは、NISA口座の期限が切れてしまった後の商品の扱いです。NISA口座である商品を購入し、それを保有し続けてNISA口座の期限が切れてそれを一般口座に移した場合、その商品を移した時点の資産価格が取得価格とみなされてしまいます。価値が上がっている分には問題ないですが、下がってしまった場合が問題です。例えば最初に30万円で購入し、NISA期間終了時に20万円まで値下がりしてしまった場合が挙げられます。これをそのまま一般口座に移すと、新たに取得価格が20万円であるとみなされてしまい、仮にその後再び値上がりし25万円になった場合、増えた5万円に対して税金が課されてしまい、当初の30万円からは損をしているのにさらに税金がかかってしまうという危険性があります。
また、現行のNISAと異なる点として、ロールオーバーが認められていません。通常、非課税期間が終了すると、時価で課税口座に移すか、翌年のNISA口座を活用して非課税保有枠を続けることができます(ロールオーバー)。これが積立NISAでは今のところ認められていません。

☆ヒント
個人の資産運用をする場合、中長期的な視点でお金を管理することは非常に重要です。NISAに限らず、株式や投資信託を用いた投資については税金がつきものです。
どのような資産運用が節税対策、相続税対策として有効なのか、自分に適しているのかということについては、専門家である税理士と相談することをおすすめします。

まとめ

積立NISAは、長期間にわたって安心できる投資を可能とした画期的な制度ではありますが、大きな利益を期待して投資を行う場合には向かないというのもまた事実です。NISAを活用する場合は、そのメリット、デメリットを把握した上で判断すると良いでしょう。

山本麻衣
東京大学卒。現、同大学院所属。
学生起業、海外企業のインターンなどの経験を経て、外資系のコンサルティング会社に内定。
自分の起業の経験などを踏まえてノウハウなどを解説していきます。
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