後継者問題に立ち向かう!
事業承継型M&Aは中小企業の福音となるのか
後継者問題に立ち向かう!  事業承継型M&Aは中小企業の福音となるのか

2016/11/25

 
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後継者不足が深刻で中小企業が年々減少する中、廃業を考える前に事業承継型のM&Aを検討してみませんか?
今回の記事では、M&Aを使った事業承継のメリットやプロセス、実際の事例などについて解説していきます。

加速する中小企業の減少

ここ数10年でIT化やグローバル化が大きく進み、中小企業を取り巻く環境が大きく変化しました。そのような中、中小企業庁調べによる中小企業の数は年々減少しており、会社を継続することが困難であることが読み取れます。
この中小企業数の減少と平行して、会社の社長の平均年齢も徐々に高齢化しています。ここから、企業数減少の背景に、事業承継が円滑に進んでいないことがあるといえるでしょう。
事業承継における問題点は、後継者不足の現状に加えて、経営者の高齢化による経営意欲の低下が挙げられます。人間誰しも高齢になると新しいことへの挑戦意欲が低下し、それが経営者であれば、新しい事業への挑戦や投資判断に影響が出てしまうことが多々あります。
ここで、後継者不足についても経営意欲の低下についても同時に解決することが可能なのが、今回解説する事業承継型M&Aです。このM&Aを利用した方法は、高齢になった経営者の体力低下に起因した消極的な事業承継と比べて、「攻めの事業承継」です。

図 中小企業数の推移 (出典:中小企業白書2016年版)

M&Aで会社の新たな価値を創造

事業承継型M&Aとは

M&Aとは、”Mergers and Acquisitions(合併と買収)”の略で、複数の企業を1つに合併したり、ある企業が他の企業の株式や事業を買い取ったりすることを指します。M&Aというと、身売りやマネーゲームなどの印象が強く、自らの会社を大切に思う中小企業経営者にとって、敬遠しがちなものかもしれません。しかし近年では敵対的M&Aは意外と少なく、売り手と買い手双方がうまくコニュニケーションした結果の、円満なM&Aが増加しているのです。

事業承継型M&Aのメリットとデメリット

メリット

・後継者が不足している場合、外部に候補を求めることができる
・従業員の雇用と取引先との関係を継続することができる
・売り手企業と買い手企業のシナジー効果で、更なる価値の創造が望める
・財政状態が安定する
・売却資金で負債を清算できる可能性

デメリット

・シナジー効果が見込める相手企業を見つけるのには時間がかかる
・従業員や取引先との信頼関係を損なうリスクも存在する

中小企業で事業の後継者がいない場合、廃業という選択肢を検討しがちです。しかし事業承継にM&Aを利用すると、上に挙げたメリットのように社員の雇用は継続され、経営者としての連帯保証や担保も解除されるため、経営者自身が幸せなリタイアができるかもしれません。
その上、会社の事業を考えてもメリットがあります。従来の事業承継では税金対策に主眼が置かれたのに対し、M&Aでは売り手企業と買い手企業の経営資源が組み合わさるため、財政状態は安定しやすくなります。その上で、両者の事業がシナジー効果を発揮し、会社が更なる価値を創造できる可能性もあります。会社を売り出すにあたっては、M&A後に生まれる新たな価値をベースに交渉すれば、現状で特殊な技術や高いブランド力がなくとも、評価してもらえることもあるでしょう。

M&Aを行うにあっての最大のポイントは、そういったシナジー効果を発揮できるような相手を見つけることです。相手としては、知名度や会社の規模などではなく、売り手の企業の経営資源を尊重してくれるような企業が望ましいです。しかし、そのような企業を見つけ、話をまとめていくにはかなりの時間がかかるといえます。
また当事者間の関係性にも、注意を払う必要があります。中途半端な状態でM&Aに関する情報を従業員や取引先が知ったところで、多くの場合で否定的な意見が来るはずです。M&Aを行う目的が、会社を維持・発展させ、新たな価値を想像するためであることを常に認識した上で、周囲の納得を得ながら交渉を進めていきましょう。

事業承継型M&Aのプロセス例

一般的に、M&Aを用いた事業承継は、以下のプロセスの順に進められます。

専門家への相談

まず顧問税理士やM&A専門のコンサルティング会社など、専門家に相談します。その際、売り手と買い手双方に中立に接し、業務の範囲を明確に説明してくれるような、優良な専門家を選びましょう。

戦略の企画立案

なるべく短い期間でM&Aにたどり着くために、自社の経営状況把握や譲渡理由の明確化、また他の選択肢との比較など、戦略を事前に練っておきます。

買い手企業のリスティング

仲介者等の力を借りて、買収を考えている企業をリストアップしていきます。その中で、目的にあった条件の選定、相手企業へのアプローチ方法などを検討します。

予備的デューデリジェンス(買収監査)

デューデリジェンスとは、企業買収にあたって、様々な視点から企業の価値を測ることを言います。このプロセスでは、考えの共有を目的として、売り手当事者間での情報交換やシナジー効果の検証などを行います。

条件交渉

ここでは、双方で緊密なコミュニケーションを取ることで、諸条件のすりあわせを行います。注意すべきなのは互いに歩み寄って、妥協点を見つける必要があることです。そのため、要求する項目に対し優先順位をつけておき、主張の妥協点を明確にしておきましょう。

基本合意書の締結

交渉の結果合意した内容を確認し、基本合意書を作成します。お互いの主張が盛り込まれているか最終確認を行い、調印後は公表のタイミングを検討しましょう。

デューデリジェンス

このプロセスでは、実際に買い手企業側の監査人が売り手企業を訪れ、デューデリジェンスを行います。事前に情報開示のための資料を準備する必要がありますが、信頼関係構築のためにも、すべての情報を包み隠さず開示しましょう。

最終契約の締結

基本合意書で留保していた事項の再交渉を行った上で、最終契約を締結します。最終契約書には、譲渡価格や譲渡対象、決済方法やその他合意事項が明確に記載されます。

引き継ぎ

3ヶ月程度の時間をかけて、経営陣の引き継ぎを行います。

上記のプロセスを考慮すると、交渉開始から最終契約の締結までで、短くて2〜3ヶ月、長くて半年ほどの期間がかかります。
これらのプロセスの中で、最も大切なのが両者の信頼関係を構築することです。大企業同士のM&Aであれば、公開入札といったドライな方法で乗り越えていくことも可能です。しかし中小企業に関しては、経営者の個人的な事情や、情報の非対称といった問題が多くあるため、緊密なコミュニュケーションなくしてM&Aにたどり着くことは困難でしょう。

事業承継型M&Aの事例

事例1

経営者が高齢で後継者探しに苦しむ集団指導学習塾・Aゼミナールは、会社存続と雇用継続のためM&Aを検討しました。そこで個別指導学習塾・BゼミナールがAゼミナールを子会社化し、全従業員の雇用を継続しました。
その結果、AゼミナールとしてはBゼミナールの講師育成ノウハウや経営人材を得ることができ、Bゼミナールとしては集団指導のノウハウを取り入れた幅広い指導が可能となり、顧客基盤の拡大にも成功しました。

事例2

経営者が高齢で特殊印刷業を営む株式会社Aは、会社存続と雇用継続のためM&Aを検討し、総合印刷業を営む株式会社Bの子会社となりました。
結果として、株式会社Aは印刷資源を共同で仕入れることでの原価の低減、株式会社Bが持つ顧客への印刷の提供から、利益拡大を果たしました。株式会社Bとしては、外注していた特殊印刷を内製化することで、収益率の向上に成功しました。

事例3

弁当製造と宅配を営む株式会社Aは、外食産業を営むB株式会社の子会社となりました。
その結果、全従業員の継続雇用を果たした上で、B株式会社は食品調達などの仕入れルートや、食品加工工場の共通化を行うことで、より両事業の生産性を高め、全国展開に成功しました。

まとめ

後継者探しに苦しむ中小企業経営者にとって、事業承継型M&Aは理想的な選択肢の1つといえます。専門家とよく相談した上で、M&Aによる新たな価値の創出を検討してみてはいかがでしょうか。

細井山豊
東京大学卒。現、同大学院所属。
ベンチャー企業の経営やビジネスを学んでおり、経営に役立つ様々な知識やノウハウを習得中。
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