命運を分ける経営戦略!
成功事例から学ぶ、知っておくべきIT戦略
命運を分ける経営戦略!  成功事例から学ぶ、知っておくべきIT戦略

2016/10/5

 
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日本では少子高齢化に伴い、働き手が少なくなるという構造的な問題に直面しており、業務効率化・合理化を進める必要性が高まってきています。その解決策のひとつとしてITの導入が挙げられます。今回は、IT導入による具体的な効果、導入実態について分析し、解説していきます。

IT投資による企業への影響

以下の図1と図2は、IT投資を行っている企業と、そうでない企業の直近3年平均の売上高、売上高経常利益率を業種別に比較したものです。(データ元:中小企業庁委託「中小企業の成長と投資行動に関するアンケート調査」(2015年12月(株)帝国データバンク))ここから、売上高、売上高経常利益率ともに、IT投資を行っている企業の方が、そうでない企業に比べて高い水準であることが分かります。

図1 IT投資有無別の企業の売上高
図2 IT投資有無別の企業の売上高経常利益

この結果だけでは、IT投資が売上拡大や利益率向上の要因となっているのか、売上高と利益率が高い企業がIT投資を行っているのかが分かりません。
経済産業省の企業活動基本調査のデータを用いて、売上高経常利益率に着眼し、IT投資前後の売上高経常利益率の変化を時系列で見ていくと、2007年度から2013年度まで一度もIT投資をしていない企業の売上高経常利益率は、2007年に3.0%、2010年に2.6%、2013年に3.0%と推移しているのに対し、2010年度にIT投資を開始し、2013年度まで継続している企業の売上高経常利益率は、2007年に2.6%、2010年に2.6%、2013年に3.8%と推移しています。後者の企業の方が、前者に比べて大きく売上高経常利益率を伸ばすことができたのは、IT投資を開始することで業務効率化や売上拡大が行われ、収益力が向上したことが要因だろうと考えられます。

自社ホームページ・ソーシャルネットワーキングサービスの活用

ひとえにIT投資と言っても、その導入例は数多くあります。ここでは、自社ホームページとソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の効果について見ていきます。以下の図3では、自社ホームページの活用とSNSの活用によって得られる効果を示したものです。
この結果より、自社ホームページの開発・活用によって得られる効果を高い順に見ると、

1.営業力・販売力の強化
2.売上の拡大
3.顧客満足度の向上・新規顧客・新市場開拓

となっています。
一方で、SNSによって得られる効果を高い順に見ると、

1.社内の情報活用の活発化
2.営業力・販売力の強化
3.顧客満足度向上・新規顧客獲得・新市場開拓

となっています。また、ここで特徴的なことは、「業務プロセスの合理化・意思決定の迅速化」や「コスト削減」、「利益率・生産性の向上」の項目については、SNSの活用の方が自社ホームページの開発・活用に比べて効果を得られたという回答が多くなっているという点です。

図3(引用:中小企業庁「中小企業白書2016」)

これらの結果から、ホームページやSNS活用をすることで、顧客との接点が広がり、営業力の強化や売上拡大に繋がると考えられます。さらに、SNSは拡散されれば多くの人にリーチするという特性上、社内情報活用の活発化、プロセスの合理化、コスト削減の効果が期待されると推察されます。

電子商取引による効果

ITの進歩によって、日本の電子商取引市場は、BtoB、BtoCいずれにおいても市場規模、利用率が拡大傾向にあります。電子商取引は、BtoBでいうとEDI(電子情報交換)、BtoCでいうとEC(eコマース)などが挙げられますが、電子商取引を行っている中小企業はどのような効果を得ているのでしょうか。 BtoBについては、「コスト削減」、「業務プロセス合理化・意思決定の迅速化」、「企業間連携の促進」の順で効果が実感されており、一方でBtoCについては、「売上の拡大」、「営業力・販売力の強化」、「顧客満足度の向上・新規顧客獲得・新市場開拓」の順になっています。

図4(引用:中小企業庁「中小企業白書2016」)

以上から、BtoBについては、企業間の販売活動や仕入れ活動、受発注のやり取りなどがオンラインで行われるようになり、従来の紙伝票作成といった時間や手間、コストが削減され、スピーディーなコミュニケーションにより、取引先との連携が強化されているのだろうと考えられます。 またBtoCについては、インターネットを通して商品を紹介・販売することで、新しい販売チャネルが構築され、新規顧客の獲得、販売量の増加につながっているのだろうと推察されます。

会計に関する調査

中小企業における記帳を行う際のIT利用状況

(株)帝国データバンクが実施した「平成24年度中小企業の会計に関する実態調査」によると中小企業における記帳を行う際のITの活用状況を見てみると、パソコンを利用して記帳している企業が76.5%なのに対し、パソコンを利用せず手作業で記帳を行っている企業は20.8%という結果が出ています。また、記帳をパソコンで行っている企業の内、会計ソフトを使用している企業は69.4%、利用していない企業は30.2%にのぼることがわかりました。 ITを導入していない中小企業では、記帳ミス、時間のロス、発生するコストが企業の生産性や収益力を圧迫しているのだろうと考えられています。

EDIの取り組み

企業間の商取引において、受発注や見積もり、決済など、さまざまな文書のやり取りが生じます。EDIとは、従来紙でやり取りが行われていた部分を、標準な形式に統一し、オンラインで行うシステムのことです。 中小企業における電子商取引の利用状況について、(株)帝国データバンクが実施した「平成24年度中小企業の会計に関する実態調査」によると、全体に占める26.5%の中小企業が、記帳すら会計専門家に外注しており、自社の経営の実態を自ら把握することが難しい状況にあるということが分かりました。 中小企業庁は、EDIなどの電子商取引を開始することでコスト削減、業務プロセスの合理化が見込めると推測しており、ITを適切に活用すれば、財務・会計に関する知識がなくても自社の経営の実態を手軽に把握し、経営改善に繋げられるようになるだろうと、取り組みの推進をしています。 バックオフィスの業務が効率化されることによって、従業員を減らすことができたり、余剰となった人材を他の業務分野に割り当て、従業員数を変化させることなく、業績を向上させたりといった効果が期待できます。

WEBサイトによる集客とIT導入により業務効率化と利益率改善させた事例

A社は、石川県にある温泉旅館を経営している企業(従業員数50名)です。創業以来、顧客のメインは旅行代理店経由での、会社旅行などの団体客が中心で、手堅く業績を維持していました。しかし、景気の低迷とともに、宿泊業界全体の市場規模が縮小されていき、顧客構成が団体客から個人客に変化し、それにともなって顧客単価が減少したため、業績悪化に苦しんでいました。 そこで、IT導入により、これまで属人的であった業務プロセスの見える化を進めていきました。まず、これまでの旅行代理店に依存していた営業体制を捨て、多様なニーズに対応し、個人客の集客数を伸ばすために、自社のホームページを開設しました。ホームページのアクセスログを解析し、どのようなページがアクセスを伸ばしているのか、どのような写真が予約成約率に影響を与えるのかなどを分析し、これらのPDCAを回すことで、ニーズを洗い出し、商品企画を練りました。 次に複雑化した業務の効率化を行うために、クラウドコンピューティングを利用したシステムを導入しました。それまでは、電話やFAXなどの予約から予約台帳に転記するなど、全ての作業が紙で行われていたため、時間やコスト、転記ミスなどもあり、非効率的でした。部門ごとに分離されていたシステムも、同システムで連結することで、合理化・省力化を実現。また、システム管理により集計された顧客属性や販売データなどを一元管理することで、顧客属性にマッチした宣伝や商品開発を行うことが可能となりました。 これまで丸投げしていた記帳作業も、税理士と相談した上で会計ソフトを導入し、自計化を進めていきました。業務プロセスの改善によってバックオフィスの工数に空きが生じたので、その余剰分を記帳業務に割くことができるようになりました。自計化によって得られた会計データと、業務管理システムによって得られた顧客データを利用することで、よりよいサービスを効率的に販売することができ、利益率を高めることができました。

まとめ

本記事ではIT導入がもたらす中小企業への影響について解説しました。IT導入が全てではありませんが、それによって手作業で非効率だった仕事が大幅に削減される可能性もあります。自社の事業の様子を見極めて、IT導入のタイミングを検討してみるのも、経営戦略のひとつの手だろうと考えられます。

山本麻衣
東京大学卒。現、同大学院所属。
学生起業、海外企業のインターンなどの経験を経て、外資系のコンサルティング会社に内定。
自分の起業の経験などを踏まえてノウハウなどを解説していきます。
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