クラウド型会計ソフトのメリット・デメリットとは? | MONEYIZM
 

クラウド型会計ソフトのメリット・デメリットとは?

現在、様々なモノやサービスがインターネットと繋がり、「クラウド化」が進んできています。その背景もあり、2013年頃から急速にクラウド型会計ソフトが普及し始めました。
今回は、クラウド型会計ソフトのメリット・デメリットを比較した上で、どのような会社がクラウド型会計ソフトを導入するべきなのか、考察していきます。

クラウド型会計ソフトとは?

「クラウド型」というのは、インターネットを通じて遠隔地のサーバにアクセスし、そこにインストールされているアプリケーションやソフトウェアを利用して、データなどを管理するシステムのことです。つまり、「クラウド型会計ソフト」とは、インターネット上で会計処理を行うソフトのことを言います。
クラウド型会計ソフトと一重に言っても、freee社の「クラウド会計ソフトfreee」、マネーフォワード社の「MFクラウド会計」、弥生社の「弥生会計オンライン」などありますが、従来の「インストール型会計ソフト」との一番の違いは、パソコンにソフトをインストール必要がなく、特定のデバイス以外でも、インターネットに接続できる環境であれば、いつでもどこでも使えるという点です。
クラウド型会計ソフトとインストール型会計ソフトの主な違いは以下のようになっています。

  クラウド型会計ソフト インストール型会計ソフト
インストール 不要 必要
OS Windows・Mac両方に対応 ソフトにより対応OSが異なる
デバイス パソコン、スマホ、タブレット端末などから利用可能 パソコンのみ利用可能
支払い 月額制 or 年額制 パッケージ購入 ・ダウンロード購入
バージョンアップ 無料 有料
インターフェース
(構成・操作感など)
マウス入力 キーボード入力
グラフレポート あり なし
預金取引 自動取得可 手動

クラウド型会計ソフトの普及率

デジタル領域専門の市場・サービス評価機関、デジタルインファクト(本社:東京都文京区 梅田佳夫社長)が行った「クラウド型会計ソフト」に関する調査によると、クラウド型会計ソフトの利用率は13.0%(2016年8月4日)となっており、2014年12月に行った調査の5.0%と比較して、8.0ポイント上昇しています。
出典:第四回 クラウド型会計ソフトの利用動向調査を実施しました(http://digitalinfact.com/press160804/
このデータから、依然、インストール型会計ソフトのシェアが大半を占めるものの、クラウド型会計ソフトが着々と浸透してきている様子が分かります。

クラウド型会計ソフトのメリット

インターネットがあれば、いつでもどの端末からでも利用可能

ソフトをインストール必要がないため、デバイスを選びません。アカウントを作成し、IDとパスワードを入力すれば、パソコン、スマートフォン、タブレットなどからもアクセスが可能です。当然、どのOSからでも利用することができるので、会社のパソコンがWindowsで、自宅のパソコンがiOSでも全く問題ありません。
自宅・出張先などからでも遠隔でデータを操作することができるので、その自由度の高さが大きなメリットのひとつと言えるでしょう。
また、データがインターネット上で管理されているため、紛失・盗難の心配もなく、バックアップを定期的に取る必要もなくなります。

銀行、クレジットカード会社など金融機関の取引明細を取り込み、自動で仕訳が可能

クラウド型会計ソフト導入によって、大幅な工数削減、経理業務の効率化に繋がるだろうと考えられるのが、この金融機関の取引明細の取り込み・自動仕訳機能です。多くの会社の場合、現金勘定以上に金銭のやり取りが多いのは預金やカード決済などでしょう。この入力の手間が短縮されれば、これまで経理業務の時間を全く取れなかった会社でも、自計化の足がかりになると考えられます。

事前に金融機関に届け出を出す必要などはなく、使用するネットバンクなどのIDとパスワードさえあれば、いとも簡単に取引明細を取り込むことができます。また、ただ取り込むだけではなく、取引内容に応じて勘定科目や補助科目を推測して仕訳を自動で作成してくれます。現段階では、取り込み後の自動仕分けの精度はまだ完全ではないため、仕訳ルールの学習機能などを使って手動で設定を行うなどの工夫は必要です。

様々な新しいサービスとの連携

クラウド型のPOSレジや請求書システムなどと連携することができ、これを行うことによって、レジデータや発行した請求書データをそのまま売上として計上してくれるので、計上漏れや金額の誤りなどが発生しなくなります。
その他にも、経理管理システムと連携するなどすれば、入力・訂正工数も大幅に削減できます。

複数人で同じデータを見ることができる

クラウドでデータを一元管理しているので、複数人でデータを確認することができます。普段は経理担当者が経理業務を行っていても、経営者が必要なタイミングでデータを確認することができます。
また、税理士も常に最新のデータを確認することができるので、従来のように、会計データをバックアップして、データをメールで送信するといった受け渡しの作業が不要になり、税理士と経営者間のコミュニケーションがより円滑になります。

クラウド型会計ソフトのデメリット

IT技術の進歩により急速にシェアを伸ばしているクラウド型会計ソフトですが、インストール型会計ソフトと比べて劣る点は当然あります。ここではクラウド型会計ソフトのデメリットについて見ていきましょう。

トラブルでインターネットが使えない状況になると困る

インターネットの環境に依存することになるので、万が一インターネットが使えないような状況になってしまったら会計データの確認・更新ができなくなってしまいます。
また、システムトラブルが起きたときや、サーバのメンテナンスを行っているときは利用することができないので、利用したいときに利用できないということも想定されます。

セキュリティ面の不安

インターネット上に会社の情報を保存するため、サーバに重大なトラブルが起こってしまった場合や、サイバー攻撃などを受けてしまった場合、情報が流出してしまう可能性があります。会計情報を扱う性質上、有力なクラウド型会計ソフトは厳重なセキュリティを設けていますが、このような可能性は0ではありません。
また、IDとパスワードが分かればどの端末からでもアクセスできる利便性の反面、それらの情報を厳重に管理していないとセキュリティ面では大きなデメリットになってしまいます。

インストール型の方がサクサク操作可能

クラウド型会計ソフトの大きなデメリットとして考えられているのが、会計ソフトとしての動きの緩慢さです。
弥生会計などでおなじみの定型仕訳入力では、よく使う科目や摘要を設定し、慣れた人が入力を行うと、とてもスムーズにストレスフリーで仕訳が入力されていきます。しかし、現在主流となっているクラウド型会計ソフトは、簿記の知識があまりない人向けに設計されているため、入力にマウスを多用する場合が多く、従来の会計ソフトで素早く入力できる人からすれば入力が回りくどく、操作感も劣って感じられます。
また、インターネットの接続環境に依存する部分が大きく、画面変更へのタイムラグがあり、なかなかインストール型会計ソフト並にサクサク操作することは難しいのが現状です。インストール型会計ソフトに慣れている人からすると、クラウド型会計ソフトは処理に時間がかかりすぎてしまい、ストレスに感じてしまう可能性もあります。
そのため、仕訳入力作業を大量に行う場合、取引明細の取り込み・自動仕訳のメリットと、操作感の低さ・緩慢さのデメリットを天秤にかけた上でクラウド型かインストール型かを検討する必要がありそうです。

ランニングコストがかかる

多くの場合、クラウド型会計ソフトのサービス形態は月契約もしくは年契約です。つまり、ランニングコストがかかってしまうというデメリットがあります。一方で、インストール型を導入し、数年単位で使う場合、最初の購入以上に費用がかかることはありません。(消費税の変更などに伴ってバージョンアップが必要となるケースはあります。)
また、複数の法人を持っている場合や、法人と個人事業を両方行っている場合など、クラウド型会計ソフトではその事業の数だけ追加料金を支払う必要がありますが、インストール型の場合そのようなことはありません。
クラウド型会計ソフトとインストール型会計ソフトの料金体系の例は、以下のようになっています。

クラウド型会計ソフトX 月額プラン 年額プラン
個人事業 980円/月 12,000円/年
法人 1,980円/月 24,000円/年
インストール型会計ソフトY
個人事業 12,960円
法人 42,120円

上記の例の場合、クラウド型会計ソフトのランニングコストは、インストール型会計ソフトを数年間使った場合と比べると、高くなってしまうことが分かります。

選ぶならクラウド型?インストール型?

以上、クラウド型会計ソフトのメリットとデメリットを比較してきましたが、どちらの方がいいというのは一概には言えません。両者のメリット・デメリットを十分に比較した上で検討する必要があります。

クラウド型会計ソフトを導入したほうがいい会社

経費支払はインターネットバンキング、クレジットカード決済がメイン
色々な端末から経理状況を確認したい
タグ機能により付加的な管理会計データを作成したい
税理士と円滑なコミュニケーションを行い、経営方針を相談したい

インストール型会計ソフトを導入したい方がいい会社

経費支払は現金、ATM振込がメイン
クラウドサーバーの利用に抵抗がある
処理のサクサク感を重視したい
会計の目的はほぼ税務申告のみ
会計・経理の知識があり、使い慣れた会計ソフトがある

まとめ

クラウド型会計ソフトも、インストール型会計ソフトもメリット・デメリットはありますが、以下で説明する通り、会社のステージごとに会計ソフトに求める機能は変わってくるでしょうから、それに応じて相性の良さも変わってくるのではないかと考えています。

例えば、スタートアップで会計事務所に記帳代行を依頼する段階では、多くの税理士が好んで使うインストール型会計ソフトを導入したほうがよかったり、数人規模の事業で自計化を進める段階では税理士から自計化支援を受けながらクラウド型会計ソフトを導入するほうが良かったり、さらに事業が拡大して経理担当者を配置する場合には大量の仕訳作業を行うために操作性の高いインストール型会計ソフトを導入するほうが良かったりします。
以上のようなことを踏まえた上で、会計ソフトを導入する際、あるいは変更する際検討していただければよいと思います。

山田隆裕
慶應大学卒。現、同大学院所属。
大学4年時に公認会計士試験に突破。
自分の知識の定着も兼ねて、会計・財務などに関する知識を解説していきます。
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