起業家応援税制!エンジェル税制を分かりやすく解説 | MONEYIZM
 

起業家応援税制!エンジェル税制を分かりやすく解説

創業間もない会社への投資を行う個人投資家をエンジェル投資家といいますが、エンジェル投資家に対しての税制優遇措置があることを知っていますか?
今回はそんなエンジェル税制の優遇措置、またメリット・デメリットについて、詳しく解説していきます。

エンジェル税制とは?

エンジェル投資家とは

エンジェル投資家とは、スタートアップのベンチャー企業に投資する個人投資家のことをいいます。日本では未だ、金融機関やベンチャーキャピタルから出資を受けるのが一般的ですが、海外ではベンチャーキャピタルに並んでメジャーな資金調達方法として、近年そのプラットフォームが拡大しています。エンジェル投資家が必要とされる背景として、企業のスタートアップ時は実績がないため、金融機関から融資を得ることが難しいことが挙げられます。

ベンチャー企業投資促進税制、通称エンジェル税制は、そんなエンジェル投資家がベンチャー企業に投資することを促進するため、投資家に税制優遇を行う制度のことです。この税制が設置されたのは、ベンチャー企業への投資が促進されることで、急激に変化する世界経済の情勢の中で、国内中小企業の国際競争力を高めていこうという狙いがあります。

エンジェル税制のしくみ

エンジェル税制は、以下のステップを経て税制の優遇措置を受けることができます。

1.ベンチャー企業の株式への投資

はじめに、投資の対象となるベンチャー企業は、自社がエンジェル税制の対象企業であることを確認する必要があります。受ける優遇措置によって対象企業の要件が異なるということは後述しますが、事前確認制度という制度を利用すると、自社がエンジェル税制の対象か否か、経済産業省が確認を行ってくれるため便利です。

またベンチャー企業への投資は、金銭を支払って企業の株式を取得しているという条件を満たす必要があるため、他人から譲り受けた株式や現物出資で取得した株式などは優遇措置の対象となりません。

2.投資契約の締結

エンジェル税制の適用を受けるためには、必要とされる事項を盛り込んだ株式投資契約を締結する必要があります。この株式投資契約書の様式は、経済産業局のホームページ上にあるので、チェックしましょう。

3.経済産業局等の確認

投資先ベンチャー企業が同族会社だった場合、投資家は50%超の株主グループに属していないことが求められます。投資家はこれについてベンチャー企業に誓約して、投資家に確認書を発行します。
また、ベンチャー企業がエンジェル税制の一定要件を満たしていることを確認する確認書を最寄りの経済産業局等へ提出し、確認された時点で経済産業大臣の確認書が発行されます。

4.確定申告

経済産業大臣の確認書、株主グループに属さない要件を満たす確認書、株式投資契約の写しなどを添付したうえで、確定申告を行う必要があります。

エンジェル投資家が受けられる優遇措置とは?

投資家は、「投資時点」・「株式の売却時点」のそれぞれの時点において、優遇措置を受けることができます。

「投資時点」での優遇措置

優遇措置は満たす要件に応じて、A・Bから選択することができます。

優遇措置A

(ベンチャー企業への投資額―2,000円)が、その年の総所得金額から控除されます。
○ベンチャー企業の要件
・創業3年未満の中小企業であること
・以下の要件を満たすこと

設立経過事業年数 要件
1年未満かつ
最初の事業年度を未経過
「研究者あるいは新事業従事者が2人以上」かつ
「常勤の役員・従業員の10%以上」
1年未満かつ
最初の事業年度を経過
上記要件かつ
「直前期までの営業キャッシュフローが赤字」
1年以上2年未満 上記要件または
「試験研究費等が収入金額の3%超で
直前期までの営業キャッシュフローが赤字」
2年以上3年未満 「試験研究費等が収入金額の3%超で
直前期までの営業キャッシュフローが赤字」
または「売上高成長率が25%以上で営業キャッシュフローが赤字」
優遇措置B

ベンチャー企業への投資額全額が、その年の他の株式譲渡益から控除されます。
○ベンチャー企業の要件
・創業10年未満の中小企業であること
・以下の要件を満たすこと

設立経過事業年数 要件
1年未満かつ 「研究者あるいは新事業従事者が2人以上」かつ
「常勤の役員・従業員の10%以上」
1年以上2年未満 上記要件または
「試験研究費等が収入金額の3%超」
2年以上5年未満 「試験研究費等が収入金額の3%超」
または「売上高成長率が25%以上」
5年以上10年未満 「試験研究費等が収入金額の5%超」

「株式の売却時点」での優遇措置

未上場のベンチャー企業の株式を売却した際、損失が発生した場合はその年の株式譲渡益と相殺することができます。その年に相殺しきれなかった場合でも、翌年以降3年間繰り越して相殺することも可能です。

エンジェル税制メリット・デメリット

エンジェル税制によって投資家の優遇措置などはお分かりいただけたと思います。次に、このエンジェル税制によって投資対象となるベンチャー企業はどのような恩恵を被るのか、あるいはそれによって生じるデメリットはあるのか、について解説していきます。

メリット

投資機会の増加

事前確認制度を利用すると、エンジェル税制の対象企業である旨が政府のホームページで公表されるため、ベンチャー企業が投資家と出会いやすくなります。
また、投資を受けるベンチャー企業、投資をするエンジェル投資家、双方の利益となる制度のため、全体としての投資機会が増加して、最終的には将来性のある事業を発展させることにつながります。

節税効果による投資ハードルの軽減

投資家は、ベンチャー企業に投資した時点、また株式を売却した時点で所得税を節税することができます。
また、投資家は株式売却時の損失の相殺によってリスクを軽減できるため、ベンチャー企業への投資ハードルが下がり、その結果、投資が促進されていきます。これによって産業の新陳代謝が活発化され、よりよいサービスや商品などが生まれやすい環境になります。

デメリット

優遇措置Aの適用を行った場合、寄付金控除制度にあたるため、株式の取得原価がその分減少してしまいます。それにより将来株式を売却した際の税金が高くなり、控除による節税効果が小さい場合は損失が生まれる場合もあるため、注意が必要です。

☆ヒント

ベンチャー企業への投資を考えている方は、エンジェル税制を利用した節税対策は重要なチェックポイントと言えます。制度が複雑で不安がある場合は、専門家に相談すると良いでしょう。

また、資金繰り改善といった観点から、ベンチャー企業にとってもエンジェル投資を受けることはメリットがたくさんありますので、エンジェル税制によってさらに成長ができるかもしれません。
もし、会社の資金繰りについてお悩みがある場合は税理士に相談してみると良いでしょう。エンジェル投資による資本金増額も一つの手ですが、その他にも節税などによる資金繰り改善も重要な打ち手になってきます。具体的にどのようにすれば効果がある節税ができるのかなどのご相談がある場合はいつでもお問い合わせください。

まとめ

投資家がエンジェル税制を利用するとベンチャー企業の成長を支えながら自分にとっても節税効果を得られる、一石二鳥の効果を得られます。
また、本税制によってベンチャー企業の新陳代謝が高まり、競争が激化する可能性が考えられます。その中で資金繰りというのは常に重要な位置を占めてくると思われます。税理士は資金繰りに関するプロなので、お悩みがある際は積極的に相談してみると良いでしょう。

細井山豊
東京大学卒。現、同大学院所属。
ベンチャー企業の経営やビジネスを学んでおり、経営に役立つ様々な知識やノウハウを習得中。
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