資金繰りの助け舟! 欠損金繰戻還付制度を知っていますか? | MONEYIZM
 

資金繰りの助け舟!
欠損金繰戻還付制度を知っていますか?

欠損金繰越控除制度に関連して、欠損金繰戻還付制度というものがあります。欠損金繰越控除制度は、課税所得がマイナスになった場合、その欠損金を翌年度以降の課税所得と相殺するものです。一方で欠損金繰戻還付制度とは、欠損金が生じた場合、前年度分として支払った法人税のうち、その欠損金に相当する分を還付してもらうものです。
これらの2つの制度は類似しており、中長期的な目線で見ると大して変わらないように感じられますが、短期的な資金繰りを改善するためには非常に有効な制度であり、使い分けが重要となってくるため、必ず知っておくべきでしょう。
今回は、基本的な節税術でもある、欠損金繰戻還付制度について解説していきます。

欠損金繰戻還付制度とは

この制度は、青色申告書である決算申告書を提出する事業年度に欠損金額が生じた場合(以下、この事業年度を「欠損事業年度」といいます。)において、その欠損金額をその事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度(以下「還付所得事業年度」といいます。)に繰り戻して法人税額の還付を請求できるというものです。
ただし、この制度は、①解散等の事実が生じた場合の欠損金額及び②中小企業者等の平成21年2月1日以後に終了する各事業年度において生じた欠損金額を除き、平成4年4月1日から平成30年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額については適用が停止されています。

つまり、資本金1億円以下の中小企業であれば、平成21年2月以降に終了する事業年度について欠損金繰戻還付制度が適用され、欠損金(財務会計上の赤字)を前期に繰り戻して、前期に支払った分の法人税額の還付を受けることができるのです。

そもそも欠損金繰戻還付制度は、戦後間もない時期で多くの中小企業が赤字に陥っている頃、赤字分をその先の事業年度に繰り越すだけでは将来赤字分を取り戻せる可能性が低く、あまり納税者である中小企業側にとって恩恵にならないということから、シャウプ勧告により提言されたものです。

しかし、還付制度が残り過去に納められた税金を還付する状態が続くと、国の財政を圧迫しかねないという考えがあり、平成4年にこの制度は凍結されました。
ところが平成20年、リーマンショックによって世界規模の不況が訪れ、日本の中小企業もその余波を食らい、多くの企業は赤字に転じてしまいました。そして、不況からの脱出が中長期的に見込めないということから、平成21年、ふたたび欠損金繰戻還付制度を復活させたというわけです。

以上のことから、欠損金繰戻還付制度とは、不況下で中長期的に黒字が見込めない中小企業が多くなってしまう状況を是正するために制定された制度ということができます。

欠損金繰戻還付制度のメリット

上記の通り、この制度は不況下の中小企業にとって非常に役立ちます。繰戻還付制度を受けることで以下のようなメリットがもたらされます。

欠損額を将来に背負い込まなくて済む

欠損金繰越控除の適用期間は9年なので、それを過ぎてしまった場合は欠損金を繰り越すことができません。(ただし、平成28年度税制改正により、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額の繰越期間は10年とされています。)

一方で、欠損金繰戻還付を受けた場合、欠損金は過去に自身が支払った法人税の還付により補われるため、将来に繰り越す必要がありません。そのため、直近の資金繰りに注力する必要がある場合などには有効です。

過去に払った法人税の節税にもなる

欠損金繰戻還付制度による還付額は、以下の式により決定されます。

 還付額=
還付所得事業年度の法人税額×(欠損事業年度の欠損金額(*)
÷還付所得事業年度の所得金額)
*法人が還付金額の計算の基礎として還付請求書に記載した金額が限度となります。また、分母の金額が限度になります。

なお、繰戻還付制度を適用した際、限度額を超えて余ってしまった欠損金については、繰越欠損金として、翌年以降の課税所得から控除することができます。

欠損金繰戻還付制度の適用要件

欠損金繰戻還付制度を受けるには、資本金が1億円以下の中小企業または解散等の事実が生じた場合で以下のすべての要件を満たしている必要があります。

(1) 還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度までの各事業年度について連続して青色申告書である決算申告書を提出していること。
(2) 欠損事業年度の青色申告書である決算申告書をその提出期限までに提出していること。
(3) 上記(2)の決算申告書と同時に欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出すること。

また、資本金1億円以下の法人であっても、資本金5億円以上の企業の子会社は、上記3つをすべて満たしていても適用の範囲外になります。

その他注意事項

適用条件の他にも、欠損金繰戻還付制度に関して見落としてしまいがちな注意点がいくつかあります。

地方税に注意

欠損金繰戻還付制度は国税においてのみ適用されるため、法人事業税や法人住民税といった地方税については適用範囲外なので注意が必要です。法人税の欠損金繰戻還付制度を適用した場合、それぞれの地方税については以下のような取り扱いになります。

●法人事業税
欠損金額が繰越控除の対象として扱われます。
●法人住民税
欠損金の繰戻しによる法人税還付額を、翌年度の法人住民税の課税標準である法人税額から控除します。これを控除対象還付法人税額といいます。

申請には新たな添付書類が必要

欠損金繰戻還付制度の申請には、「還付請求書」と、「控除対象還付法人税額の控除明細書」という、繰戻還付制度の適用以前にはなかった新たな書類を添付する必要があります。

法人税の還付請求をした翌年度の法人住民税の申告において、控除対象還付法人税額を記載することを忘れないようにしましょう。細かい実務的なアドバイスについては、節税に詳しい税理士に相談すると良いでしょう。

☆ヒント
ある事業年度において赤字を出してしまった場合、欠損金繰戻還付制度を適用して資金繰りの改善を図るか、翌年度以降の節税対策として欠損金繰越控除制度を適用するか判断する必要があります。自社の経営状況に応じてどちらを選択するべきか変わってくると思いますが、詳しい資金繰りや節税の悩みについては税理士に相談すると良いでしょう。
また、欠損金額繰戻還付制度を適用した場合地方税は適用対象外となるため、法人事業税が繰越控除の対象になったり、控除対象還付法人税額を計算して明細書を提出する必要に迫られたりします。このような実務的な詳細についても、節税に詳しい税理士ですと気軽に相談することができるでしょう。

まとめ

欠損金繰戻還付や欠損金繰越控除は中小企業の節税対策の基本のひとつです。特に欠損金繰戻還付制度には、上で述べた通り、見落としてしまいがちな注意事項が少なからずあります。この欠損金繰戻還付や欠損金繰越控除を適用する前にはまず税務のプロである税理士と相談することをおすすめします。

山田隆裕
慶應大学卒。現、同大学院所属。
大学4年時に公認会計士試験に突破。
自分の知識の定着も兼ねて、会計・財務などに関する知識を解説していきます。
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