法人成りの手続きをする方へ!
スタートアップ・マニュアル
法人成りの手続きをする方へ!  スタートアップ・マニュアル

2017/1/15

 
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現在個人で事業をやっていて、これから法人成りをしようと考えているが、どのような手続きを踏めばいいのかがわからない―今回はそのような方に向けて、法人成りの諸手続きについて特に重要なポイントをまとめました。

法人成りのメリット・デメリット

法人成りのメリット

①「個人」ではなく「会社」だからこそ使える節税テクニックがある
②助成金が受けられる
③社会的信用度が上がる
④事業継承がスムーズに行える
⑤会社のお金と自分のお金が簡単に線引きできる(経営を明確化できる)
⑥有限責任である

中でも節税テクニックの点を重視して法人成りを検討する人は多いと思いますが、それ以外にもメリットを享受できる点を押さえておきましょう。

法人成りのデメリット

一方で、もちろんデメリットもありますのでしっかり確認しておきましょう。

①事務的な負担が格段に多くなる
②設立の際に法人登記費用が必要
③赤字でも法人住民税の均等割は支払義務がある
④従業員の社会保険や労働保険の負担が発生
⑤交際費が全額費用にならないケースがある

節税のことばかり考えて法人成りをすると思わぬ負担に苦しむ場合があります。

☆ヒント
法人成りのタイミングについては、メリット・デメリットをしっかり比較した上で、戦略的に検討する必要がありますが、ひとりでは俯瞰的に把握することが難しいかもしれません。そのような場合は実務経験豊富で業界事情に詳しい税理士などの専門家に相談してみると良いでしょう。

会社設立の手続き

では実際に会社を設立するにあたって、どのような手続きを踏んでいくのかを説明していきます。以下のフローチャートは会社設立までの流れを示します。一つずつ確認していきましょう。

①許認可の取得

扱うビジネスの領域によっては許認可が必要です。例えば旅館なら「旅館業営業許可」、飲食店なら「飲食店営業許可」などが該当します。このような許認可が求められるビジネスは実は数が多く、また種類によって担当機関や窓口が異なっています。会社設立をする前に、この許認可について調べ、必要な場合は取得しておきましょう。

②会社の基本事項の決定

まず基本事項を決める必要があります。
・会社名
・事業目的
・発起人
・本店所在地
・設立予定日や事業年度
・役員関連
・会社の機関設計
・株式の譲渡制限を設けるか
・株式の譲渡承認機関
・資本金の額、発行可能株式総数、設立時発行株式の総数、株主

③会社の印鑑、印鑑証明書の準備

次に、代表印、銀行印、角印の3つの会社の印鑑を用意する必要があります。会社代表印は会社設立の際に法務局へ届け出る必要があるため、必ず準備しておきましょう。
あわせて、定款に手を付ける前に発起人全員分の印鑑証明書を用意しておきましょう。これは定款の認証とあわせて提出する必要があるためです。

④定款の作成

定款には大きく分けて絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項の3種類の記載事項があります。
絶対的相対事項とは、目的や会社名、本店の所在地など「これが欠けるとそもそも定款に効力が生まれない」という必須なものです。
相対的記載事項とは、「書いてなくても定款の効力には影響なし。ただし定款に書かないとその事項の効力が生まれない」というものです。株式にかかわることや、取締役や監査役に関することが代表的です。
任意的記載事項は「書いても書かなくても、定款の効力にもその事項の効力にも影響しない」ものです。ただし一度定款に記すと変更の手続きが面倒になるので注意が必要です。営業年度や役員の数など、基本的には変わることがないルールを書いておくとよいでしょう。

⑤定款の認証

定款ができあがったらこれを認証してもらう必要があります。認証は、設立しようとする会社の本社所在地を管轄する公証役場の公証人に行ってもらわなければなりません。
この際、もちろんアナログ的な書類のやり取りでも認証は得られますが、印紙税として4万円支払う必要があります。そのコストをカットする方法として、定款をPDF化してオンラインでのやり取りをベースに承認をもらうこともできます。しかし、実際に個人でやろうとすると準備にかかるコストで4万円を超えるケースがあるので、その際はこの電子定款に関してだけでも司法書士の方などに任せましょう。

⑥出資金の払い込み

次は出資金の払い込みです。会社の銀行口座に出資金を振り込んだら、通帳のコピーを取り、払込証明書を作成します。

⑦登記書類の作成

次はいよいよ登記に必要な書類の作成に入ります。発起人の数と会社の機関設計により必要な書類は変わるのですが、ここでは発起人1人、取締役も1人のケースを考えます。
必要なものは
・発起人決議書
・取締役就任承諾書
・CDなどのディスク
・印鑑届書
です。

CDには、登記書類に書かれている内容を書き込んでおきます。データをオンライン入力するときに登記所の職員の手間を省くためです。加えて、電子定款で認証を受けた場合は電子定款を書き込んでおきます。

⑧会社設立登記の申請

書類が揃ったら申請に行くのですが、この際登録免許税が課されることとなっています。
資本金が課税標準額となり、この0.7%が納める税額となります。ただし、その税額が15万円に満たなかった場合は一律15万円となります。資本金が2200万円以下であるならば、一律15万円の課税が生じると思って問題ありません。

⑨登記簿謄本、印鑑証明書の取得

これらは各機関にこれから提出するものなので、事前に必要枚数を確認しておきましょう。登記簿謄本は、場合によっては「登記事項証明書」となっているかもしれません。
印鑑証明書の取得のためには印鑑カードが必要になりますので事前に準備をしましょう。

⑩法人口座の開設

個人事業からの移行する場合でも、法人成りの際には法人口座が必要です。⑨の書類や定款など必要な書類をもって申請に行きましょう。どの銀行にするかは様々な視点から考えていくべきですが、すでに個人口座を開設している銀行ならスムーズにいくかもしれません。

⑪各機関へ届出

ここまでの手続きが終わった後、税務署を始めとする各機関に届出をする必要があります。

労働基準監督署 ①法人設立届★
②青色申告の承認申請書★
③給与支払事務所等の開設届出書
④源泉徴収の納期の特例の承認に関する申請書
⑤棚卸資産の評価方法の届出書
⑥減価償却資産の償却方法の届出書
⑦消費税課税事業者選択届出書
都道府県税務事務所
市町村役場
①法人設立届出書★
年金事務所 ①健康保険、厚生年金保険新規適用届★
②健康保険、厚生年金保険新規適用事業所現況書★
③健康保険、厚生年金保険被保険者資格取得届
④健康保険被扶養者(異動)届
労働基準監督署 ①労働保険 保険関係成立届
②労働保険 概算保険料申告書
公共職業安定所 ①雇用保険適用事業所設置届
②雇用保険被保険者資格取得届

★が付してあるものは必ず提出しなければならない書類です。その他の書類は、例えば従業員を新たに採用した時、など状況に応じて提出が必要になる書類です。どちらも確認しておきましょう。

財産の移行

法人成りというのはつまるところ、個人から法人へと事業内容の移行が行われることですが、事業内容だけではなく、財産も移行可能です。
資産も負債もどちらも移行可能であり、どの資産や負債をどのように引き継ぐかは個人事業主と会社の間で任意に決定することができます。実際の移行方法としては3種類あり、
①売買契約
②現物出資
③賃貸借契約
となっています。

①売買契約

その名の通り、資産や負債について会社と個人事業主の間で売買契約を結ぶことです。分かりやすく手続きもシンプルです。注意するべき点としては、会社側に資産を買い取れるだけのお金が必要であるという点です。

②現物出資

個人事業で有していた財産を出資する方法です。出資は金銭のみならず、車などの有形資産から、知的財産権などの無形資産まで可能です。この方法は資本金に充てられる金額が大きくなるというメリットがあります。ですが、資産の時価をどのように算定するかという点は少々ややこしい場合がありますから、その際はプロに頼むなどで解決しましょう。
また、現物出資をする際には定款に現物出資についていくつか記載事項が必要になるので注意しましょう。

③賃貸借契約

不動産業界に多いもので、個人と会社の間に賃貸借の契約を交わすことです。会社は資金を事前に用意しておく必要がなく、個人は会社から恒常的にお金を得ることができますし、なにより名義変更がなくて済みます。便利ですが、例えば部屋を個人が会社に貸すことにした場合、個人としては毎年家賃収入について確定申告をする必要があります

これら財産の移行については、現物出資の関係もあり、定款に手を付けるころまでには終えていることが好ましいでしょう。

名義変更

最後に名義変更についてです。個人から法人へと事業体が変わるため、多くのものについて名義変更が必要です。名義変更が必要な主なものを以下に挙げます。
・銀行口座(名義変更というより開設)
・事務所や駐車場の賃貸借契約
・車両と車両保険
・電気・ガス・水道・ネット回線などのインフラ系
・リース契約
・借入金
・その他取引先との契約書

☆ヒント
法人成りは、様々な準備が必要であり時間もかかります。最低限必要な準備や手続きがこのマニュアルには載っていますから、法人成りを考える際はこのマニュアルを読んで、不安な点を事前にプロに相談するなどしましょう。

おわりに

法人成りをどのように進めていくべきか理解できたでしょうか。ひとつひとつステップを踏んでやっていくことができれば、それほどハードルの高いものではありません。それぞれのシーンで助けてくれるプロもいるので、ぜひこのマニュアルを参考にしながら法人成りについて考えてみてください。

株式会社プロジェクトカンパニー 新宅 央
慶應義塾大学卒。大学在学中はファイナンス理論などを中心に専攻。
卒業後、大手広告代理店に勤務。
現在はコンサルティング会社に転職し、IT分野を中心としたコンサルティング業務に従事。
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