黒字倒産はなぜ起こる?!
会社の命運を分ける資金繰りのポイント解説
黒字倒産はなぜ起こる?!  会社の命運を分ける資金繰りのポイント解説

2017/1/5

 
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「黒字」と「倒産」という言葉は矛盾しているようにも思えますが、実際には黒字の会社でも倒産してしまう場合があります。
今回の記事では黒字倒産の原因や例、また黒字倒産しないために必要な指標や経営方法について解説していきます。

黒字倒産とは?

黒字倒産の原因

黒字倒産が起こってしまう根本的なポイントとして、「利益」と「資金繰り」が異なるという点が挙げられます。損益計算書(Profit and Loss Statement, 以下PL)では、期末日までの1年間の売上高や費用から、利益を求めます。しかしPLでは、お金の実際の流れにおける、時間的なギャップは考慮されていません。
例えば卸売業者の場合、商品を売り上げた際の一般的な決済は1ヶ月後以降です。そのとき実際に入金されて現金が手元に入ってこなくても、PL上には記載されている状態となります。そのような期間中に資金繰りが困難になり、自己資本での支払い・銀行からの借り入れもできなくなってしまうと、たとえPL上で黒字でも倒産してしまうのです。

黒字倒産の例

黒字倒産には様々なパターンがありますが、ここでは掛取引による倒産の例を紹介します。
掛取引を行うA社が、ある年に以下のような取引を行ったとします。
◯ 4月
・掛仕入れ 12,000円(翌月払い)
・掛売上  15,000円(2ヶ月後決済)
・現金残高 10,000円
◯ 5月
・掛仕入れ 15,000円(翌月払い)
・掛売上  19,000円(2ヶ月後決済)
・現金残高 10,000円

4月の段階で、売上は2ヶ月後決済のため、利益を上げていてもキャッシュは増えていません。支払いも翌月のため、現金収支は0円になります。
5月においても、上に挙げた取引以外行われていないとすると現金収入は0円です。しかし、5月は4月の仕入れ分12,000円の支払いをしなければなりませんので、現金残高が10,000円であると不足しています。
このような場合は、利益が黒字でも資金がショートして、黒字倒産となってしまうのです。

☆ヒント
順調に事業を成長させても、資金繰りという観点を疎かにしては大変危険であることがお分かりいただけたと思います。特に注意したいのは、事業が順調に成長しており、今後さらに拡大させていく上で積極的に投資を行う場面です。当然、設備投資を行ったり人を新しく雇ったりした場合、しばらくの間は現金支出の方が現金収入を上回ってしまうことも考慮しなければなりません。
こういったことを一人で考えるのは非常に難しく、万が一資金繰りを間違えてしまっては大変ですので、税理士などのプロに相談することをおすすめします。特に業界に詳しい税理士ですと、細かい資金繰りに関するアドバイスができますので、黒字倒産のリスクを減らすことができます。

黒字倒産する前に!チェックするべき評価指標

PL, BS, CF

決算書には先程触れたPLに加え、賃借対照表(Balance Sheet, 以下BS)とキャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement, 以下CF)があります。この3つの決算書の特徴を抑えておくことは、黒字倒産しないための第一歩となります。

損益計算書(PL)

PLは、1年間の売上高や販売及び一般管理費(販管費)などの費用を表す決算書で、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前利益、当期利益の5つの利益を記載します。会社の営業成績に直結した決算書と言えます。

賃借対照表(BS)

BSは、1年間の期末日におけるプラスの資産(資産)とマイナスの資産(負債)、資産から負債を差し引いた資本(純資産)を記載する決算書です。BSは、会社の1年間の財政状況をわかりやすく表すことができます。

キャッシュフロー計算書(CF)

CFは1年間の締めに作られるPL・BSとは異なり、1年間のお金の流れに注目している決算書で、営業活動、投資活動、財務活動の3つに分けて示されています。中小企業では「資金繰り表」で代用されることもありますが、基本的には同じ働きをしています。
その名の通り資金繰りを考える上で、CFや資金繰り表が最も大切です。PLと同時に現金の残高を常に把握することで、黒字倒産を免れることができます。

経営分析指標

決算書を読むことは必要ですが、たくさんの項目があるため、ひと目見て倒産のリスクを判断することは困難です。そんなときに便利なのが、以下の3つの経営分析指標です。

自己資本比率

自己資本比率(%)= 純資産 ÷ 総資産 ×100
自己資本比率は、BSから計算できる指標です。総資産のうち、どの程度が純資産でまかなわれているかを示す指標で、比率が高いほど自分たちの力だけで運営ができているということを示しています。
中小企業では15%程度が自己資本比率の平均とされていますが、40%を超えるような会社が倒産リスクの少ない優良企業と判断されます。

自由資金比率

自由資金比率(%)= フリーキャッシュフロー÷ 自己資本増加額 ×100
自由資金比率は、CFから計算できる指標です。ここでいうフリーキャッシュフローとは、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを合計したもので、純粋な営業活動で得られるキャッシュを意味しています。自由資金比率が高いほど、稼いだ利益がキャッシュになりやすい会社といえます。
40%以上が目安とされ、70%を超えるような会社が資金繰りの優秀な会社と判断されます。

当座比率

当座比率(%)= 当座資産 ÷ 流動負債 ×100
当座比率は、BSから計算できる指標です。当座資産とは流動資産の中で、現金や預金、売掛金など現金化しやすいものを指しています。似たような指標に流動比率(=流動資産÷流動負債)がありますが、流動資産には棚卸資産が含まれているため、過剰在庫の状態などに左右されやすいです。つまり当座比率は、流動比率と比較して、より短期的な負債に対する支払い能力を測ることができます。
100%を超える割合が流動負債を支払った後の資金となるため、130〜240%が健全な当座比率の目安となります。

☆ヒント
決算書の数字から会社の経営状況を読み解くのは難しいかもしれませんが、経営者という立場上、このような評価指標を知っておいても損はありません。税理士と積極的にコミュニケーションを取り、数字がどのようなことを意味するのかを聞き出せると、税理士をうまく使いこなしているといえるでしょう。

黒字倒産を防ぐ方法!

キャッシュフロー経営

先程も触れたように、黒字倒産を防ぐためにはキャッシュフローに着目する必要があります。このようにPLの利益よりも、CFのキャッシュフローを重視して経営する方法をキャッシュフロー経営と呼びます。CFには営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローがありますが、それぞれの科目でキャッシュを最大化する方法が有効です。

営業キャッシュフロー

営業キャッシュフローがCFの中で最も重要です。営業キャッシュフローを改善するには、キャッシュが出るのをなるべく遅くすることと、キャッシュが入ってくるのをなるべく早めることが原則です。買掛金や支払手形の支払期間を長くすることや、現金払いや当月払いによる売上が例として挙げられます。

投資キャッシュフロー

投資キャッシュフローの改善には、使っていない固定資産の売却や、有価証券の売却が有効です。シンプルながら、キャッシュを増やすこと、そして減らさないことを意識しましょう。

財務キャッシュフロー

財務キャッシュフローを改善するには、高い金利の借入金を返済して、社債や株式での安定的な資金調達に切り替えていくことが有効です。

☆ヒント
黒字倒産は順調に成長している中小企業こそ気をつけなければなりません。そのためにはまず、決算書や経営分析指標を活用してキャッシュを最大化していく必要があります。
資金繰りが困っている場合はもちろんのこと、事業が順調に伸びているときにも税理士としっかりとコミュニケーションを取ることが重要です。

まとめ

東京商工リサーチによると、2012年に倒産した企業のうち、黒字企業の割合は44.7%と約半数にのぼります。黒字倒産は中小企業にとっても、決して珍しい話ではありません。今回解説したような経営分析指標やキャッシュフロー経営を活用して、黒字倒産を回避しましょう。

株式会社プロジェクトカンパニー 松本孝輝
東京大学卒。在学中は経済工学や産業組織論を中心に専攻。
現在はコンサルティング会社に勤務し、ITを用いた集客やブランディングなど専門にコンサルティング業務を行う 。
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