従業員のモチベーションアップを図る!
ストックオプションの活用方法と失敗例
従業員のモチベーションアップを図る!  ストックオプションの活用方法と失敗例

2019/3/15

 
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ストックオプションは従業員のモチベーションを上げる方法として利用されていますが、失敗も多い制度です。ここでは、失敗事例をもとに活用方法やモチベーションアップのための他の方法を検討します。

ストックオプションとは

制度の内容

ストックオプションはSOとも訳され、企業における報酬制度の手段のひとつとして活用されています。企業側は従業員や取締役等に、お金で支払う給与とは別に、一定の条件下で自社の株式を得る権利を与えます。この条件とは、企業側が予め決めた値段(権利行使価額)で、将来の好きなタイミング(場合によってはある一定期間内)で株式を取得することです。権利行使価額は大抵低く設定され、企業が成長すればするほど時価との差が広がります。よって従業員等は、自社株が値上がりした頃合いを見計らって権利行使価額で取得し、そのまま時価で売却すれば、差額分で大きな利益を獲得することができます。この方法を取ると、現時点で企業側の手元にまとまった資金がなくとも将来的な報酬を約束できるため、特に新興ベンチャーやスタートアップで用いられることが多いです。

制度の効果

ストックオプションを利用することの代表的なメリットに、従業員のモチベーションアップがあります。従業員からすれば、株価が上がれば上がるほど利益が大きくなるので、自社を成長させるためにより働くようになることが見込めます。もし、時価がいくら以上になるまでは権利行使できないなどの条件付けをすれば、その傾向は更に高まるでしょう。

ストックオプション税制とは

税法上、お金でなく株式を受け渡すのであっても、給与の一種類として課税対象となります。通常であれば、まず従業員等が権利を行使した時に、時価が権利行使価額を上回っているその差額が給与所得として課税されます。次いで、株式を売却した時にも、企業による受け渡しの値段(譲渡価額)と時価の差額が譲渡所得として課税されます。

このままでは、売却が遅れれば利益獲得前にまとまった費用が必要になり、かつ課税が二度に渡るため面倒です。しかし、この際にストックオプション税制を利用すれば、課税を一度にまとめられて、場合によっては節税も可能です。以下、詳しく説明していきます。

制度の仕組み

ストックオプション税制が適用されると、権利行使によって株式を購入した際の課税を繰り延べ、株式の売却時に売却価額と権利行使価額の差額が譲渡所得として課税されることになります。なお、この税制の適用できるストックオプションを税制適格ストックオプション、適用できないものを税制非適格ストックオプションと呼ぶことがあります。

要件

  • 権利行使がストックオプション付与の決議日から2年後以降であり、かつ10年以内であること。
  • 無償発行かつ譲渡禁止と規定されていること。
  • ストックオプション付与の対象者が、自社か子会社の取締役、執行役、従業員等であること。ただし、大株主(上場していない場合は発行済株式数の1/3、上場している場合は1/10以上を保有する株主)と、その特別利害関係者は除かれます。
  • 新株予約権の行使価格の年間での合計額が1,200万円以下であること。
  • 権利行使価額が、ストックオプション付与の契約をした時の時価以上であること。
  • 会社があらかじめ契約している証券会社や金融機関によって、取得された株式の保管または管理等信託がおこなわれること。
  • ストックオプションを付与した年の翌年1月31日までに「特定新株予約権等の付与に関する調書」等の必要書類を税務署に提出すること。

メリット

  • 税務コストのカット
    異なる課税体系で税金を二度支払い、またその都度に計算違い等のないよう事務作業を行うのは煩雑です。一度に統一された税体系下での支払いにまとめられるならば、これに越したことはありません。また、これは先述の、株式売却が遅れた際に利益獲得の前なのに納税用にまとまった費用が必要になるというトラブルを避けることにもなります。
  • 節税の可能性も
    譲渡所得の場合、課税は一律約20%です。一方、給与所得の場合は、税率は総額に応じ段々高くなる累進課税制度が適用されるため、最大で50%以上にもなります。そのため、価額によっては節税になります。

留意点

上記のように、税制適格となるための要件は厳しく、特にベンチャー企業では、ストックオプションの付与対象者が既に大株主となっており、ストックオプション税制が適用できないなどといった問題が起こり得ます。また特筆して、監査役もストックオプション税制の対象外となります。

参考記事

ストックオプション税制については、こちらの記事が詳しく参考になります。導入の検討に際し、問題や疑問(例えば、誰にどれだけの割合で付与して良いのか等)が生じましたら、目を通して下さい。

ストックオプションでの失敗事例

税制適格でなかったケース

上記の要件をひとつでも満たさなければ、全て税制非適格となります。ここでは、特に起こりがちな発行済株式の保有割合についての失敗例を挙げます。

ストックオプションを新たに導入したA社では、オーナー経営者自身は発行済株式の半分以上を持っていたため、税制適格要件を満たせませんでした。やむをえず税制非適格ストックオプションを進めることにし、その後数年経って上場しました。そのオーナー経営者は権利を行使し数億円の差額が生じましたが、ストックオプション税制は適用されなかったため、総額の半分程度という多額の税金を納める羽目になりました。

パーセンテージが適当でなかったケース

上場時のストックオプションの割合は、全体の10%程度に抑える傾向があります。超過して罰則等があるわけではありませんが、上場審査が通りにくくなったり、株式の希薄化(既存株主の株式の価値の低下)が起きたりする可能性があるからです。そもそもストックオプションでは、権利行使がなされるたびに新株が生まれることになります。すると、1株あたりの利益低下やROEの低下といったことが起きます

具体例を見てみましょう。B社では、資金難と人材不足から、優秀な従業員の引き留めのためにストックオプションの付与が乱発されました。上場後、ストックオプションを付与された者により一斉に権利が行使され、1株あたりの利益が急降下しました。これを嫌った既存株主達が大量に株式を売り払い、株価が暴落する結果となりました。

設計が上手くなかったケース

ストックオプションを付与する際に、権利行使には条件を付けることができ、期間や価格などを企業の都合で決定できます。経営計画や資金調達計画等も重要ですが、これらの要素によって従業員の離職をコントロールする工夫が必要になることもあります。

C社では、外部から雇い入れた上役数人にストックオプションを付与していましたが、上場すると同時に彼らを引き留めていたインセンティブが失われ、権利を行使して差額分の利益で儲けた途端に次々と離職してしまい、一転して人材不足と組織運営難に陥りました。

従業員のモチベーションをあげるために

ストックオプションの上手な活用

失敗例もあるとはいえ、ストックオプションは従業員のモチベーションアップが大いに期待できます。資金不足等の制約があっても導入できる点で、効果的な手段のひとつと言えます。導入するのであれば、なるべくストックオプション税制の要件を満たすように気を払いつつ、様々な要素との兼ね合わせを慎重に検討していきましょう。

ストックオプション以外の選択肢の検討

自社の状況にストックオプションが好ましくない場合にも、従業員のモチベーション向上のためには様々な手段が考えられます。

  • 給与アップ
    これが最も代表的でかつ効果的な選択肢です。昇給により達成感ややる気を感じてもらえ、また更なる昇給のためにより働こうとする人も出るでしょう。
  • 福利厚生の改善
    給与面での条件がさほど良くなくても、働きやすい企業であれば従業員の働く気持ちを増進できます。女性に優しい職場であったり、残業や介護、病気や怪我等への気遣いが厚かったり、在宅勤務等によるワークライフバランスの実現が可能であったりすること等が挙げられます。
  • 評価制度の見直し
    評価基準の修正など、評価制度を変えることで従業員同士の競争を促進することもできます。評価ポイントを公開する、納得できる公平な基準を設ける、表彰システムを取り入れるといったことが考えられます。
  • 教育の浸透
    自社の理念と目標の共有や、研修の徹底といったこともさることながら、個々の従業員に寄り添うケアも重要になります。メンター制度を導入したり、何にやる気を持てるのかを聞いたりすることで、従業員の欲求を満たして満足度を上げることができます。
☆ヒント
ストックオプションは、特に税制適格にしようとすると調整が難しい制度です。他にも気を払うべきことが多くある中で、ひとつの報酬制度の枝葉の問題にかかずらって、その他の重要事項が疎かになってしまうというようなことは避けたいものです。このような煩雑な部分は、専門家に頼んでしまうのも一計と言えます。ビスカスでは各種税制に精通した優秀な税理士を多数紹介しておりますので、この機会に是非ご利用をご検討ください。

まとめ

従業員等のモチベーションアップには様々な方法が考えられ、また、やり過ぎて逆効果ということもあまり生じないでしょう。自社の社風や方針を考慮しながら、できる限りの方法を採用していくことが重要と言えます。

細井山豊
東京大学卒。現、同大学院所属。
ベンチャー企業の経営やビジネスを学んでおり、経営に役立つ様々な知識やノウハウを習得中。
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