間近に迫った改正労働基準法の施行!
年次有給休暇の時季指定付与義務とは
間近に迫った改正労働基準法の施行!  年次有給休暇の時季指定付与義務とは

2019/1/9

 
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年次有給休暇の時季指定付与義務をはじめ、労働基準法の改正は企業の労務管理に大きな影響を及ぼすといわれています。法改正に備えるためには改正内容を正しく理解し、必要に応じて労使協定の締結や社内規則の変更などを進めておくことが重要です。年次有給休暇の時季指定付与義務についてポイントと留意点を説明します。

中小企業も対象!年次有給休暇の時季指定付与義務は2019年4月1日施行

新設となる年次有給休暇の時季指定付与義務とは

改正労働基準法などの働き方改革関連法は、2019年度から順次施行となります。中小企業の場合、猶予期間が認められる傾向にありますが、年次有給休暇の時季指定付与義務については大企業の施行日と同様、2019年4月1日です。

 

年休の時季指定付与義務は「年10日以上」の年休が付与される労働者を対象に、年休のうち「年5日」を使用者が時季指定して付与するよう義務づけ、年休の取得促進を図ります。

時季指定付与義務の対象「5日」を減らすためには

使用者に義務づけられる「年5日」については、労働者の希望に基づいて付与した日数や後述する「計画的付与制度」により付与した日数があれば差し引くことができます。つまり、時季を指定して付与すべき日数は「最大で年5日」ということです。必ずしも5日すべてを時季指定する必要はありません。

 

ただし、年休の時季指定付与義務には罰則規定もあるので、適法に義務を果たすためには労働者が年休を取得しやすい環境を整え、計画的付与制度などを上手に活用するとよいでしょう。

 

*参考URL
・厚生労働「年次有給休暇の時季指定付与義務」
https://www.mhlw.go.jp/content/000350327.pdf
・厚生労働省「仕事休もっ化計画 事業主の方へ」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/sokushin/jigyousya.html

年次有給休暇の取得率は5割未満!労働者が取得をためらう理由は?

年次有給休暇の取得状況

厚生労働省は、「仕事と生活の調和推進のための行動指針」の中で年次有給休暇の取得率を2020年までに「70%」とする目標を掲げています。ところが、「平成29年就労条件総合調査の概況」をみると平成28年(2016年)の年休取得率は49.4%です。前年の48.7%に比べれば0.7ポイント上昇しているものの、いまだ5割にも達していません。

 

年休取得率の低迷には、労働者の「ためらい」が関係しているようです。厚生労働省の調査によると、年休の取得に「ためらいを感じる」という人は22.6%、「ややためらいを感じる」の41.1%を加えると、6割超の人がためらいを感じていることになります。

 

また、ためらいを感じる理由としては「みんなに迷惑がかかると感じるから」73.3%(複数回答)、「後で多忙になるから」47.5%が上位を占めています。さらに、「職場の雰囲気で取得しづらいから」が28.2%、「上司がいい顔をしないから」は15.2%でした。

*参考URL
・厚生労働省「仕事と生活の調和推進のための行動指針」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/sigoto-seikatu/pdf/indicator.pdf
・厚生労働省「平成29年就労条件総合調査の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/17/dl/gaikyou.pdf
・厚生労働省「仕事休もっ化計画 事業主の方へ」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/sokushin/jigyousya.html

年次有給休暇の取得率アップがもたらすメリット

年次有給休暇の取得率が低迷する中、長時間労働による過労死や過労自殺も起きており、問題は深刻です。労働者が休暇を取ることによって疲労の回復を図る機会となり、趣味の時間や家族と過ごす時間が増えることでワーク・ライフ・バランスの実現にもつながります。

 

企業にとっては労働者の健康障害を防ぐだけでなく、士気を高めたり、効率などもアップしたりして生産性も向上することでしょう。また、年休取得率の高さは、企業イメージの向上にも役立ちます。近年、私生活重視の労働者が増えていることを考えると、年休の取得促進は優秀な人材の確保や雇用継続にも寄与すると期待されています。

しっかり準備!改正労働基準法により変わる働き方と休み方

時季指定付与義務のポイント(1):休む日を使用者が決める

労働基準法では、労働者は「雇入れの日から6ヶ月の継続勤務」、かつ「全労働日の8割以上を出勤」という二つの要件を満たした場合に年次有給休暇を取得できるとしています。年休はフルタイムの労働者だけでなく、週3日勤務といったパートタイム労働者も一定の条件を満たせば勤務日数と継続勤務年数に応じて付与(比例付与)されるものです。いずれの場合も、従来は労働者が請求した日に年休を取得するのが原則でした。

 

ところが、時季指定付与の場合、年休の一部について使用者が取得時季を指定します。つまり、労働者は使用者が決めた日に休みを取ることになるのです。そのため、労働者の満足度を高めるためには、使用者は指定する時季について労働者から意見を聴き、労働者の意見を尊重して時季を決定するようにしましょう(努力義務)。

時季指定付与義務のポイント(2):1年以内に5日を指定する

時季指定義務の対象は年休を10日以上付与される労働者で、使用者は労働者ごとに「年休の基準日(付与した日)から1年以内」に5日分を時季指定する必要があります。たとえば、4月1日に入社した労働者の場合、法定による年休の基準日は入社から半年後の10月1日です。フルタイムの労働者であれば、10月1日に10日分の年休が付与されるので、使用者は「10月1日~翌年9月30日まで」の一年間に年休のうち5日を時季指定しなければなりません。

 

ただし、「基準日から1年以内」に、労働者が請求して年休を取得した日や計画的付与制度によって付与した日があれば、5日から差し引くことができます。そのため、労働者の申し出や計画的付与による年休取得が5日以上の場合は、時季指定による付与は必要ありません。

 

例を挙げると、労働者の自発的な年休取得が2日、計画的付与が3日のときは使用者による時季指定は不要です。もし、労働者の自発的な取得が1日、計画的付与が3日というように年休が5日未満のときは、残りの年休1日分については使用者が時季を指定することになります。

時季指定付与義務のポイント(3):年休を前倒しで付与する場合

前述したように、年休の基準日は「雇入れの日から半年後」で、10日以上の年休が付与された場合は「年休の基準日から1年以内に5日」を付与する必要があります。しかし、入社した時点で年休を10日付与している企業では、時季指定する期間に注意してください。

 

もし、入社日(4月1日)に年休10日分を付与したときは、入社日に年休が10日に達しています。そのため、使用者は入社日から1年以内(4月1日~翌年3月31日まで)に、5日分の年休を時季指定しなければなりません。

 

また、前倒しで付与するケースのうち、10日分の年休を数回に分けて付与したときは、分割で付与した年休が合計して「10日に達した日」が基準日となります。たとえば、入社した4月1日に年休を5日付与し、3ヵ月後の7月1日に追加で5日付与した場合は、年休が10日に達した「7月1日から翌年6月30日まで」に5日分の時季指定付与が必要です。

*参考URL
・厚生労働省「労働基準行政全般に関するQ&A:年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei06.html
・厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」(リーフレットシリーズ労基法39条)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/140811-3.pdf
・厚生労働省「年次有給休暇の計画的付与と取得について」
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kinrou/dl/040324-17a.pdf

年次有給休暇の時季指定付与義務を果たすために必要なこと

年次有給休暇の計画的付与で休みやすい環境を整備

年次有給休暇の計画的付与制度は、年休の取得促進を目的に1987年の改正労働基準法において設けられた制度です。計画的付与制度を導入した企業では労務管理がしやすくなり、導入していない企業に比べて年休の取得率が高いなどの報告があります。計画的付与は時季指定義務においても有効なので、まだ導入していない企業ではこれを機に検討するとよいでしょう。

 

計画的付与制度を活用すると、年休のうち「5日を差し引いた残りの日数」を使用者が計画的に付与できます。たとえば、年間の年休付与日数が12日の場合、5日分は労働者が自由に取得できる分として留保する必要があるものの、残り7日については使用者による計画的な付与が可能です。

 

ただし、計画的付与制度を導入するためには就業規則で規定し、書面による労使協定の締結が必要となるので注意してください。労使協定には計画的付与の対象者、対象となる年次有給休暇の日数、具体的な計画的付与の方法などを定めます。

*参考URL
・厚生労働省「年次有給休暇の計画的付与制度」
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kinrou/dl/101216_01e.pdf
・岡山労働局「年次有給休暇の計画的付与制度の導入に向けて」
https://jsite.mhlw.go.jp/okayama-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/kanri06.html

年次有給休暇は「管理簿」できちんと管理

年次有給休暇の時季指定付与義務に伴い、使用者には管理簿の作成と3年間の保存が省令により義務づけられます。義務化によって企業側の負担感は増すことでしょう。しかし、管理簿で年休の取得状況を適切に把握することは使用者が時季指定付与義務を果たすうえでも、従業員の過重労働を防ぐうえでも重要といえます。

 

さらに、労働者の休暇取得を促してワーク・ライフ・バランスの実現を図り、企業が生産性の向上などのメリットを得るためにも年休の管理は大切です。年次有給休暇の時季指定付与義務は管理職も対象に含まれるので、管理監督者も含めて年休の管理を適切に行いましょう。

*参考URL
・厚生労働省「仕事休もっ化計画 事業主の方へ」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/sokushin/jigyousya.html
・厚生労働省「年次有給休暇の計画的付与と取得について」
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kinrou/dl/040324-17a.pdf

まとめ

年次有給休暇の時季指定付与義務については大企業も、中小企業も同時に施行日を迎えます。それぞれの企業において時季指定付与義務の対象となる労働者は極めて多いと予測されるため、初年度は担当者も戸惑うことが多いでしょう。しかし、義務違反の場合は罰則の対象となるので慎重に準備・運用することが大切です。必要に応じて専門家のサポートを受けながら労使協定など必要な準備を進め、適切に運用していきましょう。

 

松岡 玲
社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プラニング技能士、精神保健福祉士
現在は企業や行政、産業保健の相談機関において、メンタルヘルス不調者の就労支援や労災保険に関する業務を中心に事業者や人事労務担当者、労働者の相談に対応しています。
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