一般の事業との違いはある?農業を営む際の注意点
一般の事業との違いはある?農業を営む際の注意点

2018/12/21

 
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最近は、ご家族が農業に従事していない人でも脱サラして農業をしたい、週末の副業として農業を始めたいという人が増えています。この記事では、既に専業農家の人はもちろん、新たに農業を事業として始めたいという人にとって役立つ制度をご紹介します。

 

なお、この記事では個人事業として農業を営む人を対象としています。

農業を始める際の経理の注意点!

農業というと特殊な印象を受けますが、会計帳簿の作成や確定申告の方法は他の事業を営む場合と大きく異なるわけではありません。したがって、一般の書店で売られている経理の参考書や税務署が主催している確定申告セミナー、このサイトの他記事を有効に活用しましょう。

 

ただし、一般の会計ソフトには農業会計用の機能がついていません。農業会計専用の会計ソフトやサービスが複数提供されていますから、その中から気に入ったものを利用しましょう。

 

その他、農業を営んでいる人には特に注意していただきたい点が何点かありますので、ご紹介します。

<販路ごとに売上を把握すること>

農業を営んでいる場合には、販売先や販売方法が多岐にわたります。また、納品書や請求書、領収書などの書類をきちんと発行しあう販売先ばかりではありません。たとえば、農協やスーパーなどに納品する場合にはきちんと書類のやり取りを行いますし、締め日や入金日なども決まっていますから、一般的な会社が利用しているような経理のフォーマットを利用するとよいでしょう。

 

しかし、軒先販売やインターネットを利用した通信販売を行う場合には、納品書や請求書を発行することは滅多にありませんし、領収書を必ず発行するわけでもありません。また、通信販売を行う場合には決済代行会社を利用することが多いため、販売手数料を差し引かれた金額が入金されることも多くなっています。

 

したがって、小売店やネットショップが利用しているような経理のフォーマットを利用したほうがわかりやすいため、販路ごとに売上を把握し、特性に応じたフォーマットを利用するとよいでしょう。

<家族で消費する作物との混同に注意>

農業を営んでいる人の中には、販売目的の作物の他に家族で消費するための作物を育てている人もいます。また、売れ残ってしまった作物を家族で消費することもあるでしょう。両者は一見同じように見えますが、経理処理が異なりますので注意しましょう。

 

最初から販売する意図がなく、家族で消費するための作物を育てている場合には、その作物のための苗や肥料などの支出は経費にはなりません。うっかりこれらの支出を販売用作物への支出と一緒にしてしまう人や、逆に全部の支出を経費に入れないでしまう人がいます。

 

たとえ苗や肥料の一部を家族で消費するための作物に使ったとしても、それらをきちんと区分して会計処理をすれば販売用作物に使った分は経費とすることが可能ですから、忘れずに経理処理するようにしましょう。農機具のガソリン代や電気代なども同様です。

 

また、販売用に育てたにもかかわらず、売れ残ってしまったなどの理由から家族で消費することもあるでしょう。販売したわけではなく、ご自身で消費したのだから売上にはならないと考える人が多いのですが、この場合にはその作物のための支出は経費となるものの、仮に販売した場合に受け取ることができた金額を売上として計上しなければいけません。

<農地や農機具の貸付>

農地の一部を他の人に貸し付けたり、ご自身が利用していないときに農機具を貸し出したりして利用料を受け取ることがあるでしょう。それらの収益も売上として課税されますので、計上モレがないように注意しましょう。

 

ただし、所得区分には注意が必要です。農地を貸して地代を受け取る場合には不動産所得だと思われる人が多いのですが、必ずしもそうではなく事業所得だと判断されるケースもあります。

 

判断が難しいケースが多いですので、税務署に相談するといいでしょう。

<収益と借入金の違い>

農業を始めるにあたり、最近は有利な条件で借り入れられたり、助成金をうけとることができる制度が準備されています。それらの制度を利用する際、借入を受けると税金が高くなるのではないかと誤解される人が少なくないようです。

 

借入、つまりあとで返さなければならないお金を受け取ったとしても、収益にはあたりませんから税金が高くなることはありません。ただし、支払った利息については後日返金されるわけではありませんので、経費として計上することが認められます。つまり、利息を支払うと税金が安くなります。

 

助成金を受け取った場合、つまり返さなくても良いお金を受け取った場合には、法令に特別な定めがない限り収益にあたります。したがって、受け取った助成金の金額に応じて税金を納めなければいけません。

特例が多いため固定資産税に注意!

農地として扱われているかどうか確認を!

土地を農地として利用している場合には固定資産税が減額されます。なお、自分が農地として利用している場合だけではなく、他の人に農地として貸し付けている場合も同様です。農地がある場所により様々な計算方法がありますが、「一般農地」と呼ばれる区分の農地は軽減幅が大きくなります。

 

しかし、固定資産税を管轄している市区町村は定期的に巡回したり航空写真を利用したりして土地の利用状態を確認していますが、どうしても確認モレが生じてしまうことがあります。そのため、農地ではなく宅地や雑種地などと登録されてしまっており、割高な固定資産税を長年支払っている事例も見受けられます。

 

固定資産税を支払い過ぎていた場合であっても、一定期間を経過すると時効により返金してもらえなくなりますので十分な注意が必要です。新たに農地を購入した場合はもちろん、これまでご自身の農地の評価を確認したことがない方は、一度市区町村で正しく課税されていることを確認しましょう。

特定市街化区域農地は宅地並みの課税

農地は固定資産税が安いことは既にお知らせしましたが、必ずしもそうではない場合もあります。特に「特定市街化区域農地」は、今後住宅地と同様の課税が行われることが決まりました。

 

特定市街化区域農地とは、市街化区域、いわゆる住宅地や商業地の中にある農地のことです。市街化区域は行政が住宅地や商業地とすることを奨励していますし、容易に農地以外に転用できることから、平成26年度から徐々に固定資産税を引き上げ、最終的には宅地と同様の固定資産税が徴収されることが決まっています。

 

したがって、特定市街化区域農地を購入する場合には、年々固定資産税が上昇していくことを見落としてしまうと想定外の支出となってしまい、事業計画に狂いが生じることも考えられます。購入前に十分確認しましょう。

将来への備え!農業を営む人向けの相続対策

親子で農業を営んでいたり、将来は子供に農業を継いでほしいと考えている人も多いのではないでしょうか。しかし、農業の事業継承を行うにあたり、相続税が大きな課題となることを知っている人は多くありません。

 

農業を営んでいる親が亡くなると農地に対して多額の相続税が課税されてしまいます。しかし、子供が相続税を納税するために泣く泣く農地を手放してしまうと農業を続けられなくなってしまうことから、子供が農業を続ける場合には相続税や贈与税が軽減される制度が準備されています。

 

「農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例」と「農業後継者が農地等の贈与を受けた場合の納税猶予の特例」という2つの制度が準備されていますが、この2つをセットにして適用を受けることが多いようです。

 

制度が複雑で、数年にわたって準備する必要がありますから、実際に利用する際には相続や事業継承に詳しい税理士の助言が必須と言えるでしょう。

 

ただし、この制度の利用を選択した場合、何らかの理由で後継者が農業を辞めたくなってしまった場合に辞めにくくなるというデメリットがありますから、専門家の助言を受ける際には後継者にも同席してもらうことを強くお勧めします。

まとめ

農業を家業として営んでいる人は多いのですが、これまではあまり税金や事業継承の対策をされる人は多くありませんでした。しかし、これからは農業といえども「事業」として、他の事業と同じく収益性を高める工夫と同時に節税や事業継承の対策が求められる時代となっています。

 

この記事を目にしたことをきっかけに、少しでも農業の節税や事業継承に興味を持っていただければ幸いです。

 

千葉勇人
早稲田大学商学部に在学しながら会計事務所に勤務、その後経営学修士を取得し、記帳代行業・海事代理士業を営む。
自分自身が個人事業主・同族企業の会社役員として法人税・所得税・消費税・相続税を「自分ごと」として日々取り扱っている経験をいかし、皆様にとって有意義な情報をご提供します。
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