法人でfxをしている場合の処理方法とは ーfxと税金の関係についてー | MONEYIZM
 

法人でfxをしている場合の処理方法とは
ーfxと税金の関係についてー

2国間の通貨を使って利益を上げるfx。一般的に個人でfxをしている人が多いのですが、法人でfxをしている場合も多いです。個人でも法人でもfxで利益を上げれば、適切な処理をして税金を支払う必要があります。法人の場合は、帳簿付けも重要となります。ここでは、法人でfxをしている場合の処理方法と税金について解説します。

fxの2つの利益 為替差益とスワップポイント

原則、法人は1年間に得た利益を全て、決算書などに計上する必要があります。これはfxについても同様です。そこで、まずはfxの利益とはどういうものかを確認しましょう。fxには次の2つの利益があります。

①為替差益

fx取引を行う主目的が、為替差益を得ることです。fxは、最初に一定の証拠金を専用口座に預けることで、その数倍~数十倍の金額の2国間の通貨を売買し、売買時に出る為替の違いにより利益を得ます。

通常の現物取引のように先に低い金額物を購入してから高い金額で売却して利益を出すだけでなく、高い金額で売却してから、低い金額で購入して利益を出すことができるのも、fx取引の特徴の1つです。

②スワップポイント

fx取引で得ることのできるもう1つの利益がスワップポイントです。スワップポイントとは、2国間の通貨の金利差による利益のことです。

fx取引は、2国間の通貨の取引です。通貨にはそれぞれ、国が定めた金利があります。例えば日本円を所有している場合は日本円に対する金利が、米ドルを所有している場合は米ドルに対する金利がつきます。そのため、fx取引には異なる2国間の金利が影響します。

 

スワップポイントによる利益を得ることができるのが、通貨の売買時とポジションの維持時の2つの場合です。

例えば、低金利の通貨を売って、高金利の通貨を買った場合は為替差益だけでなく、その金利差(スワップポイント)も得られます。またスワップポイントはいわば利息のようなものなので、預金利息のようにポジションを維持したときには、維持した金額とその期間に対応したスワップポイントを得ます。

法人でfxをしている場合の会計処理

法人でfxをしている場合の期中の流れと会計処理

法人でfxをしている場合に利益を得るのは、為替差益とスワップポイントの2つでした。では次に、法人でfxをしている場合の期中の流れと会計処理を見ていきましょう。

fxの主な流れは以下のとおりです。

 

①証券会社などにfx専用口座を開き、証拠金(保証金)を預け入れる

②取引を開始し、通貨を購入(または売却)する

③購入(または売却)した通貨を決済する

利益が出た場合は、その分がfx専用口座に入金される。損失が出た場合は証拠金(保証金)がマイナスされる。

④場合によって、fx専用口座から証拠金(保証金)を引き出す

では、それぞれ具体例をもとに仕訳を確認していきましょう。

 

①証券会社などにfx専用口座を開き、証拠金(保証金)を預け入れる
例)証券会社にfx専用口座を開き、普通預金から200万円の証拠金を預け入れた
借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
差入証拠金 200万円 普通預金 200万円 差入証拠金

 

借方勘定科目の差入証拠金は、資産科目です。差入保証金や預け金など、別の資産科目でも問題ありません。別の勘定科目を使う場合は、次からの仕訳も同じ科目を使う必要があります。

②取引を開始し、通貨を購入(または売却)する

 

仕訳不要

 

fx専用口座に証拠金を預け入れたら、その証拠金をもとに、通貨を購入(または売却)し、fx取引を開始しますが、このときの仕訳は必要ありません。

③購入(または売却)した通貨を決済する

購入(または売却)した通貨を決済すると、そこで初めてfx取引の損益が確定します。

 

・利益が出た場合

利益が出た場合は、その利益分がfx専用口座に振り込まれます。

 

例)購入した通貨を決済し、利益10万円が出た
借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
差入証拠金 10万円 先物取引収益 10万円 fx決済分

 

貸方勘定科目の先物取引収益は損益科目です。雑収入など別の損益科目でも問題ありません。

 

・損失が出た場合

損失が出た場合は、その損失分がfx専用口座から差し引かれます。

 

例)購入した通貨を決済し、損失20万円が出た
借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
先物取引損失 20万円 差入証拠金 20万円 fx決済分

 

借方勘定科目の先物取引損失は、損益科目です。雑損失など別の損益科目でも問題ありません。

 

決済時などにスワップポイントによる利益が出た場合も仕訳が必要です。

 

例)購入した通貨を決済し、スワップポイントが1万円ついた
借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
差入証拠金 1万円 先物金利収益 1万円 スワップポイント

 

貸方勘定科目の先物金利収益は、損益科目です。雑収入など別の損益科目でも問題ありません。

④場合によって、fx専用口座から証拠金(保証金)を引き出す

証券会社にもよりますが、通常、fx専用口座から証拠金を引き出すことは自由です。

 

例)fx専用口座から証拠金100万円を引き出し、普通預金に預け入れた
借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
普通預金 100万円 差入証拠金 100万円 差入証拠金

法人でfxをしている場合の期末の会計処理

法人でfxをしている場合の期中の会計処理を見てきました。ここからは、期末の処理について見ていきます。

fx取引は、デリバティブ取引の1つです。デリバティブ取引とは、簡単にいうと、原資産となる金融商品そのものではなく、そこから派生した権利や契約などを使って利益を生み出す取引のことです。

原資産となる金融商品を実際に保有しているわけではないので、通貨を購入してから決済が行われるまでの間は、未実現の含み損益が必ず存在します。

そこで、期末には未実現の損益を計上する必要があります。未実現の損益を計上するため、fx取引で生じる債権・債務の貸借対照表価額は時価評価となります。

 

例)決算を迎えた。保有している通貨の購入金額は10万円、決算日の時価は12万円だった
借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
先物取引差金 2万円 先物取引収益 2万円 差入証拠金

 

期末時点で含み益が2万円あるため、先物取引収益で計上します。

借方勘定科目の先物取引差金は資産科目です。別の科目で処理しても問題ありませんが、後で区別がつきやすいように、証拠金と別の科目にした方が良いでしょう。

法人でfxをしている場合の税金

法人でfxをしている場合の税金はどうなる?

ここからは、法人でfxをしている場合の税金について見ていきましょう。

個人と法人ではfx取引についての税金の考え方が全く異なります。個人でfx取引を行っている場合は、個人事業主の事業所得や会社員の給与所得とは分けて、雑所得としてfx取引の計算を行います。

 

これに対し、法人では収入の種類に応じて所得や税金の計算方法を変えるということはありません。本業で出た損益にfx取引で出た損益をプラスマイナスした、最終的な所得に対して法人税が課されることになります。そのため、例えば本業が赤字でも、fx取引で大きな利益が出たため、決算で思わぬ税金を支払う必要が出てくる場合もあるので、注意が必要です。

fxの会計処理で使った勘定科目の表示場所

法人の場合は、個人と違いfx取引で出た損益を分けずに税金の計算をします。では、普段fx取引についてどのように本業と区別するかというと、勘定科目を使います。fx取引の勘定科目を本業で使っている科目と分けることで、本業の利益やfx取引の利益などが確認しやすくなります。

 

資産科目については、短期的に決済を行う場合は「流動資産」区分に、1年を超え中長期で為替差益を得ることを目指す場合は「投資その他の資産」区分の勘定科目で処理するのが一般的です。

損益科目の場合、fx取引を本業で行っている場合を除いて、原則「営業外損益」区分の勘定科目で処理するのが一般的となります。

 

まとめ

ひと昔前はfx取引は、個人が行うケースが多かったのですが、今ではfx取引を行っている法人も増えてきています。ただし、法人の場合はfx取引の損益と本業の損益を合算して税金の計算を行うため、思わぬ影響が出る場合もあります。普段からきちんとした会計処理を行い、fx取引の損益についても注視しておきましょう。

 

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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