個人事業主の収入から
10.21%を天引きする税金について徹底解説
個人事業主の収入から  10.21%を天引きする税金について徹底解説

2018/9/10

 
  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • Google+でシェア
  • LINEでシェア

個人事業主は業種によって、収入の10.21%が源泉徴収税額として天引きされます。確定申告の納付額に影響するのはもちろん、収入の申告を本人だけでなく、支払い側から行われるのが特徴です。そこで、源泉徴収税額を天引きされる側と天引きする側の両方について解説します。

そもそも個人事業主が源泉徴収されることの意味

個人事業主の中には給与所得者と同じように入金前に源泉徴収税額を天引きされる人が存在します。そこで、個人事業主の源泉徴収について解説します。

源泉徴収税額は所得税の前払いである

入金前に天引きされる源泉徴収税額の正式名称は「源泉所得税」です。所得税というキーワードから確定申告で計算する所得税と同じ税目であることが分かります。源泉徴収税額が入金前に天引きされているということは、個人事業主が所得税を納付したのと同じです。つまり、源泉徴収税額は所得税の前払いであり、確定申告で精算されます。

源泉徴収税額が精算された場合の結果

それでは、確定申告で源泉徴収税額が精算された場合、結果は次の通りになります。

(1)年間所得税が源泉徴収税額よりも多い場合

年間所得税の金額が所得税の前払い額よりも多いため、差額分を納付します。たとえば、年間所得税100万円に対し、源泉徴収税額70万円の場合、差額分の「年間所得税100万円-源泉徴収税額70万円=30万円」を納付します。

(2)年間所得税が源泉徴収税額よりも少ない場合

年間所得税の金額が所得税の前払い額よりも少ないため、差額分が還付(返金)されます。たとえば、年間所得税80万円に対し、源泉徴収税額90万円の場合、差額分の「年間所得税80万円-源泉徴収税額90万円=▲10万円」が還付されます。

源泉徴収税額が還付される時期

源泉徴収税額が還付される時期は確定申告の提出方法によって違ってきます。そこで、提出方法ごとの還付される時期について紹介します。

(1)電子申告

個人事業主の場合、2月中の確定申告をした場合は申告後の2,3週間後に還付されます。一方3月中に確定申告をした場合は還付されるまでに3週間程度かかります。

(2)紙での申告

還付されるまでに確定申告後、おおむね1ヵ月から1ヵ月半程度かかります。

 

また、還付を受ける方法は「本人の銀行口座への振り込み」または「ゆうちょ銀行、郵便局の窓口での受け取り」のいずれかを選択することができます。

源泉徴収される個人事業主の業種と税額の計算方法

源泉徴収されるかどうかは個人事業主の業種によって決まってきます。そこで、源泉徴収される業種と税額の計算方法について説明します。

源泉徴収される業種について解説

源泉徴収される業種はおもに次の通りです。

(1)原稿料や講演料など

基本的に源泉徴収されますが、懸賞応募作品の入選者などへの支払については、一人当たり1回の支払金額が5万円以下であれば、源泉徴収は免除されます。

(2)弁護士、公認会計士、税理士、司法書士などの特定の資格を持つ人などに支払う報酬、料金(行政書士の報酬、料金は源泉徴収が免除されます)

(3)社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬

(4)プロスポーツ選手、モデル、外交員などに支払う報酬、料金

(5)芸能人や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬、料金

(6)ホテル、旅館などの接客業を行うコンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬、料金

(7)プロスポーツ選手の契約などに伴う一時的に支払う契約金

(8)広告宣伝のための賞金

(9)馬主に支払う競馬の賞金

手取契約の場合の源泉徴収税額の計算方法

基本的に源泉徴収税額は天引きする前の金額に税率(10.21%)を掛けて計算します。しかし、実際の支払額で契約する手取契約の場合は手取り金額から源泉徴収税額を逆算します。たとえば、原稿料の手取り金額が10万円とします。その場合の源泉徴収税額は次の手順で計算します。

(1)源泉徴収税額のベースとなる支払金額を計算する

手取り金額10万円÷(100%-税率10.21%)=11万1,370円

(2)源泉徴収税額を計算する

上記(1)の11万1,370円×税率10.21%=1万1,370円

源泉徴収をする側の事務手続きについて解説

源泉徴収をする側(支払い側)は源泉徴収税額を天引きし、税務署へ納付する義務があります。そこで、源泉徴収をする側の事務手続きについて解説します。

源泉徴収義務者について解説

源泉徴収義務者は基本的に源泉徴収の対象の支払いをしたすべての支払い側が対象です。しかし、次の場合は特例により源泉徴収義務者の対象外となります。

(1)常時2人以下のお手伝いさんなどのような家事使用人だけに給与や退職金を支払っている人

(2)給与や退職金の支払いがなく、弁護士報酬などの報酬・料金だけを支払っている人

源泉徴収をした支払いについては法定調書を提出する

源泉徴収をした支払いについては年間(1月1日~12月31日)の支払金額、源泉徴収税額を税務署へ報告する義務があります。この報告する書類のことを法定調書といい、提出期限は支払い年の翌年1月31日です。

個人事業主に対する源泉徴収税額について法定調書の提出対象

支払い側が法定調書を提出することで、個人事業主の確定申告の内容と突き合わせることができます。たとえば、個人事業主がA社から原稿料を20万円受け取ったという確定申告をしたとします。ところが、A社では30万円を支払ったという法定調書を提出すれば、どちらかの内容の間違いか分かります。

業種ごとの法定調書の提出対象を紹介

業種ごとによって法定調書の提出対象は定められています。おもな業種について見ていきましょう。

(1)次の業種で一人当たりの年間の支払金額が50万円を超える場合

・外交員、集金人、電力量計の検針人、プロボクサー等の報酬、料金

・バー、キャバレーなどホステスの報酬、料金

・広告宣伝のための賞金

(2)馬主に支払う競馬の賞金は1回の支払賞金額が75万円を超える人
(3)次の業種で一人当たりの年間の支払金額が5万円を超える場合

・弁護士や税理士などに対する報酬

・作家に対する原稿料、講演料など

・画家に対する画料、講演料など

・プロスポーツ選手に対する報酬、契約金

法定調書の提出対象となる金額に消費税を含める場合、含めない場合

法定調書の提出対象の目安となる支払金額には基本的に消費税を含めます。しかし、本体価格と消費税が区分されている場合は、支払金額に消費税を含めないことができます。たとえば、税理士報酬を年間で5万1,840円(内訳 本体価格4万8,000円、消費税3,840円)を支払ったとします。消費税を含めれば、提出対象の5万円を超えるため、法定調書を提出しなければなりません。しかし、本体価格と消費税が明確に区分されている場合、本体価格4万8,000円が提出対象の目安となり、5万円以下のため、法定調書を提出する必要はありません。

まとめ

個人事業主が源泉徴収税額を天引きされるということは単に所得税を前払いするだけではありません。源泉徴収義務者に法定調書の提出が義務付けられているため、個人事業主の確定申告と突き合わせることが可能です。個人事業主にとっては所得税を前払いしているため、確定申告に伴う納付額を低くすることができ、または還付が受けられるかもしれません。しかし、その一方、法定調書の存在により確定申告で収入金額のごまかしが発覚しやすい制度でもあります。源泉徴収税額が天引きされる個人事業主は源泉徴収制度を理解した上で確定申告を行いましょう。

阿部正仁
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • Google+でシェア
  • LINEでシェア
税理士紹介ビスカス