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法人や個人事業の経営者なら知っておきたい相続と贈与の基礎知識

法人や個人事業の経営者なら知っておきたい相続と贈与の基礎知識

2018年8月17日 最終更新日:2019/03/25

法人や個人事業の経営者が、事業の経営や毎年の利益に対する税金のこと以外で、気になることといえば、事業の引き継ぎや相続のことでしょう。相続税はいくらかかるのか、また、相続よりも生前に贈与などをしておいたほうがいいのかなど、疑問点も多いかと思います。今回は、ぜひ知っておきたい相続や贈与の基礎知識を解説します。

まずは、相続と贈与の違いを知ろう

相続と贈与の違いとは

まずは、相続と贈与の違いから見ていきましょう。相続と贈与の大きな違いは「財産を引き継ぐ時期」と「契約の有無」「引き継ぐ人」の3つです。

①財産を引き継ぐ時期

相続では、財産を所有した人が死亡した後で、相続人にその財産を引き継ぎます。贈与は生前に財産を引き継ぎます。

②契約の有無

あまり知られていませんが、相続と贈与では契約の有無に違いがあります。
相続では、遺言書を残しておくことで、財産を所有する人の一方的な意志で財産を引き継ぐことができます。財産を受け取る人の同意はいりません。
一方、贈与では、財産を渡す人と受け取る人双方の同意がないと、成立しません。いくら財産を渡したいと考えたとしても、受け取る人が拒否すると贈与できません。

③引き継ぐ人

相続の場合は、遺言書があれば財産を引き継ぐ人を指定(法定相続人以外でも可)することができますが、遺言書がない場合は、法定相続人で遺産分割協議を行い、誰が何を引き継ぐかを決めます。
贈与の場合は、財産を引き継ぐ人を指定することができます。もちろん、法定相続人以外の第三者でも問題ありません。

相続と贈与のメリットとデメリット

では、相続と贈与それぞれのメリットとデメリットを確認しましょう。
主なメリットやデメリットは次のとおりです。

①相続
【メリット】

・さまざまな控除や特例がある 相続には、基礎控除や配偶者に対する相続税額の軽減、小規模宅地等の特例など、さまざまな控除や特例があり、相続税額が安くなったり、そもそも相続税がかからなかったりする場合もあります。

 

・不動産に対する税金が安い 不動産を取得すると、登録免許税や不動産取得税などの費用がかかりますが、相続では登録免許税は0.4%、不動産取得税は無税と優遇されています。

【デメリット】

・財産を引き継ぐ相手を選べない
相続では、遺言書がない場合は、財産を引き継ぐ相手を選ぶことができません。そのため、事業を継承したい人に財産を残せなかったり、遺産を巡って相続人同士でトラブルになることもあります。

②贈与
【メリット】

・引き継ぎたい相手に、引き継ぎたい財産を引き継げる
贈与では、引き継ぎたい相手に、引き継ぎたい財産を引き継ぐことができます。また、引き継いだ相手がその財産をどう使うかなどを監視することもできます。   ・非課税の贈与が多い
一定の条件を満たせば、教育資金や子育て・結婚資金などの贈与が非課税になります。

 
【デメリット】

・死後のトラブルに注意 贈与は贈与者・受贈者双方の同意が必要です。そのため契約書がない場合など、財産を引き継いだ人の死亡後に、贈与をめぐって相続人同士でトラブルになることもあります。

相続の流れと計算方法

一般的な相続の流れを知ろう

ここからは、相続と贈与それぞれについて詳しく見ていきましょう。まずは相続です。

一般的な相続の流れは以下のようになっています。
①遺言書の有無の確認

相続では、まず被相続人の意志が尊重されます。遺言書がある場合は、原則その記述通りに遺産の分割が行われます。そこで、遺言書の有無を確認します。

②相続人の確認

遺産を分割するためには、相続人が誰かを確定する必要があります。相続人の確認は、戸籍謄本等を遡って調べます。ここで、初めてその存在がわかる相続人がいることを確認する場合もあります。

③財産の確定

被相続人(亡くなった人)が銀行口座や不動産など、どのような財産を持っていたかを確定します。財産の確定は、通帳の流れや郵便物などから調査します。

④財産の評価と遺産分割協議書の作成

相続人全員で財産をどのように分割するのか協議し、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割割合などを決めるために、被相続人の所有している財産の価値を評価します。

⑤相続税の申告と納付

遺産分割が決まれば、相続開始から10か月以内に、相続税の申告書を作成し、相続税の申告と納付を行います。

⑥名義変更の手続き

必要に応じて、口座や不動産などの名義の変更手続きを行います。

 
※個人事業主など、確定申告が必要な人が亡くなった場合は、相続開始後4か月以内に準確定申告を行う必要があります。

相続税はいくらからかかる?相続税の計算方法

では、相続税の計算方法について見ていきましょう。
相続税は、遺産の価値が基礎控除額を超える場合のみに支払う必要があります。
基礎控除とは、どの相続でも必ずある基本の控除のことです。基礎控除額は以下の計算式で計算します。

 
相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
 

例えば、相続人が配偶者と子供1人の合計2人の場合の基礎控除額は、3,000万円+600万円×2人=4,200万円となります。
基礎控除額を超える遺産がある場合は、その超えた金額に税率をかけ、控除額を引いて相続税を計算します。

 
例)
遺産の総額が1億円、相続人が配偶者と子供1人の合計2人のため基礎控除額は4,200万円、相続税率は30%、控除額700万円の場合
  相続税の金額は、(遺産の総額1億円-基礎控除額4,200万)×30%-控除額700万円=1,040万円です。  
※今回の計算は相続税の概算を求めるためのものです。実際の計算はこれよりも複雑となります。

贈与には2つの制度がある 暦年課税と相続時精算課税とは

暦年課税と相続時精算課税とは

次に贈与について見ていきましょう。贈与には大きく分けて、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。
暦年課税とは、一般的な贈与のことです。毎年110万円までの基礎控除があるので、贈与した財産の価値が110万円をこえた場合に、贈与税の申告と納付を行います。
  相続時精算課税とは、いわば贈与と相続を一体化した制度です。贈与時には税金をかけない(合計2,500万円までの贈与の場合。2,500万円を超えると、超えた部分に一律20%の税金がかかる)代わりに、後日相続時に、贈与した財産も含めて相続税の計算を行います。贈与時に税金をかけないことで、贈与しやすくしています。

 

相続時精算課税制度を選択するためは、60歳以上の親や祖父母から20歳以上の子や孫への相続であることなど、一定の条件があります。贈与があった場合は、暦年贈与か相続時精算課税のどちらかを選択することになります。

暦年課税と相続時精算課税のメリットとデメリット

暦年課税と相続時精算課税にはそれぞれメリットとデメリットがあります。

①暦年課税
【メリット】

・毎年110万円の基礎控除がある
暦年課税では、毎年110万円の基礎控除があります。この基礎控除を上手く使えば、結果として大きく節税できます。
  ・納める税金がなければ、相続税の申告不要
贈与した財産の価値が、110万円の基礎控除に満たない場合などは、支払う贈与税がありません。その場合は贈与税の申告自体が不要なので、手間がかかりません。

 
【デメリット】

・贈与税がかかる場合、納税資金の準備が必要 贈与税は、贈与される側が税金を支払います。そのため、贈与税がかかる場合は納税資金の準備が必要です。納税資金の準備ができない場合は、贈与された財産の中から支払うことになるので、贈与の効果がその分小さくなります。

②相続時精算課税
【メリット】

・合計2,500万円まで非課税 相続時精算課税は、例えば祖父からの贈与など、受け取る人ごとに合計2,500万円まで贈与税が非課税です。2,500万円の非課税枠は、1年間のみ有効というわけではなく、相続までに合計で2,500万円の非課税枠となっているので、大きな節税効果が期待できます。

 

・将来価値が値上がりした場合に有利 相続時精算課税は、後日相続時に、贈与した財産も含めて相続税の計算を行いますが、その時の計算の基となる金額は贈与時の金額です。
不動産や株式など、相続時に価値が上がっていても、贈与時の低い金額で相続税の計算をするので有利です。

 
【デメリット】

・納める税金がなくても申告が必要
相続時精算課税を選択する場合は、その旨の届け出や、納める税金がなくても贈与税の申告が必要なので、手間が掛かります。
  ・暦年贈与に戻せない
いったん相続時精算課税を選択すると、後から暦年課税に戻すことができません。そのため、相続時精算課税を選択する場合には注意が必要です。

まとめ

今回は、相続と贈与の基礎についてご紹介しました。財産をどのように親族に引き継ぐかは、経営者にとって重要です。そのためには、相続や贈与について簡単にでも知っておく必要があります。ぜひこの記事を参考に、財産の引き継ぎ方について考えてみてはいかがでしょうか。

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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