退職するのも楽じゃない! 老後に向けた準備について徹底解説 | MONEYIZM
 

退職するのも楽じゃない!
老後に向けた準備について徹底解説

今は仕事が充実して引退なんて考えられないという方でも、亡くなるまでお仕事を続けるつもりの方は少ないのではないでしょうか。

実は、会社の代表者が退職する場合には事前の準備が欠かせません。今回は、将来の退職に向けて検討すべきことについて解説します。

勇退時期はもう決めた?生涯現役、年金減額

60歳、65歳になってから慌てても遅すぎる!年金のしくみのおさらい

年金は65歳からもらえる、手続きをすると60歳からもらえるらしいなど、年金にはさまざまな噂があります。年金というと、高齢になったときに受け取ることができる老齢年金をイメージする方が多いと思いますが、他にも一定の障害者になってしまった場合やご家族を残して亡くなってしまった場合にも年金が支給されます。今回は、老齢年金に焦点を当てて解説します。

老齢年金には、老齢基礎年金と老齢厚生年金があります。自営業など一定の方は厚生年金には加入しておらず、基礎年金(国民年金)にのみ加入していることがあります。しかし、厚生年金に加入している期間は自動的に国民年金に加入していたものとみなされますから、逆のケースはありません。

 

老齢基礎年金は原則として65歳から受け取ることができますが、先延ばしにすることが可能です。その場合には、割増された年金を受け取ることができます。また、手続きをすることで60歳以上の場合には早く受け取ることが可能ですが、その代わり年金が減額されてしまいます。

老齢厚生年金にも同様の制度がありますが、誕生日によって様々な例外があります。詳しくは日本年金機構で確認してみましょう。

年金が減額された上に所得税まで!さらには掛金の支払も!?

受け取っている給与や賞与が一定額を超えた場合には、老齢厚生年金の金額が減額されたり、一切受け取ることができなくなってしまったりします。

会社の役員としての給与や賞与とは別に、個人事業を営んでいる場合の事業所得など、老齢厚生年金には影響しない収入もありますので、詳しくは日本年金機構に確認してみてください。

受け取ることができる老齢厚生年金が減額されてしまうことを防ぐため、受け取る時期を先延ばしにしたり、可能であれば給与や賞与を減らして老齢厚生年金の金額に影響しない事業所得を増やしたりするなど、様々な工夫をするといいでしょう。

 

また、年金は給与や賞与と比較して税制面ではとても優遇されていますが、非課税ではありません。65歳未満の方と比較して、65歳以上の方はより優遇されていますので、できれば65歳以上から受け取り始めることをおすすめします。

 

さらに、働いて給与や賞与を受け取っている場合には、70歳になるまで厚生年金の掛金を支払わなければならないことに注意が必要です。皆様の事情や考え方によりますが、厚生年金を受け取る権利が発生した後にも厚生年金の掛金を支払うのは効率が悪く、あまりおすすめできません。

 

このような制度のしくみをきちんと理解して、代表者の給与や賞与、退職時期を事前に計画しておきましょう

給与と賞与でこんなに違う!社会保険料を節約しながら年金をもらう裏ワザ

厚生年金では、毎月の給与に応じて標準報酬月額を計算します。また、その月の過去12ヶ月の間に支払われた賞与(正確には標準賞与額)の1/12の金額を総報酬月額相当額とします。

厚生年金の掛金は、給与については標準報酬月額、賞与については賞与の金額(標準賞与額といいます)によって計算されます。

標準賞与額は原則として賞与の金額から1、000円未満を切り捨てた金額ですが、1ヶ月に150万円を超えたときは150万円となります。つまり、1ヶ月に賞与を150万円受け取っても1、500万円受け取っても標準賞与額は同じ、つまり社会保険料も同じです。したがって、毎月の給与を数万円に設定し、その代わり賞与を1年に1度、まとまった金額を支給することで社会保険料を大幅に節約できます。

さらに、標準報酬月額と総報酬月額相当額の合計額によって老齢厚生年金が減額されるかどうかが決まりますので、60歳を超えても高額の報酬を受け取る予定で、年金の全額が支給停止になると諦めていた方も、少し減額されてしまいますが年金の大部分を受け取ることができます。

めざとい人はやっている、節税しながら退職金を積み立てるこんな方法

退職金はこんなにおトク!最大限まで使わにゃソン!

会社からお金を受け取るという点では、給与や賞与と退職金では大きな違いがないと思われるかもしれません。しかし、退職金は所得税や社会保険料がとても優遇されていることをご存知でしょうか。

具体的な計算方法については以前解説していますので、ぜひご参照ください。

 

 

さらに、退職金には社会保険料がかかりませんので、給与や賞与との手取りの差はさらに大きくなります。したがって、給与や賞与で受け取るよりも退職金で受け取るほうが有利なのですが、あまりに高額な退職金は税務署が認めてくれません。

過去の事例も参考に、税務署とトラブルにならない金額を税理士とよく検討しましょう。

せっかくだから節税も!金融商品を使った賢い積立

なるべく退職金として受け取るほうが有利なのはわかった、税務署とトラブルにならない金額も計算できた、あとは退職金の資金を定期預金で積み立てるだけ。そう思うかもしれません。

せっかく退職金の資金を貯めるなら、節税をしながら有利に積み立てることができる方法がいくつもあります。

代表的なのは中退共という国が整備している制度を利用する方法です。原則として従業員全員が加入する必要がありますが、自社が選んだ掛金を毎月納付することで、退職したときには中退共から退職金が支払われます。掛金を支払った時点で掛金全額が損金となるため、税務上優遇されています。

他にも、倒産防止共済を利用する方法や、掛金が損金となり解約返戻金が多い民間の保険を利用する方法などの色々な方法がありますので、自社に適した方法を上手に組み合わせることで、節税効果を大きくすることができます。

また、役員の方個人が加入することができる小規模企業共済という制度があります。個人事業主や小規模な会社の役員の方が自分のために退職金を積み立てる制度なのですが、掛金の全額が所得から控除される上に、将来受け取ることができるお金は税務上優遇されている退職所得や公的年金として取り扱われますので、節税メリットが大きい制度です。

忘れてませんか?会社の将来

会社を清算したら税金が!みなし配当に注意

会社に後継者がいない場合、ご自身の引退後は会社を清算しようと考えている代表者もいらっしゃることでしょうが「みなし配当」の制度をご存知でしょうか。

会社を清算する場合、負債をすべて払い終わっても残った財産は株主が持ち株比率によって分けることになります。しかし、自分が持っている株式の価値を超える財産を受け取った場合には、税法上はみなし配当の制度が適用され、配当とみなされて課税されてしまいます。

清算するときに受け取る財産が現金やすぐに換金可能な資産であればいいのですが、そうでない場合には納税するための資金がなく、困ってしまうことも多いようです。

将来は会社を清算しようと考えている場合、10年、20年前から計画を立てて会社の財産を個人に移転することを強くおすすめします。

この記事では制度の概要だけ解説しましたが、とても複雑な検討が必要となりますので、必ず税理士の助言を受けましょう。

事業譲渡も要検討!後継者育成は万全?

代表者の方が「後継者がいない」とおっしゃっている場合、ご自身のお子様のことだけを考えているケースが見られますが、少し視点を広げてはいかがでしょうか。

例えば、長年勤務している従業員に長期計画で株式を売却して後継者になってもらったり、同業他社に事業譲渡したりという選択肢も考えられます。また、会社の規模によっては株式公開を行って会社を売却することも考えられます。

せっかくご自身が努力して形作った会社ですから、思い入れも大きいことでしょう。会社を大事に引き継いでくれる方を、今から探してみてはいかがでしょうか。

まとめ

会社を経営していると検討しなければならない課題が次から次へと現れますから、将来のことを考える余裕がないかもしれません。しかし、代表者が仕事を続けられなくなった場合の対策は法律的にも複雑な検討が必要であり、かつ長期的な準備が必要になります。また、将来の話ですから、信頼できる若い税理士の助言を受けなければいけません。

たまには時間をとって、会社の将来を考えてみてはいかがでしょうか。

 

千葉勇人
早稲田大学商学部に在学しながら会計事務所に勤務、その後経営学修士を取得し、記帳代行業・海事代理士業を営む。
自分自身が個人事業主・同族企業の会社役員として法人税・所得税・消費税・相続税を「自分ごと」として日々取り扱っている経験をいかし、皆様にとって有意義な情報をご提供します。
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