妻が個人事業主になった場合に、
夫の税金はどうなるの?
妻が個人事業主になった場合に、  夫の税金はどうなるの?

2018/7/11

 
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夫婦で共働きとひとくちに言っても、働き方にはいろいろな形があります。夫がサラリーマンで、妻がパートやアルバイトという形が一般的ですが、夫がサラリーマンで、妻が個人事業主という場合もあります。このとき注意したいのが、夫の税金等がどうなるかということです。ここでは、妻が個人事業主の場合、夫の税金等に与える影響について解説します。

妻が個人事業主の場合は、扶養家族になる?

扶養家族の定義って何?

働いている妻にとって気になるのが、所得税法上、夫の扶養家族になるのかということです。夫の扶養家族になると、税の優遇などを受けることができます。では、扶養家族の定義とはどうなっているのでしょうか。

扶養家族は、働いている本人(夫)と生計を同じにしている親族で、1年間の合計所得金額が38万円以下の人のことです。この条件を満たすと、夫の扶養に入ることになります。

個人事業主の場合の所得金額とは

夫の扶養家族になるためには、1年間の合計所得金額が38万円以下である必要があります。パートやアルバイトの場合、1年間の収入を103万円までにしないといけない、ということをよく聞きますが、これも1年間の合計所得金額が38万円以下にするためです。

所得税では、個人が1年間に得た収入を10の種類に分けて、それぞれで所得金額(もうけ)を計算します。パートやアルバイトの場合は、給与所得に該当します。

給与所得の場合は、1年間の合計所得金額を次の計算式で求めます。

 

給与所得金額=収入-給与所得控除(最低65万円)

 

給与所得では、誰でも最低65万円の給与所得控除があります。パートやアルバイトの1年間の収入を103万円に抑えれば、103万円-給与所得控除65万円=38万円で、1年間の合計所得金額が38万円以下になるので、夫の扶養に入れます。

 

では、個人事業主(事業所得)の場合、所得金額はどのように計算するのでしょうか。個人事業主(事業所得)の場合の1年間の合計所得金額は、次の計算式で求めます。

 

事業所得金額=収入-経費-青色申告特別控除(青色申告の場合のみ)

 

個人事業主の場合、収入から経費を引いた「もうけ」が所得です。例えば、収入が200万円、経費が170万円なら、所得金額は差し引き30万円で、夫の扶養に入ることができます。1年間の合計所得金額を38万円以下に抑えるためには、収入を減らすか経費を増やす必要があります(経費は事業と関係のあるものしか認められないので注意が必要)。また、青色申告をすると10万円または65万円の青色申告控除も差し引くことができます。

妻が扶養家族を外れると、夫の税金が高くなる

配偶者控除と配偶者特別控除

妻が夫の扶養家族を外れると、夫の税金は高くなります。それは、夫の所得に対する控除が少なくなるからです。所得税は、所得金額から所得控除を差し引いたものをもとに計算します。夫がサラリーマンの場合は、以下の計算式で計算します。

 

所得税の金額=(収入-給与所得控除-所得控除)×税率-控除額

 

※(収入-給与所得控除-所得控除)の金額に対して、税率と控除額が決まっています。詳しくは下記のリンク(「所得税の速算表」)を参照にしてください。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

 

所得控除とは、扶養家族がいるかどうかや、生命保険に加入しているかどうかなど、その人の生活状況などに考慮して受けることができる控除のことです。この所得控除の中に「配偶者控除」があります。妻が夫の扶養家族を外れると、夫の配偶者控除が無くなるので、税金が高くなります。

 

また、配偶者控除以外に「配偶者特別控除」というものがあります。配偶者控除を受けられる基準は、妻の所得金額が38万円以下であるかどうかですが、妻の所得が40万円の人と、数百万円ある人を同じように扱うと不平等感があります。そこで、妻の所得金額が38万円を超えても、その超えた金額が少ない場合には、配偶者控除の代わりに配偶者特別控除が受けられるようになっています。

 

ところで、配偶者控除や配偶者特別控除の要件や金額は、2018年から改正されています。

夫の所得金額が1,000万円を超える場合は、妻の所得金額が38万円以下であっても、そもそも配偶者控除を受けることができません。また、夫の所得金額が900万円を超える場合も、配偶者控除や配偶者特別控除の金額が減額されます。配偶者控除や配偶者特別控除の金額は以下の表のとおりです。

【配偶者控除(妻の合計所得金額38万円以下)】
夫の合計所得金額 控除額
900万円以下 38万円
900万円超950万円以下 26万円
950万円超1,000万円以下 13万円
【配偶者特別控除】
妻の合計所得金額 配偶者特別控除の控除額
夫の合計所得金額
900万円以下の場合 900万円超950万円以下の場合控除額 950万円超1,000万円以下の場合
38万円超85万円以下 38万円 26万円 13万円
85万円超90万円以下 36万円 24万円 12万円
90万円超95万円以下 31万円 21万円 11万円
95万円超100万円以下 26万円 18万円 9万円
100万円超105万円以下 21万円 14万円 7万円
105万円超110万円以下 16万円 11万円 6万円
110万円超115万円以下 11万円 8万円 4万円
115万円超120万円以下 6万円 4万円 2万円
120万円超123万円以下 3万円 2万円 1万円
123万円超 0円 0円 0円

妻が扶養家族を外れると、夫の税金はいくら高くなる?

では、妻が扶養家族を外れると、夫の税金はいくら高くなるのでしょうか。具体例で見てみましょう。

 

例)

夫の年収500万円、給与所得(給与所得控除後)346万円、所得控除は基礎控除38万円のみ、税率10%、控除額97,500円の場合

・妻が扶養家族に該当する場合

妻が扶養家族に該当する場合は、基礎控除のほかに38万円の配偶者控除があります。

 

課税所得金額=
給与所得346万円-(基礎控除38万円+配偶者控除38万円)=270万円
所得税=270万円×10%-控除額97,500円=172,500円
・妻が扶養家族に該当しない場合

妻が扶養家族に該当する場合は、基礎控除の38万円のみです。

 

課税所得金額=給与所得346万円-基礎控除38万円=308万円
所得税=308万円×10%-控除額97,500円=210,500円

 

妻が扶養家族から外れると、210,500円-172,500円=38,000円も税金が高くなります。

夫がサラリーマンの場合は、社会保険に注意しよう

社会保険にも扶養の考えがある

扶養家族の考え方があるのは、税金面だけではありません。夫がサラリーマンの場合に加入している社会保険にも扶養の考えがあります。社会保険とは、健康保険と厚生年金保険を指します。

特に、厚生年金保険では、妻が扶養になると、妻に保険料を納付する必要がなくなります。保険料を納付していなくても、保険料納付済期間として将来の年金額に反映される、とても有利な制度です。

 

社会保険で妻が夫の扶養家族となるためには、妻に130万円の基準があります。この130万円が何を指すのかは、妻がパート・アルバイトの場合と個人事業主の場合で異なります。

妻がパート・アルバイトの場合は、単純に1年間の収入が130万円未満かどうかで判断します。

妻が個人事業主の場合は、1年間の収入から経費を差し引いた金額、つまり所得金額が130万円未満かどうかで判断します。収入だけで判断するわけではないので、注意しましょう。

妻が社会保険の扶養から外れたらどうなるの?

社会保険には、健康保険と厚生年金保険の2つがあります。夫の扶養に入っている場合は、夫が支払っている社会保険料だけの負担で済みましたが、個人事業主である妻が、社会保険の扶養から外れると、国民健康保険と国民年金保険に加入し、保険料を支払う必要があります。しかも、扶養から外れたといっても、夫の社会保険料の負担額は変わりません。単純に妻の保険料分、家計からの負担額が増えてしまうので注意が必要です。

国民健康保険料は、所得金額などに応じて金額が異なります。国民年金は、毎月同額(平成30年度は16,340円)を支払う必要があります。

まとめ

夫の扶養家族から外れると、税金だけでなく保険料などの負担も大きくなります。妻が個人事業主の場合は、扶養家族になる基準である所得などの計算方法が、パートやアルバイトの場合と異なります。この記事を参考に、計算方法を間違えないようにしましょう。

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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