消費税に注意!アパート経営に特化した
資産管理会社の税務ポイント
消費税に注意!アパート経営に特化した  資産管理会社の税務ポイント

2018/7/24

 
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サラリーマン大家さんとして活躍し、順調に収益を伸ばしたところで法人化。所得税はもちろん、法人税の勉強だって万端なはずです。しかし、消費税の勉強はいかがでしょうか?

大家業や住宅貸付業にとって消費税はとても重要なので、この記事でもう一度復習してみましょう。

意外に盲点!?消費税の落とし穴

住宅の家賃収入は消費税が非課税!

法人であれ個人であれ、ある年(事業年度)の消費税課税売上高が1,000万円を超えた場合、その翌々年(事業年度)は課税事業者となり、消費税の納税義務が発生します。一般的に法人であれば、毎期の課税売上高が1,000万円を超えているため、あまりこの規定を気にする機会はありません。しかし、住宅貸付業を営む法人の場合、アパートなど住宅の家賃収入は消費税が非課税なので、規模が大きい法人でも普段は消費税の非課税事業者であることが多いようです。このような法人の場合、以下の2点に注意する必要があります。

消費税の記帳を忘れないこと!

住宅貸付業を営む法人の場合には、土地の売却については消費税が非課税なので影響がありませんが、それ以外の資産を1つ売却しただけで、翌々事業年度に消費税の課税事業者となることがあります。資産を売却してから1年以上も先のことですので、うっかりその事業年度に消費税の記帳を忘れてしまうと、その事業年度の消費税の申告ができなくなってしまいます。また、期首・期末近くに資産を売却した場合、税務署との見解の相違で資産を売却した事業年度が前後する可能性があります。その場合、後々消費税の課税事業者となる事業年度が前後してしまい、消費税の申告ができなくなってしまいます。

 

また、住宅貸付業を営む法人であっても、駐車場の貸付や小規模事務所の貸付などの課税売上もあるでしょう。少額の課税売上が積もり積もって1,000万円を超えていたということも稀にありますが、消費税の記帳をしていないと、そもそも課税売上高が1,000万円を超えたかどうか把握できません。

 

したがって、住宅貸付業を営む法人の場合には、その事業年度に消費税の申告義務があるかどうかにかかわらず、毎期必ず消費税の記帳を行うのが実務上のセオリーなのですが、稀に申告義務がない事業年度には消費税の記帳をしていない法人があります。消費税の課税売上や、課税事業者となる事業年度をきちんと把握し、また課税事業者となる事業年度が前後しても慌てないように、消費税の記帳は毎期欠かさないようにしましょう。

資産売却のタイミングに注意!

当然ですが、例外を除き土地以外の資産の売却には消費税が課税されますから、資産売却の必要がある場合には、できる限り消費税の非課税事業者である事業年度に行うことが望ましいでしょう。もし、複数の資産を売却する予定がある場合には、同一の事業年度に一括して売却した方が、課税事業者となる事業年度を減らせるため、消費税対策に有効です。

 

また、消費税の課税事業者となった場合には、決算期を変更し、消費税の課税事業者となる事業年度を短縮することで、消費税を節税することが可能です。例えば、4/1~3/31を事業年度と定めている法人の場合、4/30を決算期と定めることで、消費税の課税事業者となる期間を4/1~4/30の1ヵ月間に短縮できます。

 

決算期の変更により事業年度を短縮する方法は、この記事でご紹介する消費税の手続きを失念してしまった場合に損害を最小限にしたり、累進課税の関係で税額が大きくなることが予想されるときに税率が上がることを回避したりする場合にも利用されます。特に、大家業を営む法人の場合には、資産の組み換えを行う際に予期せぬ多額の利益を計上することがありますので、この方法を知っておくと便利です。

 

例えば、4/1~3/31を事業年度と定めている法人が6月と翌年の1月に資産の組み換えのために不動産の売却を考えている場合、どちらの不動産も含み益が出ているため、まとまった利益が計上される見込みだとします。この場合、決算期を12月末に変更することで利益の発生を2期に分散し、税率が上がることを回避することができます。また、2期目の納税を先送りできますので、資金繰りの面でも有利です。

 

ただし、このスキームを利用することにより、消費税の課税事業者となる年度が2事業年度となってしまう可能性が生じるため、十分な検討が必要です。

忘れちゃいけない「消費税簡易課税制度選択届出手続」

消費税は原則として、受け取った消費税から支払った消費税を差し引いて納税しますが、非課税売上を獲得するために支払った消費税については差し引くことができません。

 

住宅貸付業を営む法人の場合には、大きな支出のほとんどがアパートの修繕費や不動産業者への広告費用などであり、支払った消費税のほとんどが、受け取った消費税から差し引くことができません。このような法人の場合には、消費税の簡易課税制度を選択した方が消費税の納税額を抑えることができるケースが多いです。

 

消費税の簡易課税制度は、前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下であり、その事業年度開始前に届出書を提出した場合に選択できます。簡易課税制度を選択すると、課税売上高の一定率が課税仕入だったものとみなして消費税を計算することができます。課税仕入のみなし仕入率は業種により異なりますが、不動産業の場合には40%です。

 

簡易課税制度を選択することで、税額が安くなる可能性が高いことに加えて、仕入については消費税の帳簿を作成する必要がなくなりますので、ぜひ一度検討することをおすすめします。

資産購入で消費税の還付があるかも!?「消費税課税事業者選択届出書」

「消費税課税事業者選択届出書」を提出すると、非課税事業者となる事業年度でも、あえて課税事業者となることができます。なぜ、わざわざ課税事業者を選択するのかと思われるかもしれませんが、消費税の課税仕入が課税売上より大きい場合、消費税の還付を受けることができるのです。

 

住宅向けではなく、事務所や店舗向けのビルを購入する計画がある場合、土地は消費税が非課税ですが、建物は課税仕入となります。したがって、高額な建物を購入する場合、消費税の還付を受けることができる可能性があります。

 

簡易課税制度を選択している場合には還付を受けることができないどころか、納税が必要になってしまいますので、事前に不適用届出書を提出するのを忘れないようにしましょう。

 

また、一度課税事業者になると、一定事業年度は非課税事業者に戻れないという決まりがあります。事前に税理士と計画を立て、税額をシミュレーションしてみると良いでしょう。

まとめ

このように、アパート経営に特化した法人の場合には、他の法人とは異なるさまざまな注意点やテクニックがあります。この記事では消費税を中心に解説しましたが、減価償却や修繕費にも注意しなければいけません。

大家業は収益や費用の見通しが立ちやすいため、さまざまな節税策を利用しやすい業種です。よく検討して、制度を上手に利用しましょう。

千葉勇人
早稲田大学商学部に在学しながら会計事務所に勤務、その後経営学修士を取得し、記帳代行業・海事代理士業を営む。
自分自身が個人事業主・同族企業の会社役員として法人税・所得税・消費税・相続税を「自分ごと」として日々取り扱っている経験をいかし、皆様にとって有意義な情報をご提供します。
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