年金の手続きがマイナンバー対応へ 事業主がするべき対応とは? | MONEYIZM
 

年金の手続きがマイナンバー対応へ
事業主がするべき対応とは?

平成30年3月5日から、マイナンバーによる日本年金機構の情報提携の仕組みが強化されました。これまでは基礎年金番号によって被保険者が識別されていましたが、現在はマイナンバーを利用して各種届出や申請を行なうことができます。

マイナンバーへの対応に伴って事業主の方の対応も変化します。今回は、年金分野でのマイナンバー対応に伴う事業主の対応を詳細に解説していきます。

年金手続きがマイナンバー対応へ

マイナンバー記入の流れ

まずは届け出の流れを確認しておきましょう。

利用目的の通知書類の作成

従業員のマイナンバーを利用するとき、個人情報保護法に基づいた通知が必要になります。預かったマイナンバーをどのような用途に使うのかを書類で通知する必要があります。まずは今年から年金等の手続きにマイナンバーが使われるようになったということと、その手続きにマイナンバーを利用する旨を説明する書類を作りましょう。

マイナンバーの提出と本人・番号確認

書類を紙あるいは電子媒体で配布したら、従業員からのマイナンバーの提出を待ちましょう。このとき、同時に本人確認を行う義務があります。パスポートや運転免許証など身元が確認できる書類と、マイナンバー通知カードあるいはマイナンバーが印字された住民票などマイナンバーを確認できる書類を同時に提示してもらわなければなりません。ただし、マイナンバーカードの提示によってマイナンバーを通知された場合は、同時に身元と番号の確認がなされたものとして扱うことができます。

必要な届出書類にマイナンバーを記入する

提出が必要な書類の規定の欄にマイナンバーなどを記入します。届出が必要な書類は多岐にわたり、書類によっては第3号被保険者(扶養配偶者)のマイナンバーも必要になります。

なお、日本年金機構に提出する書類の全てにマイナンバーの記入が求められるようになりました。これまで基礎年金番号に基づいて管理されていたものがマイナンバー準拠に変更されたためです。

従来からの変更点

行政側でマイナンバーに基づいて管理されている情報の照合が容易になり、住所変更や氏名変更、死亡届を日本年金機構に届け出る必要がなくなりました。特に住所については、マイナンバーの記載によって届出時にも記載を省略することができます。

事業主が行う対応

マイナンバー等確認リストの記入、提出

従業員を持つ事業主の元には、平成29年12月に「マイナンバー等確認リスト」という書類が送付されました。これは基礎年金番号とマイナンバーの照合が実施できていない従業員をリストに整理した書類です。

「マイナンバー等確認リスト」の提出が済んでいない場合、基礎年金番号とマイナンバーが対応していない状態にあります。その状態では、マイナンバーによる届出の簡略化を行うことができません。まずは「マイナンバー等確認リスト」を確実に記入して提出しておきましょう。

マイナンバーの記入について

これまでの基礎年金番号の代わりにマイナンバーを記入することになりました。事業主がマイナンバーを記入して届け出る書類は日本年金機構のウェブサイトから確認することができます。

第3号被保険者(扶養配偶者)については、第2号被保険者(従業員本人)に届出書の提出を委任するというチェック欄が用意されています。その部分にチェックがつけられている場合、第3号被保険者の本人・番号確認の義務は事業主が負うことになります。

その場合、従業員と同じように、マイナンバーカードによる本人・番号確認が必要です。マイナンバーカードがない場合には、パスポートや運転免許証などによる本人確認と、マイナンバーが印字された住民票あるいはマイナンバー通知カードによる番号確認が求められます。

なお、これらの確認作業を従業員本人に委託することもできます。その場合、第3号被保険者(扶養配偶者)の分の本人確認と番号確認の義務は従業員が負うことになります。先ほどのチェック欄にはチェックをつけず、マイナンバーの利用目的などを通知する初めの書類に、番号確認などの義務を明示しておきましょう。

従業員のマイナンバーを利用する際の注意点

個人情報であるため扱いに注意

マイナンバーは個人情報保護法の対象に含まれています。そのため、従業員から提出されたマイナンバーをあらかじめ通知した利用目的以外で使うことは禁じられています。したがって、他の行政届出書類でマイナンバーの記入が必要になった場合には、改めてそれを伝える書類を作らなければなりません。

本人確認の省略

また、本人・番号確認については繰り返し出てきていますが、従業員であれば本人確認を省略することもできます。雇用時の身元確認に運転免許証やパスポート、写真付き学生証などの本人確認書類が用いられていれば、すでに本人確認が行われているとみなされるからです。

その場合は本人確認を省略し、番号確認(マイナンバーが印字された住民票かマイナンバー通知カードの確認)のみを行えばよいとされています。ただし、第3号被保険者(扶養配偶者)の届出についてはこの限りではありませんので、注意が必要です。

確認書類は提示でよい

加えて、それら本人・番号確認書類は「提出」ではなく「提示」が求められるのみであることを理解しておきましょう。わざわざコピーを用意してもらう必要はなく、マイナンバー提出時に確認書類の氏名と写真を確認して本人確認し、印字されたマイナンバーと提出されたマイナンバーが一致しているか番号確認を実施すれば、即座に返却して構いません。

従来との変更点は?

マイナンバーは所得税などの処理にも用いられる共通の番号です。従来は基礎年金番号という日本年金機構の固有番号を利用していましたが、住所・税・社会保障の全てがマイナンバーによって管理されるようになりました。

これにより事業主の行う従業員のための行政手続が簡易になりました。特に従業員が住所変更を届け出ていれば、マイナンバーを通じてその変更が税や社会保障手続にも適用されるのは大きな変化です。事業主は住所変更届などをその都度提出する必要がなくなり、届出は簡略化されたと言えるでしょう。

その一方で、マイナンバーは多くの情報と結びつく重要な個人情報でもあります。そのため本人・番号確認や利用目的の通知など、その扱いには慎重な対応が求められます。

まとめ

従業員の年金手続がマイナンバーによって行われるようになりました。継続して従業員を雇っていた方はまず「マイナンバー等確認リスト」を提出し、それ以外の方も必要な書類が生じたら従業員にマイナンバーの提出を求めましょう。住所記入を省略できる代わりに本人確認と番号確認が必要になったことを忘れず、また、預かったマイナンバーの用途は事前説明の幅を超えないようにしましょう。これらにさえ気をつければ、マイナンバーによる手続は事業者の手間を大いに減らしてくれることでしょう。

 

山田隆裕
慶應大学卒。現、同大学院所属。
大学4年時に公認会計士試験に突破。
自分の知識の定着も兼ねて、会計・財務などに関する知識を解説していきます。
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