被災地に義援金を送りたい! 税務上の扱いまとめ
被災地に義援金を送りたい! 税務上の扱いまとめ

2018/5/30

 
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被災者のもとへ届けられる義援金は、支払った側が寄付金控除を受けたり、損金算入したりできることはご存知でしょうか。義援金の税務上の扱いは、義援金を送る相手によって異なります。今回は、それぞれのケースで義援金の税務処理がどのように変化していくのか解説いたします。

義援金の税務処理

「義援金」とは、被災者に直接渡るお金のことを指します。よく耳にする「寄附金」や「支援金」との違いは何なのでしょうか。それは渡す相手によって名称が変化しているのです。義援金は受付機関を通じて被災者へ公平に分配されるのに対し、寄附金や支援金は被災者支援の活動を行う団体に対して支払われ、お金の使途はその団体が決定します。被災地に支援を行いたい場合は注意しましょう。

義援金は税務上では寄附金と同様に扱われますが、支払う相手によって損金の算入額が変化するので、送金先をうまく選べば税金を減らすことができます。以下、それぞれのケースを個人の場合と法人の場合に分けて解説していきます。

災害対策本部に義援金を支払う場合

個人の場合

個人による災害対策本部への義援金は「特定寄附金」に該当し、寄附金控除の対象となり、所得金額から控除されます。これは地方公共団体への寄附金として、後述のふるさと納税に該当すると見なされます。控除額は、特定寄附金の合計額より2,000円を引いた額となります。ただし特定寄付金の合計額は、その年の所得の4割を上限とします。

法人の場合

法人による災害対策本部への義援金は「国等に対する寄附金」に該当し、全額を損金に算入することができます。

ふるさと納税によって義援金を支払う場合

個人の場合

災害発生時には、ふるさと納税を利用して被災した自治体へ義援金を送ることができます。ふるさと納税を行った個人は、確定申告によって所得税と住民税の控除を受けることが可能です。普段確定申告を行わないサラリーマンなど給与所得者は、ワンストップ特例制度を利用できます。ワンストップ特例制度とは、年間5団体以内の自治体に対するふるさと納税であれば、指定の申請書を支払先の自治体に提出することにより確定申告が不要となる制度です。この制度は上記の災害対策本部に対する義援金にも適用可能です。

所得税と住民税のそれぞれの控除額の計算方法は以下の通りとなります。

所得税

所得控除額(寄附金-2千円)×所得税の税率(0%~45%)

住民税(基本分)

(寄附金-2千円)×10%

住民税(特例分)

(寄附金-2千円)×(100%-基本分(10%)-所得税の税率(0%~45%))

これらを足した金額が控除額となります。ただし、こうして求められた値の全額が控除できるかどうかは、所得金額や家族構成によって異なります。目安としては所得の2%、所得が1,800万円を超える人は所得の4%までが、全額控除のできる上限となっています。

法人の場合

個人の場合とは仕組みが異なりますが、法人もふるさと納税を利用できます。これは正式名称を地方創生応援税制と言い、自治体が地方創生のために行う事業に対して寄附するという形を取るため、復興支援等のプロジェクトを援助することができます。寄附金額のうち、3割は損金に算入でき、2割が法人住民税と法人税から、1割が法人事業税から控除されるので、実質的な負担額は4割で済みます。

日本赤十字社や社会福祉法人中央共同募金会に支払う場合

個人の場合

日本赤十字社や社会福祉法人中央共同募金会が、特定の災害の義援金募集のために開いた口座に対して個人が支払った義援金は、対策本部に支払う義援金と同様に「特定寄附金」に該当します。ただし、ワンストップ特例制度は適用できません。

法人の場合

日本赤十字社や社会福祉法人中央共同募金会の口座に対して法人が支払った義援金は、「国等に対する寄附金」または「指定寄附金」に該当し、全額を損金に算入できます。

ただし、支払った義援金が最終的に国または地方公共団体に届かず、日本赤十字社や社会福祉法人中央共同募金会の事業資金などに使われる場合は、「国等に対する寄附金」の条件を満たさず、特定公益増進法人に対する寄附金として扱われます。

特定NPO法人や公益社団法人等に支払う場合

個人の場合

寄附先が認定NPO法人もしくは公益社団法人等であれば、所得控除の寄附金控除か、税額控除の寄附金特別控除のどちらかを選択することが可能です。寄附金控除の求め方は、上記の災害対策本部への義援金の場合と同様です。対して、寄附金特別控除の計算方法は以下の通りになります。

① 政党等寄附金特別控除

(政党等に支払った寄附金-2千円)×30%

② 認定NPO法人等寄附金特別控除

(認定NPO法人等に支払った寄附金-2千円)×40%

③ 公益社団法人等寄附金特別控除

(公益社団法人等に支払った寄附金-2千円)×40%

これらの合計が寄附金特別控除額となり、所得税額から控除されます。ただし、上限を所得金額の40%とし、また①の上限を25%、②と③の合計の上限を25%とします。

なお、寄附先の団体が認定NPO法人や公益社団法人、公益財団法人でない場合には、寄附金控除等を受けることができません。

法人の場合

法人の場合だと、認定NPO法人や公益社団法人等に支払った寄附金は、「特定公益増進法人に対する寄附金」として扱われ、特別損金算入限度額の範囲内を損金算入することができます。特別損金算入限度額は、

で求めることができます。なお、特別損金算入限度額を超えて損金に算入されなかった分の寄附金額は、一般の寄附金の額に含めます。

「特定公益増進法人に対する寄附金」に含まれない一般の寄附金は、次の計算式によって求められる損金算入限度額の範囲内で損金算入することができます。

被災した取引先に支払う場合

被災し、通常の営業活動を再開するための復旧期間にある取引先に対して、被災前の取引関係の維持・回復を目的として支払われる義援金は、災害見舞金として損金に算入します。ただしこれは、取引先の被害の程度や、通常時の取引の状況等を勘案して妥当と認められる額の範囲内に限ります。

☆ヒント
災害に遭われた方々への一助となりたいという思いから集められる義援金や寄附金は、支払い先の団体によってお金の使途や援助のスピードが異なります。したがって、どの団体に寄附を行うかは、災害の状況や緊急性をもとに判断するべきでしょう。そして、税務上有利な寄附先を選んで、少しでも多くの額を被災地へ送るというのも1つの考え方です。ビスカスでは、寄附金の税務上の取り扱いにも精通した税理士を多数紹介していますので、ご利用を検討されてみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回の記事で解説した通り、義援金の支払い方には複数の方法があり、それに応じて控除額の計算方法が異なります。被災地により多くの義援金を届けられるように、メリットの大きい方法を選択するようにしましょう。

山田隆裕
慶應大学卒。現、同大学院所属。
大学4年時に公認会計士試験に突破。
自分の知識の定着も兼ねて、会計・財務などに関する知識を解説していきます。
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