クーポン券の取り扱い、課税関係はどうなる?
クーポン券の取り扱い、課税関係はどうなる?

2018/3/28

 
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クーポン券は、消費者目線では商品の値段を割り引いてくれる便利な券といった印象しか無いかもしれません。しかし事業主目線からすると、税務上の観点から安易にクーポン券を配布することはできなくなっています。今回はクーポン券を配布するにあたって、課税関係はどのようになっているのかを解説していきます。

広告でクーポンを配る場合の課税関係

クーポンの流れ

メーカーが提供するメーカークーポンは、新聞の内部に記載されているものや折込チラシという形で挟まっているものなど、形態は様々です。このような形でクーポンを用いて販売促進を行う方法をクーポン広告ともいい、消費者はクーポン部分を広告から切り取るなどして小売店へ持参します。小売店ではクーポンに記載された割引率に従って精算が行われ、消費者はお得に買い物をすることができ、メーカーや小売店は顧客を増やして売り上げを伸ばすことに繋げられます。

 

メーカーが消費者にクーポンを提供してから、消費者が小売店でクーポンを用いて精算を行うまでの流れの中には、複雑なお金の移動が生じます。例えば、メーカーが小売店に対して何の説明も行わずにクーポンを発行して提供してしまうと、小売店はクーポンを持参した消費者に対して割引価格で商品を提供するため、小売店のみが損をしてしまいます。そこで、小売店はその損額を立て替えとして後からメーカーに請求を行うのです。

このように、クーポンの利用にはメーカーと小売店、消費者の三者の間でお金とクーポンの複雑な移動が伴います。それらをまとめて管理する機構として、クリアリングハウスが存在します。

クーポンの発行から立て替え額の請求までの流れを整理すると、以下のようになります。

 

  1. メーカーは新聞折り込みや雑誌の付録など様々な手段を用いたクーポンテクニックによって、消費者にクーポンを配布します。
  2. 消費者はそのクーポンを切り取るなどして取得し、割引価格で商品を手に入れるために小売店へクーポンを持っていきます。
  3. クーポン上に記載されている額と実際の店頭価格との差を、小売店は立て替えます。
  4. 立て替えた小売店はメーカーに立替え額の請求を行います。
  5. メーカーは、その立替え額を小売店に支払います。

 

こうした流れの中で、クリアリングハウスはメーカーと小売店の間を媒介し、クーポンの回収、チェック、仕分け、清算等を専門に行います。しかしこの際、メーカーや小売店、クリアリングハウスの課税関係はどのようになっているのでしょうか。以下で解説していきます。

どの取引に税金がかかる?

小売店と消費者の取引

小売店で消費者がクーポンを使用した場合、消費者は消費税や地方消費税などが含まれた店頭価格ではなく、クーポンによって割引された金額を支払います。しかし、実際に小売店が課税対象とされるのは店頭価格になります。これでは小売店が損をしてしまうようにも見て取れますが、そうではありません。

 

上述のようにクーポンを発行しているのはメーカーなので、割り引いた額はメーカーの負担になります。ここでは、小売店がメーカーに対して一時的にキャッシュバック相当額を立て替えているに過ぎず、一連の流れを終えた後に小売店はメーカーから割引額が補填されます。

そのため、小売店と消費者の取引における課税関係は、クーポンがある場合と無い場合で特に変化しません。

メーカーと小売店の取引

上記のように、メーカーは小売店が立て替えた金額を支払わなくてはなりません。ここでメーカーが小売店に対して支払う額は、キャッシュバック相当額を補填しているにすぎないため、役務提供にはなりません。そのため、この取引については税金が課されることはありません

メーカーとクリアリングハウスの取引

クリアリングハウスはお金の管理だけではなく、クーポンの回収実績の報告やその精算事務まで行っています。そのため、メーカーはクリアリングハウスに対して業務の対価を支払っています。このお金の流れは役務提供に対する対価にあたるため、課税の対象となります

小売店とクリアリングハウスの取引

クリアリングハウスから小売店に対して手数料が支払われます。これはクリアリングハウスに対するクーポン回収の役務提供の対価であるため、課税の対象となります

クーポンを社員に配布した場合の課税関係

クーポンを消費者に対して配る場合の課税関係は以上で述べてきた通りですが、クーポンを社員に配布する場合の課税関係はどのようになるのでしょうか?

大入り袋との違いは?

大入り袋とは、売上目標達成の際などに社員に対して臨時的に支給される現金のことです。大入り袋の性質は労務対価性や固定制、定期性などの観点から、社会保険料算定基礎に算入するのは一般的ではありませんが、ほとんどの場合では給料手当として取り扱われます。多くは賞与の形で支払われるので源泉徴収が必要になり、年末調整にて調整が行われます。

 

一方で、クーポンを配布した場合には税務的な扱い方は少し変わってきます。クーポンが一般的に考えられる経済的利益に該当すると判断される場合には大入り袋と同様の措置がとられますが、自社の小売店で使用可能なクーポンなどを配布した場合は「社員価格」や「社員割引」といったものと同様の性質を示すため、一定の範囲内に限っては福利厚生の費用として非課税になります。

賃金支払いの5原則との兼ね合い

賃金の支払いには5原則というものが定められています。クーポンを社員に配布することは、時にこの原則を破ってしまいかねないので注意が必要です。賃金支払いの5原則は、以下のようになっています。

1. 通貨払いの原則

多くの場合、通貨以外の小切手や現物給与は認められません。

2. 直接払いの原則

賃金を本人以外の代理人に支払うことは原則として禁止されています。

3. 全額払いの原則

賃金はその全額を労働者に対して支払わなくてはなりません。

4. 毎月1回以上の原則

賃金は最低でも毎月1回以上支払わなくてはなりません。

5. 一定期日払いの原則

賃金は必ず定められた日に支払わないといけません。

クーポンを社員に支給する場合は、1の通貨払いの原則に注意する必要があります。上記のように福利厚生の範囲内でクーポンを配布する場合は問題ありませんが、賃金や賞与の一部として扱われる場合にはこの原則を破ってしまうことになります。

☆ヒント
クーポンを消費者向けに発行した場合、社員向けに発行した場合、それぞれの税務処理は変わってきます。ケースバイケースの処理をどうしたらいいのか、このような疑問はビスカスの税理士紹介サービスによって解消することが可能です。ビスカスはあらゆる場面に精通した経験豊富な税理士を多数紹介しています。是非この機会に利用してみてはいかがでしょうか。

まとめ

クーポンは消費者目線では有難いものですが、事業者目線では面倒な税務処理を伴うというやっかいな面もあります。様々なケースを想定して、税務上の扱いを確認しておきましょう。

株式会社プロジェクトカンパニー 松本孝輝
東京大学卒。在学中は経済工学や産業組織論を中心に専攻。
現在はコンサルティング会社に勤務し、ITを用いた集客やブランディングなど専門にコンサルティング業務を行う。
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