会計ソフトを使うなら クラウド型とインストール型のどちらがいい? | MONEYIZM
 

会計ソフトを使うなら
クラウド型とインストール型のどちらがいい?

日々の取引の記帳や、毎月の財務状況・収益状況などの確認、確定申告などに必要な会計ソフト。今はインストールの必要がないクラウド型を使っている人も多くなっています。では、クラウド型とインストール型にどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、その違いを確認しながら、どちらが良いのかを考察していきます。

クラウド型会計ソフトとインストール型会計ソフトの違い

クラウド型会計ソフトとインストール型会計ソフトの普及率

クラウド型とインストール型の違いを見る前に、今どれだけの人・企業が会計ソフトを使っているのか、その普及率を見ていきましょう。

 

主にIT産業のマーケティング・リサーチ業務などを展開している、株式会社MM総研(本社:東京都港区 中島洋所長)が行った「クラウド型会計ソフト」に関する調査では、個人事業主、中小企業等それぞれで会計ソフトの普及率が発表されています(個人事業主は2017年12月末、中小企業等は2017年8月現在の数字)。

 

・個人事業主

個人事業主のなかで、会計ソフトを利用している割合は28.4%でした。そのうち、クラウド型会計ソフトを使っている割合は13.5%、インストール型会計ソフトを使っている割合は75.5%でした。

・中小企業等

従業員300人以下の中小企業等のなかで、会計ソフトを利用している割合は54.1%でした。そのうち、クラウド型会計ソフトを使っている割合は14.5%、インストール型会計ソフトを使っている割合は85.5%でした。

このことから、インストール型会計ソフトのシェアが大半を占めていることがわかります。しかし、個人事業主では、2016年12月末時点の調査よりクラウド型会計ソフトを使っている割合が3.8%増加しているなど、今後クラウド型会計ソフトの普及率はさらに増加すると考えられます。

そもそもクラウド会計ソフトとは

会計ソフトのシェアを確認すると、13~15%程度の事業者がクラウド型会計ソフトを使っていることがわかりました。では、そもそもクラウド型会計ソフトとはどのようなものでしょうか。

クラウドとは、簡単に言うと、データを自分のパソコンなどの端末ではなく、インターネット上(遠隔地のサーバー等)に保存するサービスや使い方のことです。freee株式会社や株式会社マネーフォワード、弥生株式会社などさまざまな会社がクラウド型会計ソフトを提供していますが、どのクラウド型会計ソフトも、インターネット上で会計処理を行います。インストール型会計ソフトは、パソコン等の端末にインストールされたソフト上で会計処理を行うので、ここに大きな違いがあります。

 

クラウド型会計ソフトとインストール型会計ソフトの主な違いは次のとおりです。

クラウド型会計ソフト インストール型会計ソフト
インストール 不要 必要
OS Windows・Mac両方に対応 ソフトにより対応OSが異なる
デバイス パソコン、スマホ、タブレット端末などから利用可能 パソコンのみ利用可能
支払い 月額制 or 年額制 パッケージ購入 ・ダウンロード購入
バージョンアップ 無料 有料
法令改正への対応 自動 対応版のインストールが必要
インターフェース
(構成・操作感
など)
主にマウス入力 主にキーボード入力
グラフレポート あり ない場合も多い
確定申告への対応 可(機能制限あり)
法人税申告書 作成できない 作成できないものが多い
その他の機能 少なめ 多め

クラウド会計ソフトのメリットとデメリット

クラウド型とインストール型のどちらの会計ソフトを使うかを考えるために、それぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。まずは、クラウド型から見ていきます。

クラウド会計ソフトのメリット

①インターネットがあれば、さまざまな端末で使用可能

クラウド型会計ソフトはソフトをインストールする必要がないので、デバイスも場所も選ばず使える利便性があります。会社のパソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットを使って出張先や自宅で作業ができるということになります。会計ソフト会社では各社ともにスマ―トフォン用のアプリなども開発しているので、今後さらに利便性が向上していくでしょう。

②法令改正等の対応が簡単

毎年のように行われる法令改正。会計ソフトでも、消費税率が変更したり、減価償却の方法が改正されたりと、法令改正に伴うバージョンアップをしていく必要があります。クラウド型会計ソフトは、会計ソフト会社が自動で法令改正に対応したバージョンアップをしていくため、処理を間違えることがありません。インストール型の場合は、自分で対応版などをインストールする必要があるため、インストールを忘れると古い法令のまま、処理が進み間違いが起こる可能性があります。

③自動仕訳や新しいサービスとの連携

クラウド型会計ソフトが開発された当時は、金融機関の取引明細の取り込みや、自動仕訳機能、POSレジや請求書システムなどとの連携ができることが大きなメリットの1つでした。

現在もその機能は向上しています。ただし、クラウド型会計ソフトを提供している会社が提供するインストール型会計ソフトでは、同じ機能を備えつつあるので、今後、クラウド型会計ソフトのみのメリットとは言えなくなるでしょう。

クラウド会計ソフトのデメリット

①トラブルでインターネットが使えないと、ソフトも使えない

クラウド型会計ソフトは、インターネット上で会計処理を行います。そのため、インターネットが使えないトラブルが起ったときは会計ソフトも使えません。また、基本的に利用が少ない時間帯に行ないますが、定期的にメンテナンスが行われるので、その間は使えません。

②インストール型に比べて複雑な処理ができない

クラウド型会計ソフトは、どちらかというと簡単に、サクサク処理が進むことを考えて開発されていることが多いようです。そのため、事業者特有の処理や、少し複雑で特殊な処理などができない・その機能がないことなどのデメリットがあります。

インストール型会計ソフトのメリットとデメリット

続いて、インストール型会計ソフトのメリットとデメリットを見てみましょう。

インストール型会計ソフトのメリット

①オフラインで使える

インストール型会計ソフトは、パソコンにソフトをインストールして使います。インターネットにつなぐ必要がないため、オフラインで使うことが可能です。ウイルス感染やハッキングなどのリスクを懸念する人には安心感があります。

②クラウド型会計ソフトに比べて多機能であることが多い

インストール型会計ソフトは歴史が長く、過去のさまざまな要望を取り入れて開発されているので、クラウド型会計ソフトに比べて多機能であることが多くなっています。また、自分でカスタマイズできる機能も多いので、工夫をすることで、その事業者特有の処理や、少し複雑で特殊な処理などが可能になります。

インストール型会計ソフトのデメリット

①パソコンが苦手な人には難しいことも

インストール型会計ソフトは、パソコンにソフトをインストールしなければなりません。インストールの操作や、エラーがでたときの対処など、パソコンが苦手な人にはハードルが高く感じることがあります。

②法令改正の都度アップデートが必要

インストール型会計ソフトは、法令改正があっても自動で対応することができません。その都度自分でアップデートをする必要があります。サポートセンター等から通知が届きますが、見逃すと法令改正前の誤った処理や書類の作成をしてしまう可能性があります。

クラウド型とインストール型、どちらを使う?

クラウド型とインストール型にはそれぞれメリットやデメリットがあります。そのためどちらがいいかは一概に言えません。では、クラウド型とインストール型に適するのがどのような事業者なのかを見ていきましょう。

①クラウド型会計ソフトを導入したほうが良い事業者

・簿記や会計の知識に不安がある

・クラウドに抵抗がない

・仕事等で外出が多く、いろいろな端末から経理状況を確認したい

 

②インストール型会計ソフトを導入したほうが良い事業者

・簿記や会計の知識がある

・自社独自の会計処理を行いたい

・クラウドに抵抗がある

まとめ

一般的に、簡単に処理ができるのがクラウド型会計ソフト、複雑な処理までできるのがインストール型会計ソフトといわれています。しかし、それ以外にも、クラウド型会計ソフトにも、インストール型会計ソフトにも、それぞれメリットやデメリットがあります。大切なのは、自分に合った会計ソフトを選ぶことです。どの会計ソフトも体験版などが充実しているので、まずは実際に触ってみて、自分にとって使い勝手のよい会計ソフトを選びましょう。

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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