不動産所得のつもりが事業所得や
雑所得となることも! 不動産所得徹底解説
不動産所得のつもりが事業所得や  雑所得となることも! 不動産所得徹底解説

2018/2/23

 
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使用していない空き家を知人に貸して、家賃収入がありました。これは不動産所得です。また、単身者で不便だろうと賄い付きにしました。この場合は不動産所得ではなく事業所得または雑所得です。なぜこのようになるのか、不動産所得について解説します。

不動産所得の意義と不動産所得計算の対象となる資産

1) 個人事業主における不動産所得とは

不動産所得とは、所得税法における課税所得10区分の一つで、不動産、不動産の上に存する権利、船舶及び航空機の貸付けによる所得をいいます。

 

※広告等のため、土地、家屋の屋上または側面、塀等を使用させる場合の所得も、不動産所得です。貸しケースも不動産所得となります。

 2) 個人事業主における不動産所得を構成する不動産

不動産所得は、不動産及び不動産の上に存する権利を対象とする所得です。本来は動産ですが、 不動産と同様に登記・登録制度により私法上の権利関係を公示している船舶と航空機も、貸付取引が一般的であることから、所得税法では不動産として扱っています。

①不動産とは土地及びその定着物

土地とは、一定範囲の地面に、その空中と地中とを含めたもののことをいいます。

土地の定着物とは、建物、立木、地盤に据え付けられた機械等です。

②不動産の上に存する権利

土地の上には様々な権利が存在します。土地そのものではありませんが、財産評価においては土地を所有しているのと同等の価値があるものとして評価しなければならないものが、「土地」の 上に存する権利です。

・地上権   工作物または竹木を所有するために他人の土地を使用する権利です。

・借地権   建物を所有するために他人の土地を使用する権利です。

・永小作権 小作料を払って他人の土地を耕作または牧畜のために使用する権利です。

③所得税法上の船舶とは、船舶法の規定に基づき船舶登記を完了している船舶です。

船舶法によれば、「船舶とは浮揚性を有し、自力航行能力の有するもの」ですから、船舶は不動産ではありません。しかし、船舶法は「総トン数が20トン以上の船舶の所有者は、原則としてその住所に船籍港(船舶の国籍)を定め、船舶登記をしなければならない」と規定しています。動産ですが、登記を義務付けられ所有権や抵当権を法的に第三者に主張できることから、所得税法では不動産の場合と同様に船舶の貸付(傭船契約)による所得も不動産所得とみなしました。

 

この背景には、動産である船舶が超高額となり、海運会社が自ら何隻もの船舶を購入する資金力が無いことから、船舶所有者から傭船契約等により賃借している現実があります。  船舶法は総トン数20トン未満の船舶および小舟やボートその他、櫓櫂のみをもって操縦する船に登記義務はないとしていますので、所得税法上の船舶ではありません。そのため、これらの船舶の貸付による所得(貸しボート業等)は不動産所得ではなく、事業所得もしくは雑所得ということになります。

 

④所得税法上の航空機とは、航空法の規定に基づき登録が済んだ航空機です。

航空機とは、航空法によれば、「人が乗って航空の用に供することができる飛行機、回機、滑空機及び飛行船そのほか政令で定める航空の用に供することができる機器」のことです。

航空機は明らかに不動産ではありませんが、航空機もまた航空機登録原簿に登録することを義務づけられています。

 

登録された航空機は、所有権や抵当権が付与されます。これは、土地などの不動産に付与される所有権等とほぼ同様の権利ですから、所得税法は航空機の貸付による所得を不動産所得とみなしました。航空会社は何機もの超高額な航空機を自ら購入する資金能力は無いことから、航空機所有者からリース契約により賃借している現実があります。また船舶同様に、航空法上航空機に該当しないものは登録の義務はありませんから所得税法上は動産の扱いになり、これらの貸付による所得は事業所得もしくは雑所得ということになります。

3)権利移転と登記・登録制度

動産の権利移転は、取引契約締結の時に所有権が売主から買主に移転し、引渡しによって、占 有権だけが売主から買主に移転します。通常の対面現金取引では所有権と占有権が同時に移転します。しかも、買い主が動産を占有していることを示すことで取引相手以外の第三者に所有者であると権利移転を主張できます。

 

※占有権とは、自己のため にする意思をもって物を所持することによって成立する権利。

 

しかし、不動産の権利移転の場合には、取引契約の締結により所有権は 移転しますが、不動産は動産と異なり、物理的に動産のように占有することで取引相手以外の第三者に権利を主張することがきません。そこで、不動産登記制度が採用されました。不動産登記制度は国民の重要な財 産である不動産の状況と権利関係を登記簿によって正確に公示して、不動産取引の安全を図ることを目的としています。

 

この登記簿に不動産に係る情報を登記して公示することで取引相手以外の第三者に権利関係について主張できることになりました。さらに、船舶、航空機などの登記・登録制度が定められているものについては、登記・登録が所有権移転の要件となっています。

不動産所得は、「総収入金額-必要経費」で計算されます

1)総収入金額を構成する項目と金額算定時期

①総収入金額

・貸付けによる賃貸料収入。

・名義書換料、承諾料、更新料または頭金などの名目で受領するもの。

・敷金や保証金などのうち、返還を要しないもの。

・共益費などの名目で受け取る電気代、水道代や掃除代等。

 

②各項目の金額算定時期

・ 契約や慣習などにより支払日が定められている場合は、その定められた支払日。

・支払日が定められていない場合は、実際に支払を受けた日、ただし、請求があったときに支

払うべきものと定められているものは、その請求の日。

・賃貸借契約に存在する係争等(未払賃貸料の請求に関する係争を除きます。)に係る判決・和解等により不動産の所有者等が受け取ることになった係争期間中の賃貸料相当額については、その判決・和解等のあった日。

2)必要経費を構成する項目と金額算定時期

不動産所得を計算する際に経費と認められるのは、不動産収入を得るために掛かった直接的な費用です。具体的には次のようなものがあります。

・租税公課

・外注管理費、手数料

・水道光熱費

・立ち退き料

・修繕費

・借入金利子

・減価償却費

 

※建物や機械装置などの固定資産は、年数が経過することでその価値が減少します。その減少額を減価償却費として一定の計算方法で毎年経費化していきます。建物は減価償却資産ですが、土地は時間の経過によって価値が減少しませんので、減価償却の対象ではありません。

3)確定申告を青色申告で行う場合の手続きとメリット

(1)青色申告と言う呼び方は申告書の表紙の色に由来します。

戦前の賦課課税方式から、納税者が自ら所得を計算して納税するという申告納税方式に転換した際に、「複式簿記に基づき取引を記録して正確な所得を計算します」と届出た納税者に対して、ステータス・シンボルとして表紙が青の申告書を交付したことが発端です。

 

正確な複式簿記による所得計算を要求するとともに、これを奨励するために納税者に種々の特典を与えました。なお、所得税法の所得10区分の内、不動産所得、事業所得及び山林所得についてだけ青色申告を認めました。

(2)青色申告制度採用の手続き
①青色申告書承認申請書の提出

・白色申告の納税者が青色申告の申請をしたい場合は、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

・新規開業した場合には、業務を開始した日から2ヶ月以内に「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

 

いずれの場合にも、税務署から許可しますという通知等はありません、申請書には控えを添えて提出し届出受領印をもらえばOKです。

 

②所得を正確に計算する複式簿記会計帳簿を整備

「収入や支出の事実が確定した時点」の日付で計上する現金主義ではなく、発生主義に基づく、複式簿記の帳簿を作成しなければなりません。即ち、1年間の収益と費用を現金の収支を基準に帳簿に記入するのではなく、収益として実現しているか、費用として発生しているかを判定して、実現している収益と発生している費用とを帳簿に記入し、1年間の損益計算書と期末の貸借対照表を作成します。

(3)青色申告制度を採用するメリット
①青色申告控除として最高65万円が認められます。

不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいる青色申告者で、これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則により記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付し、法定申告期限内に提出している場合は、原則としてこれらの所得を通じて最高65万円が控除されます。それ以外の青色申告者については、不動産所得、事業所得、山林所得を通じて最高10万円を控除することができます。

②配偶者や親族を専従者として支払った給与を経費にできる

青色申告者と生計を一にしている配偶者やその親族のうち年齢が15歳以上で、その青色申告者 の事業に専ら従事している人(青色専従者といいます)に支払った給与は、事前に提出された届 出書に記載された金額の範囲内で、かつ専従者の労務の対価として適正であれば、必要経費に 算入することができます。なお、青色専従者として給与の支払いを受ける人は、控除対象配偶者や控除対象扶養親族にはなれません。

③純損失の繰越と繰戻し処理ができます

事業所得が赤字の場合、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰越し、各年分の所得金額から控除できます。前年も青色申告の場合で、純損失の繰越しの代わりに、その損失額を生じた年の前年に繰戻して、前年分の所得税の納付額から本年度の純損失額の還付を受けることもできます。

不動産所得と事業所得及び雑所得の判別

1)不動産所得と事業所得の判別

不動産などの貸付けによる所得は、不動産所得になります。不動産所得は、その不動産貸付けが事業として行われているかどうかで、 所得区分が異なります。不動産の貸付けが事業として行われているかどうかについては、原則として社会通念上事業といえる程度の規模で行われているかにより判断します。要は事業的規模かどうかということです。

 ①判例による実質的な判断基準(国税局)

・営利性・有償性の有無

・継続性・反復性の有無

・自己の危険と計算における企業遂行性の有無

・その取引に費やした精神的肉体的労力の程度

・人的・物的設備の有無、その取引の目的

・その者の職歴・社会的地位・生活状況

・その事業が生活の糧となるものか

・一般的に職業として認知できるか

などの点を総合して社会通念上事業といい得るか否かで判断するとされています。

 

②一般的な判断基準(形式基準)は以下のとおりです。

・建物の貸付けの場合の事業規模

貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること。独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

・月極駐車場の場合

駐車可能台数50台以上であること。

2)不動産所得と雑所得の判別

雑所得とは、給与所得や事業所得、不動産所得など9種類の所得に、当てはまらないものをいいます。たとえば、サラリーマンが副業で、原稿料や講演料を受け取った場合は雑所得です。 不動産所得か雑所得かどうかの判別には決まった形式基準はありませんが、

・相当期間継続している

・安定収入が得られる可能性が高く設備などを整えている

・日々継続してそれなりの時間と労力を割いて行っている

以上の要件をクリアできないものは雑所得として処理しなければなりません。

 

※不動産所得の計算は青色申告制度を採用することができます。そしてその特典として青色申告特別控除額65万円が認められます。65万円の控除で不動産所得がマイナスとなるような極めて小規模な不動産賃貸業は、非課税となってしまうことは課税の公平から、認められないので、青色申告を採用できない雑所得としています。

まとめ

法人税の場合には、不動産所得という概念はなく、すべて法人事業所得の範疇で処理すれば済みます。例えば、総収入金額は益金で、必要経費は損金だけです。

しかし、所得税法では所得を10区分しています。まず所得区分を見極めなければなりません。因みに此処では、事業所得と不動産所得、不動産所得と雑所得を明確に区分する必要があります。その実質が不動産の貸付による所得であっても、その事業規模により、総合課税を前提とする損益通算の面から、また、青色申告制度を採用した場合の青色申告控除額の面から、租税負担が不公平にならないように規制をかけています。

 

また、動産なのに船舶や航空機は、取引界で実際に賃貸やリースが行われています。さらに資産価額が巨額で、しかも物理的には巨大で常に移動手段として利用されています。

 

動産は所有権移転契約で所有権が移転します。また、その動産を買い取った人が占有することで、取引相手以外の第三者に所有権を主張することができます。しかし、船舶・航空機は占有の有無を判断できません。そのため、第三者に対して所有権を主張することはできないということになります。そこで登記・登録制度が採用されています。船舶及び航空機は、所得税法上は不動産とみなされます。

 

不動産所得や事業所得をしっかり見極めて、確定申告に対応していきましょう。

税理士 久慈伸樹
税理士 専門学校専任講師、短大専任講師、四大時間講師を歴任。退職後税理士法人を主宰、解散後自宅を事務所として税理士業を営む。相続税申告が得意。
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