法人が不動産を売却したときの処理方法や、
税金について徹底解説
法人が不動産を売却したときの処理方法や、  税金について徹底解説

2018/1/11

 
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所有している不動産を売却すると、まとまったお金が会社に入ります。税金がどれくらいかかるのか心配する人もいるでしょう。不動産の売却処理や税金のことを考える場合は、入ってくるお金ももちろんですが、経費がいくらになるかも重要になります。ここでは、法人が不動産を売却したときの処理方法等を解説します。

まずは法人の収益と費用の考え方を知ろう

個人と法人では収益の考え方が違う

不動産を売却したときの処理を見る前に、まずは、法人の収益と費用の考え方を見ていきましょう。実は個人と法人では収益の考え方が違います。

 

個人の場合は、1年間に得た収入をどのように得たのかにより、10の所得に分けて計算します。例えば、事業から得た収入は事業所得、自己使用の不動産などの資産を売却して得た収入は譲渡所得となります。経費もそれぞれの所得に対応するように分ける必要があります。事業の収入を得るための商品の仕入れであれば事業所得の経費、自己使用の不動産を販売するための経費であれば譲渡所得の経費になります。所得金額の計算や税金の計算も所得の種類によって異なります。

 

対して、法人は種類にかかわらず、すべての収入と経費を合算し、その合算した収入から経費を差し引いて利益を求め、税金の計算を行います。一般的な法人の法人税の税率は以下のとおりです。

 

普通法人税率表

資本金 課税所得 平28.4.1以後

開始事業年度

平30.4.1以後

開始事業年度

資本金1億円以下 年800万円以下 15% 15%
年800万円超 23.4% 23.2%
資本金1億円超 23.4% 23.2%

法人が不動産を売却した日はいつと考える?

法人は、事業で得た収入も不動産を売却した収入も一つにして税金を計算します。不動産を売却する場合の一般的な手順は以下のとおりです。

 

①契約書を作成する

②頭金や中間金などが支払われる

③最終金が支払われると同時に不動産を引き渡し

 

では、「不動産が売却された日」とはどの時点のことを言うのでしょうか。法人税では、不動産の譲渡(売却)日を以下のように定めています。

 

不動産の譲渡(売却)日

原則 不動産を引き渡した日
特例 不動産の売却の契約を締結した日

 

つまり、不動産を売却する手順の「①契約書を作成する」または、「③最終金が支払われると同時に不動産を引き渡し」のどちらかで売却した処理を行えばよいことになっています。「①契約書を作成する」と「③最終金が支払われると同時に不動産を引き渡し」が違う事業年度になる場合は、どちらで売却の処理をするかでその年の利益や税金が変わってくるので注意しましょう。

法人の不動産売却の処理方法と利益の求め方

法人が不動産売却したときの経費とは

不動産の譲渡日をいつにするかが決まったら、いよいよ不動産売却の経理処理をしていきます。そのためには、不動産を売却したときの経費を求める必要があります。不動産を売却したときの経費には、印紙代や仲介手数料などいろいろありますが、いちばん大きいのが、売却した不動産の「経費としての価値」です。不動産の売却金額から、経費としての不動産の価値を引いた金額が、不動産売却による利益になります。

 

では、経費としての不動産の価値はどのように求めるのでしょうか。それは、売却した時点の帳簿価額となります。売却した時点の帳簿価額は、土地と建物では表している内容が異なります。土地は、造成などがない限りは取得価額がそのまま帳簿価額になります。対して建物は、時の経過とともに価値が減少していくため、毎年減価償却をしています。そのため、建物の帳簿価額は取得価額から売却日までの減価償却累計額を差し引いた金額になります。まとめると以下のとおりです。

 

不動産の売却時の価値

帳簿価額
土地 売却日の帳簿価額(通常は取得価額のまま)
建物 取得価額-売却日までの減価償却累計額

法人が不動産売却したときの仕訳はどうなる?

法人が不動産売却したときの仕訳を見ていきましょう。

 

例)所有する不動産を3,000万円で売却した。契約時に1,000万円を普通預金に振込で受取った。その後、2,000万円の最終金を普通預金に振込で受取ったのと同時に、不動産を購入者に引き渡した。土地の帳簿価額2,000万円、建物の期首帳簿価額800万円、期首から売却日までの減価償却費50万円だった。当社は引き渡し日を不動産の譲渡日としている。

 

①契約時の仕訳
借方勘定科目 借方科目 貸方勘定科目 貸方金額 備考
普通預金 1,000万円 前受金 1,000万円 頭金受取

引き渡し日を不動産の譲渡日としているため、この時点では収益は確定しません。

受け取った頭金は「前受金」などの勘定科目で処理します。

 

②売却時の処理
・減価償却費の仕訳
借方勘定科目 借方科目 貸方勘定科目 貸方金額 備考
減価償却費 50万円 建物 50万円 売却日までの償却額

建物は、売却した年も期首日から売却日までの減価償却を行います。減価償却した後の建物の帳簿価額は、800万円-50万円=750万円です。

 

・売却時の仕訳
借方勘定科目 借方科目 貸方勘定科目 貸方金額 備考
前受金 1,000万円 土地 2,000万円
普通預金 2,000万円 建物  750万円
固定資産売却益  250万円

売却時の仕訳では、頭金(前受金)1,000万円を精算します。不動産売却による利益は、「固定資産売却益」などの科目で処理します。

 

※不動産販売を本業としている法人は、通常の商品販売と同じように、不動産購入時は「仕入高」、売却時は「売上高」などの科目で処理します。

法人の不動産売却時の処理の注意点

法人の不動産売却時は、消費税の処理に注意する

不動産を売却した法人が消費税の課税事業者である場合は、消費税の処理に注意する必要があります。土地と建物では、消費税の取り扱いが違います。土地の購入や売却には消費税はかかりません。一方、建物の購入や売却には消費税がかかります。そのため、不動産の売却価額のうち、いくらが土地の代金で、いくらが建物の代金なのかわからないと、決算の時に消費税の計算ができなくなります。売却金額の内訳は把握するようにしましょう。

 

不動産の売却時、消費税は建物の売却価額にのみかかるため、通常は土地と建物の売却価額を分けて仕訳することになりますが、会計ソフトを使っている場合はソフトごとに入力方法が異なります。消費税の課税事業者が不動産を売却した際、入力の仕方が不明な場合は、必ず各ソフトメーカーに問い合わせしましょう。

役員等に売却した場合は、低額譲渡に注意する

法人が第三者に不動産を売却する場合は、不動産仲介会社などが間に入るので、基本は適正な金額(時価)で売却が行われます。

ただし、役員等に売却した場合は適正な金額(時価)より低い金額になることがあります。
このように、時価よりも低い金額で売却することを「低額譲渡」といいます。低額譲渡の場合は、法人、役員ともに税金がかかるので注意が必要です。法人、役員それぞれの税金について見ていきましょう。

①法人

適正な価格と売却金額との差額は役員給与となります。例えば、時価3,000万円の不動産を2,000万円で役員に売却した場合、差額の1,000万円は役員の給与です。仕訳をすると、以下のようになります。

借方勘定科目 借方科目 貸方勘定科目 貸方金額 備考
役員報酬 1,000万円 雑収入 1,000万円 頭金受取

この仕訳だけみると、経費と収益が同じなので税金には影響しないように見えます。
しかし、役員報酬の中でも経費になるものは税法で決められており、今回のケースのように特別な場合は、税金の計算時に経費から除かれてしまいます。そのため、法人にとって適正な価格と売却金額との差額は、そのまま利益になり税金が高くなります。

②役員

役員報酬の中で経費になるものは税法で決められているという話をしましたが、それは法人税法上の話です。所得税では役員報酬に違いはありません。そのため、差額の1,000万円に対して所得税がかかります。

まとめ

法人が所有している不動産を売却して、利益や税金を計算するためには、売却日をいつにするか、経費としての土地や建物の価値はいくらかなどを把握する必要があります。また、消費税の課税事業者の場合は、消費税のことも気にする必要があります。所有している不動産を売却したときは、これらのことに気を付けて正しい処理を行いましょう。

 

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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