法人の税金に対する不安解消には、
税理士との顧問契約を結ぶことが最適

法人の税金に対する不安解消には、  税理士との顧問契約を結ぶことが最適
公開日:
2018/12/10
最終更新日:
2021/04/21
 
  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • LINEでシェア

「税務調査で間違いを指摘されたらどうしよう・・・」「法人化しても今までどおりで確定申告ができるか、ちょっと不安」「税理士に頼みたいが、本当に大丈夫?」など、悩んでいる法人や法人成りを検討している個人事業主がいてもおかしくありません。そこで、税理士と顧問契約を結ぶメリットについて解説します。

法人の決算業務が難しい本当の理由

決算業務のゴールは、決算書のデータをもとに法人税などの確定申告を行うことです。
会計ソフトはデータを入力すれば、自動的に決算書を作成できますが、確定申告書の作成には対応していません。しかし、個人事業主とは異なり、法人は確定申告書の作成が難しくなります。まずは所得金額に対する法人税などの確定申告にフォーカスしましょう。

決算業務には2つの目的がある

個人事業主が決算書を作成するのは、所得金額(=税金)を計算するためです。
一方、法人は異なります。決算書を作成する目的は手元に残るお金の計算です。
たとえば、損益計算書の当期純利益は法人税など所得金額に対する税金を差し引いています。しかし、その税金は経費に落とせません。そこで、確定申告で所得金額を計算する段階で、損益計算書の当期純利益に所得金額に対する税金などをプラスします。

要するに、法人の決算業務は決算書の作成で手元に残るお金を計算し、確定申告書の作成で所得金額の計算をするといった2段構えなのです。

決算書までは作成できるが、確定申告は難しい

会計ソフトにデータを入力すれば、決算書は自動的に作成できます。それによって、手元に残るお金(=当期純利益)は計算できます。しかし、当期純利益は、お金の減る費用で経費に落とせない項目まで差し引かれているため、所得金額とは異なります。

確定申告で所得金額を計算するときは、「お金の減る費用で経費に落とせない項目」をプラスして、反対に収入金額でも「法人税などの非課税項目」および「累積赤字」を差し引きます。この計算方法を「所得金額は当期純利益から確定申告で調整して計算する」という意味を略して「申告調整」といいます。それでは、おもな申告調整の項目を紹介します。

(1)プラス項目(お金の減る費用で経費に落とせない項目)

  • 所得金額に対する税金
  • 交際費(中小企業の場合は年800万円を超える部分の金額) など

(2)マイナス項目(非課税項目および累積赤字)

  • 保有する株式に対する配当金
  • 前年度以前の累積赤字 など

以上の項目はほんの1例に過ぎず、本当はたくさんあります。たとえば、預金利子に課税される所得税などを控除する場合には、確定申告でその金額を所得金額にプラスします。また、経費に落とせるはずの未払い給与を経理処理で当期純利益から差し引かなかった場合は、申告調整で所得金額からマイナスできます。
このように、決算書までは作成できても、確定申告書を作成するのは至難の業といえます。

経理の役割は決算書の作成だけでない

実は普段の経理業務が所得金額に対する税金の計算に影響を及ぼしています。具体例を2つ挙げます。

(1)経理処理

経理処理することを条件で経費に落とせる項目があります。

たとえば、契約期間3年の賃貸物件に対する礼金を60万円支払ったと仮定します。礼金は税法上、繰延資産に該当しますが、償却期間に応じて複数年にわたって、償却費として経費に落とせます。この場合の償却期間は契約期間の3年であり、「60万円÷3年=20万円」が償却費です。

ところが、償却費20万円の経理処理を失念すると、「申告調整」で経費に落とせません。経理処理が経費に落とすための条件だからです。

このように経理処理は、所得金額に対する税金の計算に影響を及ぼします。

(2)書類の保存

税法上、領収書・請求書・納品書などの保存が義務付けられています。万が一、災害など正当な理由がなく、これらの書類を紛失すると青色申告の取り消し処分を受けるリスクがあります。

たとえば、青色申告の取り消し処分を受けた年度に100万円の赤字を計上したと仮定します。青色申告の場合、この赤字分は翌年度以降の所得金額と相殺できますが、取り消し処分を受けると100万円が切り捨てられてしまいます。つまり、翌年度以降に100万円を所得金額から差し引けず、「100万円×法人税率30%=約30万円」の節税効果が得られません。

消費税の存在が法人の経理・決算業務をさらに複雑にしている

一定規模の法人・個人事業主は、取引先から預かった消費税を税務署へ納付しなければなりません。具体的には次の算式で計算します。

消費税の納税額=得意先や顧客から預かった消費税-仕入先など取引先へ支払った消費税

問題は支払った消費税の計算方法であり、法人の経理・決算業務をさらに複雑にしている原因です。この支払った消費税のことを仕入税額控除といいます。それでは、複雑な原因について解説します。

経理処理ミスが消費税の計算ミスを誘発する

仕入税額控除の計算は経理処理に委ねられています。本題に入る前に2つの計算方法を紹介します。具体的には次のとおりです。

  • 原則課税制度:実際に支払った仕入税額控除の実額を厳密に計算する方法
  • 簡易課税制度:得意先や顧客から預かった消費税をベースに仕入税額控除の概算額を計算する方法

それぞれの計算方法ごとに、経理処理のミスが消費税の計算ミスを誘発する原因を検証しましょう。

※簡易課税制度は前々年度の課税売上高が年換算額5,000万円以下の法人が受けられる制度です。

(1)原則課税制度

実際に支払った消費税を帳簿上で集計して計算します。たとえば、108円(本体価格100円・消費税8円)のボールペンを購入した場合、データを会計ソフトへ入力することで、仕入税額控除が8円プラスされます。
そのとき、経理処理でボールペンは非課税と処理した場合、仕入税額控除に集計されるはずの8円が加味されず、同額(8円)余分に納付することになってしまいます。
反対に非課税の収入印紙代を経理処理のミスで仕入税額控除に集計した場合、消費税の納税額が少なくなり、税務調査で間違いが指摘されます。
このように、取引先への支払いに消費税が付随するかどうかの判断ミスが経理処理のミス、そして消費税の計算ミスにつながるのです。

(2)簡易課税制度

得意先や顧客から預かった消費税をベースに仕入税額控除の概算額を計算しますが、業種別の原価・経費率によって金額が異なります。この原価・経費率のことをみなし仕入率といいます。具体的な率は次のとおりです。

業種 みなし仕入率
卸売業 90%
小売業 80%
製造業や建設業など 70%
飲食店業 60%
サービス業など 50%
不動産業 40%

たとえば、八百屋がカット野菜を年間2,000万円消費者へ販売したと仮定します。これは小売業なのか加工しているので製造業なのか、迷うところです。
結論は前者なので、仕入税額控除は「2,000万円×税率8%×みなし仕入率80%=128万円」です。それを製造業と解釈して経理処理すると、仕入税額控除は「2,000万円×税率8%×みなし仕入率70%=112万円」と16万円の消費税を余分に納付してしまいます。カット野菜の販売のように、業種別のみなし仕入率の判断は間違いやすいので注意が必要です。

消費税の確定申告では厳格な経理処理が要求される

原則課税制度で仕入税額控除を計算するとき、厳格な経理処理が要求されます。たとえば、お歳暮用に6,000円のビールを購入したと仮定します。その内訳がビール代3,000円、ビール券3,000円の場合、経理処理は別々にする必要があります。前者は仕入税額控除の対象ですが、後者は非課税だからです。

要するに、領収書が「ビール代6,000円」とひとまとめになっていても、経理処理では仕入税額控除の対象となる物・ならない物を厳格に区分しなければなりません。

消費税の節税は決算日までが勝負

仕入税額控除が多額になるほど消費税は節税できます。そのため、本則課税方式か簡易課税制度かの選択は迷うかもしれません。たとえば、仕入税額控除が多く計上できるのが前々年度は前者、前年度は後者の場合、どちらを選択すべきか迷うところでしょう。

そのとき、本則課税方式を採用している法人が来年から簡易課税制度を選択する場合には、決算日までに判断・税務署への手続きを済ませなければなりません。正しい判断をするためには、決算日までの会計データが必須です。つまり、日々の経理処理を確定申告の直前まで溜め込まないのがポイントといえます。

決算業務では避けて通れない税制改正

配偶者控除や配偶者特別控除の改正が象徴するように、税法は毎年改正されます。ニュースにはなりませんが、決算業務にも大きく影響します。具体例を2つ挙げます。

経理処理だけで法人税・所得税が節税できる所得拡大促進税制とは?

この優遇税制は法人・個人事業主の状況によって、「適用できるかどうか」や「節税できる金額」などが違ってきます。細かい内容の制度のため、ここでは「制度の概要」「税制改正との関係」「経理処理による影響」に絞って解説します。

(1)概要

雇用契約に基づく(=賃金台帳に記載されている)給料・賞与・通勤手当が基準年度より増加したなど一定の条件を満たす場合には、法人なら法人税、個人事業主なら所得税から控除できるのが所得拡大促進税制です。

実際に控除できる金額は、給与・賞与・通勤手当が基準年度より増加した金額に10%以上の料率を掛けた金額です。基準年度とは平成25年4日1日以降に開始した年度のことを指します。

注意点は適用する・しないは法人・個人事業主の自由です。そのため、確定申告で法人税や所得税から控除するのを忘れても計算ミスではないため、遡って計算しなおすことは認められていません。

(2)税制改正との関係

この制度は平成30年3月31日(平成29年度)まで適用できます。今のところは今年度が法人税・所得税から控除できる最後のチャンスです。

しかし、今年度が控除できる最後のチャンスというは「今のところ」の話です。来年度の税制改正でこの制度の適用期間が延長される可能性は否定できません。税制改正については注視する必要があります。

(3)経理処理による影響

給料・賞与・通勤手当の増加額に対して料率を掛けて計算するため、その金額が大きいほど法人税・所得税の節税効果が得られます。実は、その増加額を経理処理だけで増やせます。

通常、支払ベースで給料・賞与・通勤手当を経理処理する法人・個人事業主は多くいます。しかし、実際に給料が未払いでも支払義務は発生した時点で計上するのが原則です。

たとえば、「給料の締め日は毎月20日」「支払日が25日」の条件ので月給30万円を支給すると仮定します。そのとき、支払ベースで経理処理している場合、21日~月末までの約10日間は締め後の給料として、経理処理で追加計上できます。

具体的な金額は「30万円×10日÷30日=10万円」です。その結果、最低でも「10万円×料率10%=1万円」の節税効果が得られます。

このように、経理処理だけも所得拡大促進税制による節税効果が得られます。

やがて簡易課税制度は見直される

消費税の簡易課税制度を採用するメリットは、原則課税制度よりも節税できる点に尽きます。しかし、軽減税率の導入後に見直される予定です。今のところ、その時期は平成31年10月1日~平成35年9月30日までとなっています。

見直された結果、簡易課税制度が継続するのか・廃止されるのは不明です。また、軽減税率の導入が延長され続けてきた経緯から、見直される時期の期限が平成35年9月30日から先延ばしになる可能性は否定できません。

このように、消費税は軽減税率の導入だけでなく、簡易課税制度の見直しなど税制改正によって根本的に制度の内容が変化する予定となっています。

決算業務はミスが許されない

確定申告での税金の計算ミスは、税務調査で間違いが指摘されます。そのとき、延滞税などの追徴課税というペナルティが課せられてしまいます。税金の計算ミスと税務調査にフォーカスして解説します。

税務調査で指摘されたミスは管内の履歴に残る

税務署は今後の調査に活用するため、税金の計算ミスの履歴を残しています。たとえば、明らかな違法行為で税金をごまかした法人については、ごまかした事実を管内の履歴に残します。

当然、知識不足やケアレスミスなどによる税金の計算ミスをした情報は、次の税務調査を担当する調査官に引き継がれます。税金の計算ミスを犯しやすいポイントが履歴に残るため、法人・個人事業主が決算業務でミスすることによるメリットは何もありません。

いったい税制改正にどう対応するの?

決算業務でミスを犯す原因の一つに、税制改正に対応できない点が挙げられます。過去に消耗品の購入金額が一括で経費に落とせる金額の判断ミスがありました。一括で経費に落とせる金額は「20万円未満→10万円未満→30万円未満(現在)」と何度か税制改正されています。

「20万円未満→10万円未満」になった段階で、そのことを知らずに15万円の消耗品を一括で経費に落とし、税務調査で間違いが指摘されました。

税法の世界で「税制改正されたことを知らなかった」は通用しません。そのため、決算業務をミスなくするためには、常に税制改正の情報を入手しなければなりません。

税理士は税制改正の情報を入手しやすい立場

税理士は税金の専門家です。当然、本業である税制改正の勉強に時間が投入できます。決算業務が本業でない法人との違いです。また、税理士は業界新聞などで最新の税制改正の情報が入手しやすい立場です。たとえば、来年度(4月1日)の税制改正案を事前に把握できます。

このように、税理士は税制改正の勉強に時間を投入でき、情報を入手しやすい立場なのです。

決算業務にミスのないお墨付きを与えられるのは顧問税理士のみ

「書面添付制度」はご存じですか?
法人が確定申告をするときに、「税金の計算に間違いはありません」と税理士が証明する制度です。

メリットは税務調査が省略される可能性がある点です。具体的には、税務署が法人へ税務調査の通知をする前に、顧問税理士に意見聴取して、その内容次第で税務調査が省略されます。

書面添付制度は顧問税理士の特権です。法人が自力で確定申告をする場合には適用できません。

まとめ

今回は「決算業務の難しい理由→消費税の複雑さ→税制改正に対応する必要性→税理士と顧問契約を結ぶメリット・結ばないデメリット」の順で紹介しました。最近は無料相談を受け付けている税理士は多くいます。法人の税金に少しでも不安を感じた場合、まずは税理士に相談することをおすすめします。

この記事の執筆者
税理士紹介センタービスカス編集部
税理士紹介センタービスカスは、 株式会社ビスカスが運営する、日本初の「税理士紹介サービス」サイトです。 税理士をお探しの個人事業主や法人のお客様に対して、ご要望の税理士を無料でご紹介しています。
創業から28年、税理士紹介で培った知識とノウハウから、確定申告・決算・会社設立・融資・節税のご相談や、税理士料金の相場情報など、「初めて税理士に依頼したい」「顧問税理士を変更したい」という経営者・事業主の皆様に役立つ情報をお届けします。

  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • LINEでシェア
税理士無料紹介お問い合わせフリーダイヤル
電話番号
日本全国の税理士を探す
特定業種に詳しい税理士を探す
特定分野に詳しい税理士を探す
会計ソフト対応の税理士を探す