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個人事業主の納める税金5つを一挙に徹底解説!

秋に入り、確定申告の季節も近づいてきました。皆さん、準備は大丈夫ですか? 事業を開始してからまだ日が浅く、今回が初めての確定申告という方もいらっしゃることと思います。ご自身が納めなくてはならない税金の種類は何で、どのように計算し、そしてどこに納めればよいのか、いざ質問されるとなかなかすぐには答えられない方も実は多いのではないでしょうか? 今回はそのような方々に向けて、個人事業主が納めなくてはならない税金の種類やその計算方法について説明します。

個人事業主が納める税の種類と対象条件は?

納めなくてはならない税の種類一覧

個人事業主が納める税金は、所得税・消費税・住民税・個人事業税・償却資産税の5種類になります。

それぞれの税金の納付義務条件

それぞれの税金には納付の義務が生じる条件がありますので、以下、順に解説していきます。

所得税

所得税は「総収入金額−必要経費-各種控除」で計算される課税所得金額がプラスになった場合に課せられます。個人事業主にとって最も大きくなる税金はこの所得税です。所得税も含めた各税の計算方法については後述します。

消費税

消費税については納税義務条件が複雑ですので、しっかりと理解しておく必要があります。まず前提として、課税の審査の対象となるのは課税される年の前々年であり、これを基準期間と言います。例えば平成29年分の消費税を納める場合、その課税額などは平成27年の売上高をもとに決定されるということです。このように基準期間が2年遡る形で設定されているため、事業を開始してから最初の2年間は消費税の課税が免除されます。
納税義務に関しては、以下の3条件のいずれに当てはまる場合に課せられます。
1.基準期間の課税売上高が1,000万円を超える
2.基準期間の課税売上高が1,000万円以下で、かつ「消費税課税事業者選択届出書」を提出している
3.以上の1, 2に該当しない場合で、特定期間(基準期間翌年の1月1日から6月30日までの期間)の課税売上高が1,000万円を超える

住民税

住民税には、すべての納税義務者にかかる均等な金額の均等割と、所得金額に応じてかかる所得割とがあり、通常この2つを合算した額を納めます。
均等割に関しては、「1月1日時点で該当市区町村に住所を持つ人」もしくは「1月1日時点で該当市区町村に家屋や事務所がある人」のうち、「合計所得金額が各市区町村の定める金額以上である人」が納税義務を負います。
対して所得割では、「1月1日時点で該当市区町村に住所がある人」で、「合計所得金額が『(控除対象配偶者+扶養家族+1)×35万円+32万円』を超える人」もしくは配偶者も扶養家族もいない場合に「所得合計金額が35万円を超える人」が義務を負います。

個人事業税

地方税である個人事業税は、法律で定められた70業種に含まれる事業を営む方が対象となります。70種の法定業種は3つの種類に大別され、それぞれ税率が異なります。以下にまとめましたので参考にしてください。
■第1種事業(37業種)税率5%
物品販売業・保険業・金銭貸付業・物品貸付業・不動産貸付業・製造業・電気供給業・土石採取業・電気通信事業・運送業・運送取扱業・船舶ていけい場業・倉庫業・駐車場業・請負業・印刷業・出版業・写真業・席貸業・旅館業・料理店業・飲食店業・周旋業・代理業・仲立業・問屋業・両替業・公衆浴場業(むし風呂等)・演劇興行業・遊技場業・遊覧所業・商品取引業・不動産売買業・広告業・興信所業・案内業・冠婚葬祭業
■第2種事業(3業種)税率4%
畜産業・水産業・薪炭製造業
■第3種事業(28業種)税率5%
医業・歯科医業・薬剤師業・獣医業・弁護士業・司法書士業・行政書士業・公証人業・弁理士業・税理士業・公認会計士業・計理士業・社会保険労務士業・コンサルタント業・設計監督者業・不動産鑑定業・デザイン業・諸芸師匠業・理容業・美容業・クリーニング業・公衆浴場業(銭湯)・歯科衛生士業・歯科技工士業・測量士業・土地家屋調査士業・海事代理士業・印刷製版業
■第3種事業(2業種)税率3%
「あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復」・「その他の医業に類する事業」・「装蹄師業」

償却資産税

償却資産税とは事業に用いる固定資産に課せられる税金のことです。しかしこの償却資産税は全ての固定資産が対象となるわけではなく、土地や家屋、車両は対象外になります。この償却資産に該当する資産を所有している個人事業主は、市区町村に対してその年の1月末までに申告書を提出する必要があります。この申告に基づき市区町村側が税額を計算しますが、その固定資産の課税標準額が150万円未満の場合には課税の対象とはなりません。つまり、所有する固定資産が少ない場合は課税対象外になるということです。ここで気をつけなければいけないのが、課税標準額が150万円以下であっても申告書の提出は必要だということです。間違えないようにしましょう。

国税と地方税

事業主にとって税金を納めるという点で変わりはありませんが、税金には地方税と国税という大きな2つの区分があります。納める税がどちらに属するかによって納付方法も異なりますので、ここではその区別について確認します。

国税はどれか? 納め方は?

上記5種類の税のうち、国税に該当するのは所得税・消費税です。正確に言えば消費税には地方消費税というものもありますが、それは国が一旦徴収した後に地方自治体に交付するという形になっているため、納める側の手間に影響はありません。この2つの税には確定申告が必要となりますが、その期限は異なり、所得税は3月15日、消費税は3月31日までとなっています。加えて、この期限は納付期限と同一となっています。従って納付の際の手続きを考えるならば、確定申告はできるだけ早く済ませておくに越したことはありません。国税納付の方法は、e-Tax、クレジットカード、コンビニ納付、口座振替、税務署窓口での納付など、様々あります。ご自身に一番合った方法を選択しましょう。

地方税はどれか? 納め方は?

地方税に該当するのは住民税・個人事業税・償却資産税です。このうち住民税と個人事業税は、所得税の確定申告をしていれば別途で申告する必要はありませんが、償却資産税に関しては、先に述べた通り1月31日までに市区町村への申告が必須となります。
住民税は、6月頃に市区町村から納税通知書が送付されます。一括払いか分割払い(4回)のどちらかを選び、指定された金融機関、口座振替、またはコンビニ(納税額が30万円以下の場合可能)のいずれかにより納付します。
個人事業税は、8月と11月の2回に分けて納税通知書が送付されますので、その度ごとに納税します。こちらはそれぞれ一括払いしか選択できません。
償却資産税は5月から6月にかけて1回納税通知書が送付されます。これは地方税と同様、一括払いと分割払い(4回)が選択できます。
選択可能な支払い方法は地域によって細かく異なる場合もあるので、納税通知書の記載をよく確認しましょう。
※申告期限・納期限が、土、日、祝日等の場合は、その翌日が期限となります。

税額の計算方法

所得税

所得税の計算方法は、「(総売上−必要経費−所得控除)×税率−税額控除」となります。その税率と税額控除額については以下の速算表を参照してください。

消費税

消費税の計算方法には本則課税と簡易課税の2種類あります。届出をしなければ本則課税によって課税額が計算されますが、「課税売上高(税抜きの売上高)が5,000万円以下」かつ「消費税簡易課税制度選択届出書を提出している」場合は、簡易課税によって課税額が計算されます。事業によっては簡易課税の方が納税額を節約できることもあるので、どちらの方法を用いるべきか一度検討してみるとよいでしょう。それでは、本則課税と簡易課税それぞれの計算方法を見ていきたいと思います。
本則課税の場合、課税額は「受け取った消費税−支払った消費税」で計算されます。例を挙げましょう。108万円で売った商品の仕入れ額が54万円であったとします(ともに税込)。この時、受け取った消費税は108万円の売り上げのうち8万円、支払った消費税は54万円のうち4万円なので、国に収める消費税額は「8−4=4万円」となります。
他方の簡易課税制度では、どれだけの金額を支払ったかは計算する必要がありません。業種ごとに「みなし仕入れ率」が設定されており、「売り上げのうちどれだけの金額が仕入れに使われたか」をその割合によって自動で算出することになります。みなし仕入れ率に関しては下の表を参照してください。こちらも例を挙げましょう。仮に事業を卸売業とすると、下表の通り、みなし仕入れ率は90%になります。ここで総売上高が108万円であるなら、消費税額は8万円です。一方、仕入れの値段は「108×90/100=97.2万円」とみなされますから、仕入れの際に支払った消費税額は「97.2×8/108=7.2万円」です。結論として、この事業主が支払う消費税額は「8−7.2=0.8万円」となります。
なお、上記2つの例では平易にするため額を少なくしていますが、実際に消費税納付の義務が生じるのは、前述のように「基準期間の課税売上高が1,000万円を超える」場合ですのでご注意ください。

住民税

すでに確認したように、住民税には所得割と均等割とがあり、両者を合算したものが実際に納付する額になります。
所得割の計算式は、「(総売上−必要経費−所得控除)×10%−税額控除」となります。他方の均等割については、所得の大小に関わらず一定の金額となりますが、その額は市区町村によって異なりますのでお住いの自治体のウェブサイトなどを参照してください。

個人事業税

個人事業税の計算式は、「(総売上−必要経費−専従者給与等−事業主控除)×税率」となります。専従者給与とは、家族従業員への給与を意味します。事業主控除は、1年間営業した事業主に対して一律になされる290万円(営業期間が1年未満の場合は月割額)の控除です。先述のように税率は法定業種ごとに異なりますので、ご自身の事業がどれに該当するかは上掲のリストでご確認ください。

償却資産税

償却資産税は、市区町村へ申告した償却資産の評価額に基づいてその税額が計算されます。その計算式は、「課税標準額(1,000円未満切り捨て)×税率」(100円未満切り捨て)となります。税率は1.4%が標準的ですが、1.5%とする自治体も一部あります。次にポイントとなるのは課税標準額です。この価格については、初年度と2年目以降で計算方法が異なります。前年に取得した資産の課税標準額は「取得価格×(1−減価率×1/2)」の計算式によって求めますが、その翌年以降は「課税標準額=前年度評価額×(1−減価率)」となります。このように償却資産税額の算出にあっては、初年度のみ半年分の減価が行われることになります。

☆ヒント
今回見てきたような各種税金の細目を余さずに理解することは、決して容易ではありません。しかしそうは言っても納税を避けることはできませんから、申告・納付の期限に遅れることなく、しかも節税できるところは最大限活用していきたいものです。ビスカスは、そのような個人事業主の皆様のご要望にお応えできる税金のプロフェッショナルをご紹介しております。ぜひこの機会にご利用を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

個人事業主はその事業の年数や規模に応じて、様々な種類の税金を納めなければいけません。しかも、それらの中でも国税/地方税などの区分があるために、なかなか一筋縄ではいきません。この記事を参考にして、この機会に納税のいろはを理解していきましょう。

岡田桃子
東京大学卒。
卒業後は中央官庁に勤め、退官後ベンチャー企業に転職し、経理・法務などに携わる。
経理業務で得た知見や、中央官庁時代に得た法律や制度に関するナレッジを分かりやすく解説します。
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