フリーランスの強みを生かそう!節税のポイント | MONEYIZM
 

フリーランスの強みを生かそう!節税のポイント

自営業やフリーランスの方には、実は一般企業と比較した場合、税制上の優遇措置が複数設けられています。これらの措置を利用して経費を上手に増やすことができれば節税につなげられます。ここでは、優遇措置や特例を見落として損をすることがないように、フリーランスの皆さんにとって特に重要と考えられるいくつかの特例について詳しく解説していきます。

フリーランスの優遇措置

少額減価償却資産の特例

大企業ほどの資金を持たないフリーランス、あるいは個人事業主の方にとって、事業に必要な資産の購入費用の捻出は、常に大きな課題となっているのではないでしょうか。思い切って設備投資をしたのに、購入した資産に定額法で減価償却が適用されてしまうと、その年度の減価償却分しか損金に算入することができず、かかる税金は多いという状態になってしまいます。

これでは個人事業主にはあまりにも負担が大きすぎるため、中小企業や小規模事業者に対しては少額減価償却資産の特例が設けられています。これは減価償却が適用されるような物品のうち、購入価格が30万円未満のものについては、その購入費用全額を、それを購入した年度の損金として計上可能とするというものです。

通常、減価償却が適用される資産を購入した場合、その購入費用の全額が直ちに損金として計上されるのではなく、減価償却の期間および方法を定めたうえで、購入後から減価償却が完了するまで、分割された減価償却費を損金として計上していくことになります。このような方法をとることで、その資産を利用することによって得られる長期的な利益とその費用の会計上のバランスを保つことができます。

しかし、これでは購入費用がすべて反映されるのが後になってしまい、実際のキャッシュフローと会計上損金として計上される金額に大きなギャップが生じた状態で税金が計算されてしまいます。しかし、上記の特例を用いれば、購入費用を直ちに損金として計上することができ、所得税等がその分軽減され、購入による負担を最小限に抑えることができます。

ここで注意しなければならないのは、この特例にもいくつか制約があるということです。まずは先ほど述べた通り取得価格が30万円未満の物であること、そしてそれらの合計は1年間で300万円未満であることが条件となっています。しかしこうした制限があるとはいえ、この特例を活用すれば、税金の心配をせずに積極的な設備投資を行うことが可能になります。

交際費の特例

一般の企業では、法律によって取引先との接待や贈答にかかる交際費を損金として計上できる金額の限度が定められています。また、資本金や出資金が1億円を超えるような、いわゆる大企業に関しては、そもそも原則として交際費を損金として計上することが許されていません。しかし現在は景気振興を目的として、接待の一環として飲食を行った場合のみ、その50%だけを損金に算入することを可能とする特例措置が一時的に取られています。

このように、企業に対する交際費の損金計上の基準は厳しく設定されていますが、自営業やフリーランスの場合、交際費として計上できる金額にこれといった上限は設定されていません。そのため、取引先との飲食費や、その他必要な経費に関しては、全て交際費として記録しておけば、決算の時に損金として計上することができます。

しかしながら、度を越した交際費の計上は、税務署による取り調べの対象となってしまいます。上限がないとは言っても、あくまでも常識の範囲内の交際費であれば可能ということであり、経費として計上できるのは、事業の遂行に必要であると言えるような支出に限られるという点は念頭に置いておきましょう。また、接待等での支出があった場合には、必ずどのような内容であったかの記録が必要です。最低限でも領収書は保管しておくようにしましょう。税務署から交際費の内容についての問い合わせがあった場合に答えられないと、損金として計上することが認められなくなる可能性もあるので注意しましょう。

自宅と仕事場が兼用の場合

自営業やフリーランスの方の中には、仕事を家でやっているという方も少なくないかと思います。通常、仕事場での活動に必要な電気や水道の費用、あるいは仕事場そのものの賃料などは当然経費として計上し、損金とすることができますが、仕事場と自宅が同じであればどうなるのでしょうか。こうした場合は、自宅兼仕事場の維持に関わる全ての費用を経費として計上することはできませんが、一部ならば計上することが可能です。

税法上、経費として計上できるのは、正確に区分することが可能で、なおかつ明らかに業務において必要と認められるものに限ります。これを上手に活用することができれば、税金の節約が望めます。

自宅と仕事場が兼用の場合において、最初に検討しなければならないのは物件の賃料でしょう。この計算は、その他の費用と比べても最も区分しやすく、ほとんどの場合床面積で計算を行います。自宅のうち作業場等が占めるスペースの割合を計算し、物件の賃料にその割合を乗じた分だけ経費として計上することが可能です。その際、先ほど述べた通り正確に区分することが必要です。明確に仕事場と生活領域を分けておかないと、正確に区分されているとみなされず、経費としての計上が認められない可能性が出てきます。

次は電気代へと目を移してみましょう。例えばパソコンやコピー機、エアコンなど、仕事をするにあたってどこかで必ず電気は必要になります。仕事用と生活用のコンセントを完全に分けて、それぞれのコンセントで使用した電力の合計を算出することができるような仕組みが整っている場合には、この方法を用いることが最も正確です。それが不可能である場合には、一日のうちの業務時間の割合を算出して、これを電気料金に乗じて得られた金額の分だけ経費に計上すると良いでしょう。同様に、通信費に関しても一日のうち業務時間の占める割合から料金を計算する方法を用いることができます。

水道代やガス代に関しては、業務の中でこれらを必要とする業種は非常に限られているため、そうしたケースでなければ経費として計上することは困難です。また、その他必要と考えられないような費用もまとめて経費として計上しようとすると、最悪の場合、悪質な脱税行為とみなされかねません。経費の計算にあたっては、あくまでも常識的な範囲を守って計上するようにしましょう。

以上のように、自宅と仕事場が兼用であれば、生活に必要な費用のうちの一部も経費として計上することができ、税金の節約につなげられます。このような場合には、計上可能な部分をきちんと整理して、なるべく多く経費に盛り込むよう心がけましょう。

その他経費として計上できるもの

個人事業主の方が確定申告の際に経費として計上できる費用は、上記以外にも存在します。最後に、その中でも事業の遂行上、頻繁に必要となると考えられるいくつかの経費について説明いたします。

業務を行うにあたって、打合せなどのために取引先へ出向かなければならない時も多いでしょう。その際に発生する交通費は、旅費交通費として計上することが可能です。これも、その他の経費と同様、業務に必要であることを示せなければなりません。これはフリーランスの方にとっては常識かもしれませんが、旅費交通費をうまく利用することもできます。例えば、業務が終わった後や始まる前に出先で買い物などを済ませてしまえば、余計な交通費もかからず、節税にもなります。
旅費交通費の他にも、よく計上される費用の種類として雑費と消耗品費が挙げられます。雑費に関しては、あまり多く計上してしまうと疑いの目を向けられてしまいますが、消耗品費は上手に活用すれば節税につなげることができます。普段の業務に必要な消耗品は、利益が多く出た年度にまとめて多く買い込んでおけば、所得が減り節税が見込めます。

☆ヒント
個人事業主として活動するということは、自分の展開する事業自体はもちろんのこと、事業の成果に応じて納める税金についてもしっかりと管理しなければならないということです。税金に関する見落としは、脱税などの悪意がなかったとしても信用問題につながりかねないものであり、事業そのものにも影を落とすおそれがあります。このようなことを防ぐためにも、税金のプロである税理士に相談することをお勧めします。

まとめ

個人事業主の方には、一般的な企業には認められていない税制上の特例や、優遇措置がいくつか設けられています。事業の経営をスムーズに進めるためにも、これらの要件をしっかりと把握し、有効活用できるようにしていきましょう。

山本麻衣
東京大学卒。現、同大学院所属。
学生起業、海外企業のインターンなどの経験を経て、外資系のコンサルティング会社に内定。
自分の起業の経験などを踏まえてノウハウなどを解説していきます。
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