消費税改正で何がどう変わる? ~法人編~
経過措置が適用されれば、
店舗賃料の消費税は当面据え置くことも可能
消費税改正で何がどう変わる? ~法人編~  経過措置が適用されれば、  店舗賃料の消費税は当面据え置くことも可能

2015/11/18

 
  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • Google+でシェア
  • LINEでシェア

【今回の専門家は…】税理士 中垣光博先生(あすな会計事務所)

さきほどまでは、消費税率の引き上げが個人にどのような影響を及ぼすのかについてお聞きしましたが、今回は法人への影響について教えてください。再来年4月に消費税率が8%から10%に引き上げられると、企業財務にどのようなインパクトを与えるのでしょうか。
まず理解しておいていただきたいのは、消費税を納めるのは、あくまで「最終消費者」であるということです。企業は消費者から預かった税額分を肩代わりして納めているだけにすぎません。とくに、課税売上割合(消費税がかかる売り上げが全体の売り上げに占める割合)が高い事業者であれば、税率が8%であれ、10%であれ、負担はほとんど変わりません。つまり、税率の引き上げが財務にもたらすインパクトは非常に限定的であると言えます。
では、逆に課税売上割合が低い事業者の場合は、何らかの影響が及ぶ可能性があるということでしょうか?
そのとおりです。たとえば、消費税がかからない居住用賃貸住宅の家賃収入の売り上げが大きな割合を占める不動産保有会社や、同じく消費税がかからない医療費(健康保険の対象部分)が売り上げの大半を占める医療法人などは、課税売上割合が小さいので、自分が支払った消費税を最終消費者から受け取る消費税から控除することができないため控除できない消費税額が“コスト”になってしまうのです。税率が8%から10%に上がるということは、コストがますます大きくなるわけですから、財務に与えるインパクトはそれなりにあると思います。
個人向けには、さきほどお話のあった軽減税率が期待できそうですが、法人向けには、消費税率引き上げに合わせて何らかの軽減措置が講じられることはないのでしょうか?
残念ながらそれはありません。繰り返しになりますが、消費税を納めるのはあくまでも「最終消費者」ですから、負担軽減措置も消費者の生活負担を軽くする目的のためだけに設けられるのです。
ただし、昨年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられたときも同じでしたが、再来年4月に10%に引き上げられるときにも、経過措置が設けられることが決まっています。
経過措置の期間中に契約を取り交わした取引については、商品・サービスの納入や支払いなどが2017年4月1日を過ぎても、現行の8%の消費税が適用される可能性があります。
たとえば、どのような取引が対象になるのでしょうか?
典型的なのは工事請負契約ですね。たとえば住宅などを建設する場合、税率が10%に上がる半年前の2016年9月30日までに契約を済ませれば、引き渡しが2017年4月1日以降でも、建設費にかかる消費税の税率は8%となります。住宅の場合、土地には消費税がかからなくても、建物にはかかります。一戸建だと建物だけでも数千万円はしますから、負担が2%(10%-8%)抑えられるというのは、かなり大きいのではないでしょうか。
いまのお話は、どちらかと言うと個人にとってのメリットですね。法人にとっても、経過措置のメリットはあるのでしょうか?
先程お話したような医療法人等については、消費税がコストになってしまいますので、経過措置の適用を受けられるということがメリットになります。また、同じような請負契約であれば、法人の取引でも経過措置の恩恵を受けることはできます。たとえば、オフィスビルや商業施設といった非居住用物件の建設、設計、ソフトウェアの受託開発なども、2016年9月30日までに契約を交わしたものであれば、8%の消費税率が適用されます。
また、店舗など商業施設の賃貸契約であれば、2016年9月30日までに長期契約を交わすことによって、税率8%のままの状態を5年、10年と長期にわたって維持することも可能です。仮に月々の賃料が100万円だとすると、2%分の税額は2万円ですから、5年なら120万円、10年なら240万円分の税負担を減らすことができます。
それはありがたいですね。
ただし、途中で賃貸契約を変更すると、その時点で適用される消費税率が8%から10%に引き上げられてしまうので注意しましょう。
ところで消費税率が8%から10%に上がると、企業の会計システムや業務管理システムも更新を迫られるのではないでしょうか?
昨年4月に施行された改正消費税法に、8%への引き上げに続いて、10%への引き上げが行われるということが明記されていたので、すでにほとんどの企業はシステムの対応を済ませていると思います。ですから大きな混乱は起こらないと思いますが、現在政府が検討している軽減税率では、請求書に商品・サービスごとの税率・税額などを記載するインボイス(税額票)の発行が義務付けられる可能性があります。これにシステム対応している企業はまだ多くないはずですので、仮に決まった場合は早急に対応する必要があります。
24時間営業店をチェーン展開している企業などは、営業時間中の2017年3月31日から4月1日にかけて、全店舗のシステムの税率を一斉に切り替えなければなりませんね。
昨年5%から8%に切り上げられたときに一度経験しているので、ほとんど問題ないと思いますが、チェーン全体で「一定の時間で締めて一斉に切り替える」というルールを決めて、きちんと実行することが大切です。

ネット配信、クラウドサービスの消費税の課税方法が変わった!

ところで、2015年10月からインターネット配信やクラウドサービスに対する消費税の課税方法が変更されたようですね。どのように変わったのでしょうか?
ご存じのように、ネット配信やクラウドサービスの事業者には、海外に本社を置き、サービスも国外に設置されたサーバやデータセンターなどから提供している事業者がいくつもあります。従来は、これらの事業者が日本国内のユーザー向けに提供しているサービスについては消費税がかかりませんでした。海外からサービスを提供しているので、国外取引とされていたためです。
ところが、2015年10月の改正で、たとえ海外の事業者が提供するサービスであっても、利用者が国内在住であれば国内取引と判定され、消費税がかかることになりました。海外の事業者はこれまで、利用金額を無税で請求してきましたが、今後は8%の消費税を加算して請求することになります。
なぜ、海外事業者が提供するネット配信やクラウドサービスに消費税がかかることになったのでしょうか?
国内事業者との競争における不公平感をなくすためです。従来は、同じネット配信サービスやクラウドサービスを提供しても、国内事業者のサービスだけに消費税がかかっていたので、結果として利用者が支払うおカネ(利用料金+消費税)が割高となっていました。そうした不公平をなくすように、「海外事業者が提供するサービスについても消費税をかけてほしい」という国内事業者から政府への申し入れがあったようです。
そういうことだったんですね。ちなみに、新たに消費税の課税対象となるのはどのようなサービスでしょうか?
国税庁が具体例として示しているのは、①電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウェア(ゲームなどのさまざまなアプリケーションを含む)の配信、②顧客に、クラウド上のソフトウェアやデータベースを利用させるサービス、③顧客に、クラウド上で顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス、④インターネット等を通じた広告の配信・掲載、⑤インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス、⑥インターネット上でゲームソフト等を販売する場所を利用させるサービス、⑦インターネットを介して行う宿泊予約、飲食店予約サイト、⑧インターネットを介して行う英会話教室などです。
つまり、ネットを通じて提供するサービス、クラウドサービスのほとんどすべてと言っていいわけですね。今後、海外事業者が提供するこれらのサービスを利用する場合、税申告や手続きはどのようにすればいいのでしょうか?
個人がこれらのサービスを利用する場合は、国内取引と同じように請求された消費税を支払うだけです。特別な申告や手続きはいりません。
問題は、個人事業主を含む事業者がサービスを利用する場合です。本来であれば、事業者がサービス提供者に消費税を支払って、それをサービス提供者が税務署に納めるのですが、今回の改正では、サービスを利用した事業者がサービス提供者に変わって消費税を納めることになりました。これを「リバースチャージ方式」と言います。事業者向けのサービスは、このリバースチャージ方式により課税されます。「事業者向け」といっても法人に対する取引の全てが「事業者向け」になるわけではなく、明らかに「事業者」に対するサービス提供等であるものだけが「事業者向け」としてリバースチャージの対象となる点も注意が必要です。
たとえば、海外の事業者から1万円分のサービスを受けた場合、今後は消費税(8%)を含めて1万800円の請求書が送られてきますが、そのうち1万円だけをサービス提供者に支払い、消費税分の800円については利用者が自ら税務署に納めることになります。
当然、そのための申告や手続きも必要になりますよね。
納めるべき消費税の額をきちんと把握して、漏れなく申告しなければなりません。多少複雑な会計処理も要求されますので、海外からのネット配信やクラウドサービスを利用している事業者は、会計事務所によく相談したほうがいいでしょうね。
ちなみに、さきほど説明した課税売上割合(消費税がかかる売り上げが全体の売り上げに占める割合)が95%以上の事業者については、リバースチャージの申告は必要ありません。というのも、その事業者が消費者から預かった消費税の額(仮払い消費税)と、海外事業者の代わりに納める消費税(仮受け消費税)の額をプラスマイナスすると、ほぼゼロになるからです。
つまり、「申告しても意味がない」とみなされるわけですね。
はい。ですから、事業者の事務手続き負担を少しでも軽くしようということで、申告が免除されました。ただし、その年の課税売上割合が95%を超えるかどうかは、事業年度を締めてみないことにはわかりません。95%ギリギリになりそうだという会社は、申告への備えとして、会計処理として「仮払金」や「仮受金」等としてきちんと区分しておいたほうがいいでしょうね。
ちなみに、事業者向け以外(個人など)に海外からサービスを提供している業者は、預かった消費税をどう処理するのでしょうか?
事業者向け以外へのサービス提供の場合、リバースチャージは適用されませんので、海外の事業者が直接、日本の税務署に消費税を納めなければなりません。国税庁では、そうした海外事業者を登録管理しており、「登録国外事業者名簿」をホームページで公開しています。
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/shohi/cross/touroku.pdf)。
この名簿に登録されていない事業者からサービスを受けると、消費税の仕入れ税額控除が受けられなくなりますので、なるべく登録事業者と取引したほうがいいでしょうね。
  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • Google+でシェア
  • LINEでシェア
税理士紹介ビスカス

 -あなたにおすすめの記事-

Recommendation

-あなたにおすすめの記事-

    関連記事はまだありません。