スムーズな事業承継に「従業員持株会」を使う
~非上場会社の株にも株価はある~
スムーズな事業承継に「従業員持株会」を使う  ~非上場会社の株にも株価はある~

2017/4/7

 
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【今回の専門家は…】税理士 木村智行先生(税理士法人KMCパートナーズ

会社の経営を後継者に引き継ぐ事業承継の案件が増えています。戦後会社を立ち上げた創業者がリタイアの時期を迎えたという事情もあるようですが、きちんとバトンを渡すのは、実はそう簡単なことではないと聞きます。
そうですね。そもそも後継者を誰にするのかといった課題もありますけれど、最もネックになるのは、自社株の扱いなんですよ。非上場企業の株式にも「価値」、すなわち株価があります。算定方法はあらためて説明したいと思いますが、「発行した時、大した金額ではなかったから」「どうせ中小企業だし」と高をくくっていると、思わぬ高値になっていてびっくり、ということが珍しくないのです。自社株が値上がりするのは喜ばしいことのようにも感じられますけれど、事業承継の局面では、それが大問題になるんですね。

 後継社長が安定的な会社経営を行うためには、相応の自社株を持っていることが必要です。何かの理由で取締役を解任されたりしないためには、過半数。でも、それでは不十分で、株主総会で経営の重要事項などを決議できる3分の2以上は保有するのが普通です。ところが、自社株が高値になっていると、後継者がその買取資金をどのように調達するのか、という難問に直面するわけです。
 生前贈与しようにも、株価が高ければ高いほど、高額の贈与税を覚悟しなくてはなりません。仮にその状態で相続になると、事業を引き継いだ息子さんには、自社株の評価額にリンクした相続税が課せられることになるでしょう。相続の際には、自社株を引き継がない他の相続人の遺留分(※1)への対応という、別の問題が発生する可能性もあります。
「お兄ちゃんは高い自社株を相続するのに、私に何もないのはおかしい」というパターンですね。
ちなみに、非上場会社の株の価格はあくまでも評価額で、上場企業のように自在に売り買いできるわけではありません。にもかかわらず、事業の後継者が代償分割(※2)による多額の経済的負担を強いられることになるかもしれないんですよ。「争続」の引き金になるかもしれないし、それが原因で自社株が散逸する危険性もあります。
それでは、安定した事業の継続自体が難しくなってしまう。自社株を後継者にスムーズに受け渡すことの大事さが、よくわかります。
では、そのためにどんな手立てがあるのか? 会社の置かれた状況、株価水準などによって様々なやり方を考える必要があるのですけど、実際に当事務所で取り組んで効果を上げているのが、株を「経営権」と「財産権」に分けたうえで、前者を確実に後継者に引き継いでもらう、という手法です。それにも複数の選択肢があるのですが、次から「従業員持株会」を活用したスキームを紹介していきましょう。

※1 遺留分:
民法に定められた、相続人が最低限受け取れる遺産。

※2 代償分割:
財産を特定の相続人が取得し、それが他の相続人より多かった場合、その代償として金銭や物を他の相続人に支払う、という遺産分割の方法。

株価を下げて、従業員に渡す

上場企業でよく聞く「従業員持株会」ですけれど、非上場会社の事業承継にも「使える」わけですね。
従業員持株会というのは、自社株を保有する従業員の団体、民法上の組合です。加入は任意で、自社株を共同購入した社員は、その拠出額に応じて配当などを受け取ることができます。
 さて、さきほど、後継者に自社株を確実に引き継いでもらうために、「株を『議決権』と『財産権』に分ける」という話をしましたよね。従業員持株会を使った事業承継の意味をひとことで言えば、「後継者が『議決権』を確保したうえで、自社株を低い評価額で持株会を通して従業員に間接的に持ってもらう」ということになるでしょう。評価額が低ければ、持株会も株を保有しやすくなりますし、相続財産の圧縮にもつながり、後継者の払う相続税を大きく軽減できるのです。
それならば、あまりお金の心配をせずに事業承継できそうです。でも、どうやって自社株を低い評価額で持株会に移すことができるのでしょうか?
そこでポイントになるのが、「非上場企業の株価の算定方法は1つではない」ということなんですよ。会社の業績や資産内容等を反映した原則的評価方式(「会社の資産-負債」を基に決める「純資産価額方式」、上場している類似業種の企業の株価に準じる「類似業種比準方式」、及びこれらの併用方式)そして年間配当額をベースに評価する特例評価方式である「配当還元方式」の2種類があるのです。
 株価は通常、「原則的評価方式」である、「純資産」か「類似業種比準」か、または両者の併用で決められます。例えば、「純資産」を基に算定すれば、利益を積み重ねた結果、起業時から大きく増えている会社の資産が、株価を押し上げることになるでしょう。「うちの株は、そんなに高くなっていたのか」と驚くのは、たいていそれが原因なんですね。
 一方、「配当還元」による評価は、利益や純資産などに関係なく、過去2年間の配当実績を10%の還元率で割り戻すことによって算定されます。その結果、前者に比べて、大幅に自社株の評価額が下がることになるんですよ。ただし、これは「特例的評価方式」であるため、適用するには一定の条件をクリアする必要があります。
どんな条件なのですか?
ごく簡単に言うと、会社の経営に対する支配権を持たない「少数株主」の持つ株については、この特例が適用できることになっているのです。例えば、社長が8割の株を持っていたら、残る2割を保有していても、基本的に会社の経営に影響力を行使することはできませんよね。にもかかわらず、社長の保有する株と同じ評価では不合理だというのが、特例を認める理由です。
 お話ししてきたスキームでは、経営権は後継社長に引き継がれます。裏を返せば、従業員持株会が経営そのものに口出しすることはできないわけですね。ですから、彼らは「少数株主」で、その保有する株には配当還元方式による評価が適用できることになるのです。
 ところで、そもそも「経営権と財産権を分ける」ことが、どうして可能なのでしょうか? 次は、その話をしてみたいと思います。

株にはいろんな種類がある

スムーズな事業承継に「従業員持株会」を使う  ~非上場会社の株にも株価はある~
会社の後継者が経営権を確保しつつ、「従業員持株会」に一定の自社株を保有してもらい、その評価額を下げる。さきほどお話ししたその手法をさらに効果的にするのが、「種類株式」と呼ばれる株なんですよ。実は会社は、その保有数に応じて株主総会で議決権を行使し、配当も受け取れる「普通株式」の他に、様々な特徴、機能を持った株を発行することができるのです。原則として1株に与えられる権利が平等な「普通株」と違い、特別な権限を付与したり、逆に制限をかけたりするわけです。なお、種類株式を発行するためには、まず定款変更の特別決議を行い、種類株式発行会社となる必要があります。
例えば、どんなことができるのでしょうか?
「種類株」には、①株主ごとに異なる配当ができる=「剰余金の配当」、②株主ごとに異なる分配ができる=「残余財産の分配」、③株主総会での議決権を制限できる=「議決権制限種類株式」、④特定の種類株式のみ譲渡を制限できる=「譲渡制限種類株式」、⑤株主が会社に対して所有している株式を買い取ることを請求できる=「取得請求権付種類株式」、⑥会社による強制取得=「取得条項付種類株式」、⑦総会議決に基づく全部強制取得=「全部取得条項付種類株式」、⑧定款に基づく種類株主総会の承認=「拒否権付種類株式」、⑨種類株式総会での取締役、監査役の選任=「選解任種類株式」――という全部で9種類が認められています。
 事業承継に有効な種類株の1つが、「議決権制限種類株式」です。この株は、総会での議決権をまったく認めないようにデザインすることもできますから、持株会にはこれを持ってもらうようにするんですね。そうすれば、たとえ持株会の株式保有数が社長のそれを上回ったとしても、経営の不安定要因にはなりません。持株会設立後も、社長が引き続き100%の議決権を持つこともできるわけです。
 同時に、この株で奪われるのは総会の議決権のみです。持株会の社員は、経営に影響を与えることはできないけれども、配当は受け取れる。退社時には持株会が買い取るように決めておけば、彼らにとっても一定の資産形成に寄与するというメリットが生まれます。
なるほど、経営者、社員両者にとってWinWinの仕組みが構築可能だということですね。先生のおっしゃった「経営権と財産権を分ける」という意味が、よくわかりました。
これらの種類株は、工夫すれば、会社の実情に合わせた実にフレキシブルな設計が可能なんですよ。もちろん、複数の種類株を同時に発行することもできます。例えば、議決権ありで配当なしのA種類株と、逆に今のように議決権はないけれど優先配当が受けられるB種類株を発行して、経営陣にはA、社員にはBを渡すようにする。経営陣はもともとそれなりの役員報酬を得ています。配当金は総合課税(※3)になりますから、もらうと税額が膨らむ可能性もあるわけです。
株も使い方次第。経営に携わる方は、知っておきたいですね。
※3 総合課税:
他の所得と合算して税金を計算する制度。利子所得、配当所得、事業所得などが対象となる。

「持株会社」とどう違う?

ずっと「従業員持株会」の話をうかがっていますけれど、名前の似通った「持株会社」も、事業承継対策に有効だといわれます。
そうですね。持株会社というのは、ある事業会社の株式を保有する資産保有会社のことです。確かにそれを設立してうまく活用できれば、事業承継の武器になりますよ。そちらの仕組みも、簡単に説明しておきましょう。
 持株会社ができると、社長はその会社を通じて、経営している事業会社の株を間接的に持つことになります。その状態で、事業会社の業績良好、利益が伸びたとします。通常ならば、事業会社の株価も右肩上がりとなるわけですが、持株会社を通じて事業会社の株式を間接保有する場合は、生じた値上がり益(含み益)にかかる法人税分を控除することができるので、その分株価の評価を下げることができるんですよ。
利益が伸びても、株の評価額は値上がり益をある程度抑えることができるというわけですね。
その通りです。加えて、設立3年以上経っていれば、有利な株の評価法を適用することが可能です。前に、非上場会社の株価の評価には、2つの方式があるという話をしました。「原則的評価方式」(会社の資産、負債をベースにする「純資産価額方式」、類似の上場企業の株価を参考にする「類似業種比準方式」、及びこれらの併用方式)と、年間配当を基準に考える「配当還元方式」です。
従業員持株会の持つ株は、最後の配当還元方式で評価されるから、株価を抑えられるということでした。
実は、前の「純資産」と「類似業種比準」の間にも差があって、一般的には類似業種比準方式を採用したほうが有利、すなわち株価を低くできるんですよ。設立後3年以内の会社は、必ず「純資産」による評価になりますけど、それ以降は類似業種比準か、純資産と類似業種比準の併用方式が使えるのです。ただし、この評価方式を適用するためには、総資産に対する株式の割合を50%未満に保たなければなりません。「持っているのは自社株だけ」という状態ではNGで、不動産なり何なりの資産を保有する必要がある、という条件は付きます。ただし、合理的な理由なく、恣意的に株式保有割合を操作したと認められる場合には純資産価額方式で評価される可能性がありますので注意が必要です。

 繰り返しになりますが、スムーズな事業承継のポイントは、1にも2にも「自社株の評価を下げること」です。そうすれば、生前贈与でたくさんの株を計画的に後継者に渡していくこともできますし、相続になって目の飛び出るような相続税を支払わなければならず、経営に支障をきたす事態になってしまった、というような悲劇も防ぐことができるでしょう。その意味で、持株会社も検討すべき選択肢の1つであることは間違いありません。
事業承継対策としては、「持株会」よりもポピュラーなイメージですよね。
持株会社のほうが比較的簡単につくれるというのも、その1つの理由ではないでしょうか。従業員への説明やその同意などは不要で、経営者の意志でどんどん事を進められます。持株会への決算情報開示義務みたいなものもありません。
 まあ、世の中には、持株会ができる会社もあれば、持株会社が適した企業もあります。両者をミックスした対策を講じるケースもあるんですよ。
制度がいろいろあるだけに、どれをどのように使うのかにも、プロの経験と知識がいるわけですね。

社員のモチベーションを上げる

スムーズな事業承継に「従業員持株会」を使う  ~非上場会社の株にも株価はある~
再び「従業員持株会」の話をうかがいます。今回、経営者の事業承継対策という切り口から、持株会について解説していただいていますが、本来はそれに加入することによって資産形成を図るという、社員の福利厚生の意味を持った制度ですよね。
そうです。まあ、上場大企業ほどの経済的なメリットはないかもしれませんけど、例えば10万円で購入して、年間に1万円の配当があったら、「お得感」はあると思います。さらに業績が上がれば、配当増が期待できるかもしれません。そうした点も含めた、社員のモチベーションアップのツールにも、なりえるわけです。
 ところで、経営者の方の大半は、そもそも「従業員持株会」のことを知りません。「そろそろ事業承継のことをお考えになったほうがいいですよ」という話をする際に、「持株会をつくる方法もあります」とアドバイスして、初めてその存在を認識するわけですね。その時に、けっこうお客様に“刺さる”のが、実はこの「社員のモチベーション」なんですよ。「従業員の帰属意識を高める効果もあります」というふうに話すと、身を乗り出してくる感じになるのです。裏を返せば、多くの会社経営者は、「どうやったら社員にもっと高い意識を持って働いてもらえるのか」というところに、大きな悩みを抱えているということでしょう。
それは経営者の端くれである私にも、痛いほどわかります(笑)。
さっき話したように、もともと安い値段で株が買えたうえに、業績に応じて配当が貰えるとなれば、それが帰属意識を高めることにつながるはずです。持株会のある中小企業などなかなかないわけですから、自社の株を持つということ自体が、励みにもなるのではないでしょうか。そうやって従業員のモチベーションアップに寄与したうえに、自社株の評価減もできるということで、当事務所のお客様でも、導入する会社が増えてきたのです。
 一方、持株会の設立が、従業員だけではなく経営者のモチベーションを刺激することもあるんですよ。
それは、どういうことでしょう?
後継社長には、「先代とは違う経営をしたい」という意識の人も、少なくありません。持株会の導入は、そうした「経営改革」の旗印にもなるのです。例えば、持株会をつくると、経営者はそこに対する決算開示義務を負うことになります。そうしたことを嫌がるトップも当然いるのですが、逆に「昔と違うのだから、会社の状況は社員にオープンにしていこう」と考える後継社長にとっては、デメリットにはなりません。むしろ、そういう姿勢を示すメッセージになりうるわけですね。「こんなにいい会社なのだから、自信を持って働いてほしい」と。
それがまた、社員のモチベーションを高める相乗効果を生むような形が、理想ですね。
実際に、持株会がそういうメリットに結びつきつつある会社も、たくさんありますよ。

どんな会社に向いている?

さきほどまでのお話で、「従業員持株会」が、円滑な事業承継だけではなく、社員のモチベーションアップの武器になりうるものであることが、よくわかりました。とはいえ、猫も杓子も「持株会」ということではないと思います。「こんな会社はぜひ検討を」というのはありますか?
当然のことながら、株価の高い会社ですね。当事務所では、自社株が10億円超の会社の事業承継もお手伝いしますが、こうなると、高い贈与税を考慮して年間数百万円ずつ株を後継者に贈与していく――といったやり方では、とても間に合いません。持株会をつくって、前にお話しした「配当還元方式」の評価を適用できれば、例えば「1株が簿価(※4)では5万円なのに、実際には100万円まで膨らんでしまった」というようなケースでも、極論すれば5万円程度で従業員に渡していくことができるんですよ。
 ちなみに、株は従業員ではなく、外部の人に持ってもらうことも可能です。中小企業の自己資本の充実を目的に、法に基づいて設立された「中小企業投資育成株式会社」や一般のベンチャーキャピタルなどに出資してもらうんですね。ただ、出資には要件があることに加え、それをやると自社株が社外に流出することになります。そのリスクを避けたいのならば、持株会が有力な選択肢になるでしょう。
 今のは、「検討すべき会社」のお話ですけど、同時にこの制度に「向く会社・向かない会社」もあると思っています。例えば、日頃から社長と従業員の間がギクシャクしていたら、持株会を設立したくても困難かもしれません。
「あの社長は本当に配当してくれるのか?」と疑心暗鬼に(笑)。
結果的に、我々のアドバイスを受けて持株会をつくるのは、「いい会社」が多いんですよ。後継社長にやる気があって、実際に利益を伸ばしている。さきほどもお話ししたような、トップが自分の会社に自信を持っていて、「社員にも誇りを持ってほしい」「ずっとここで働いてもらいたい」というメンタリティで舵取りをしているようなところですね。持株会は、そういう社風にぴったりな制度だと感じます。
あえて、それをつくる時の注意点も教えてください。
最も気をつけなければいけないのは、経営権の問題ですね。「株価は下げられたけれど、持株会が経営に大きな影響力を持ってしまった」という状況は、やっぱり避けなければいけません。持株会にどんな株=以前説明した「種類株」を持ってもらうのかにもよりますが、議決権を与える場合には、株主総会で重要事項の提案などを否決できない3分の1以下に抑える必要があります。なお、その場合でも「少数株主の権利」として、例えば3%以上の議決権があれば会計帳簿閲覧権や株主総会招集請求権、1%以上で株主提案権、1株以上で代表訴訟提起権などが認められることになります。
 持株会の社員も立派な株主ですから、決算内容をきちんと公開するなど、その権利を尊重しなくてはいけません。配当のことも考えておくべきでしょう。利益が出たら還元するのが務めである半面、それが経営を圧迫するような事態は避ける必要があるのです。持株会の社員が退職する時には、持株会に株を返して、現金で払い戻しを受けることになります。その値段=株の評価方法についても、持株会が当初購入した金額で払い戻すことにするといったことを規約にしっかり定めて、想定外の高値になったりしないよう十分気をつけましょう。
※4 簿価:
会社が所有する資産の帳簿上の価額。一般には、その資産の取得原価。

社長就任のタイミングで考える

スムーズな事業承継に「従業員持株会」を使う  ~非上場会社の株にも株価はある~
どんな相続対策もそうですけれど、事業承継は特に早めの対策が求められますね。
その通りです。当事務所と新たに顧問契約した会社の中身を見たら、事業承継対策がまったく手つかずで、「もっと早ければ、株価はかなり抑えられたのになあ」と感じるようなことが、けっこうあります。
 「従業員持株会」については、私は「後継者が社長に就くタイミングでつくりませんか」とアドバイスしているんですよ。最初に、「自社株を『経営権』と『財産権』に分けて対策を打っていく」という話をしたと思います。その「経営権」が移る段階で、「財産権」のほうも抜本的な手を打とうということです。
 このタイミングというのは、実は大事だと私は思っているのです。家によっては、後継者以外の兄弟なども、相応の自社株を持っていることが少なくないんですね。経営を安定させるために、それらを後継者に集中させようと考えると、そうした時期を逃すとなかなか話を切り出しにくくなったりするわけです。
その結果、後になって、「高値で買い取ってほしい」ということになったり……。
そうですね。ですから、「社長として家業を発展させていきたいから」と話をするには、格好の機会だと思うのです。新社長誕生と同時に持株会ができたら、「会社もリニューアルした」という社内の雰囲気を醸成するのにも寄与するでしょう。
設立にはどんな手続きが必要で、どのくらいの期間がかかるのですか?
ざっくり言うと、まず会社と我々が相談しながら運営規約を決め、持株会の理事長を決めます。社内で最も信頼を置ける社員を、そのポストに就けるんですね。そして、前に説明した「種類株式」を発行するための定款変更とか、取締役会議事録の作成だとかをやります。議事録、覚書、契約書の類は、ざっと10種類以上にはなるのですが、そこは我々が作成して進めていきます。  そうした作業を進めながら、社員の方に「従業員持株会を設立しますよ」という募集通知をして、入会申込書を配布します。加入者が決定した後、持株会の名簿を作成し、オーナー社長、会長と自社株の譲渡契約を締結――だいたいそんな流れなんですよ。
 社員の拠出金は、毎月の給与などから天引きされるのが普通ですね。それらの対銀行手続きも含めて、当社が請け負う場合には、準備開始から2~3ヵ月で設立にこぎつけることが可能です。
とはいえ、どこの事務所でもできるという案件ではなさそうです。
経営者の方は、事業承継になんとなく不安を覚えてはいるけれど、具体的にどうしたらいいのかわからない、というパターンがほとんどなのです。こちら側から提案しないと、なかなか事が進みません。ただし、それを実行するのは、おっしゃるようにけっこうハードルが高い。持株会に関して言えば、会社の置かれた状況や経営者のニーズを考慮しつつ、例えばどんな「種類株」を発行して、全体をどんな組み立てにするのかを、適切にアドバイスできなければいけません。実際にいろんな事例を経験して、スキルを蓄積していないと、厳しいでしょうね。
事業承継も、早めの準備、そして適切な事務所選びがなによりも大事になります。
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