2億円超の自社株が2000万円に!?
~事業承継最大のネックは「高い自社株」~
2億円超の自社株が2000万円に!?  ~事業承継最大のネックは「高い自社株」~

2017/5/10

 
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【今回の専門家は…】税理士 村形聡先生(税理士法人ゼニックス・コンサルティング)

村形先生の事務所は、事業承継にも多くの経験をお持ちですよね。最近は、やはり件数が増えているのでしょうか?
私のまわりで目立って増えているということはないのですが、団塊世代がリタイアの時期になっていますし、コンスタントにサポートの依頼をいただきます。当事務所のクライアントにはあまりいないのですけれど、そもそも後継を託す人物のメドがまったく立たずに、頭を抱えているようなケースも、けっこうあるんですよ。じゃあM&A(企業合併、買収)で事業を売却しようかと考えても、これといって個性的な技術とか製品とか、魅力的な販路だとかがなかったら、買い手はつかないでしょう。それでは、我々もテクニックの使いようがない。本当にそんな状態だったら、やむをえず事業を畳む方向で話をするしかありません。
 あらためて整理しておくと、広い意味での事業承継のやり方には、株式上場(IPO)、子息や娘婿など親族に譲る、社員の適任者に譲る、廃業する、M&Aを行う――の5つがあります。今お話ししたM&Aひとつとってみても、合併、所有する自社株を他者に売る株式売却、自社株を他社に取得してもらいその子会社となる株式交換、複数の事業のうち選択した事業を新設会社に承継させる会社分割といった、様々な手法があるんですよ。対象となる会社の事業の中身、経営状態、お客様の希望などを勘案して、よりベストに近い手法を選ぶわけです。
“跡継ぎ”候補がいても、きちんとバトンを渡せなかったら、会社が傾いてしまう危険性がありますよね。
当事務所のクライアントには同族会社が多いですから、自分の息子に継がせるというのが一般的です。でも、子どもがいないとか、いても家業を継ぐ意思や能力に欠けるだとかの事情で、そうはいかないこともあります。その場合には、経営陣などから後継者を指名することになるわけですが、いずれにしても一番ネックになるのは自社株の扱いなんですよ。
 上場企業の株と違って、非上場会社の株式はおいそれとは売れません。「買ってもらえない」というのが正確でしょう。にもかかわらず、自分の持つ自社株を誰かに移そうと思ったら、対価を支払って「買ってもらわ」なくてはなりません。仮に相続になれば、その評価額分が相続財産としてカウントされることになります。
実際は売ることもままならないのに、一定の価値を持っているとみなされるわけですね。
その通りです。問題はその評価で、純資産が大きかったりすると、思いもよらない高額になってしまう。バブル時代に大きく資産が増えたけれど、今の商売は鳴かず飛ばずで手持ちのお金がない、というパターンが一番困るわけですよ。資金が潤沢にあれば、ある程度の贈与税を支払いながら後継者に株を移していく、といった手立ても可能なのですが。
 自社株は経営権の裏打ちとなるもの。原則として、次期経営者が総会で取締役の解任や定款変更ができる3分の2超を持つのが理想ですから、株価が高すぎるというのは大問題なのです。
 では、高くなってしまった自社株を、スムーズに譲り渡す手立てはないのか? 次から、そのための“キラースキーム”をご紹介しましょう。

第1のポイントは、「種類株」「属人株」の活用

先生のおっしゃる、高くなってしまった自社株を、スムーズに譲り渡すための“キラースキーム”とは、どんなものですか?
答えをひとことで言うと、「『種類株』を発行して、『従業員持株会』に持ってもらうことにより、新しい経営者の自社株取得の負担を一気に軽減する」というやり方なんですよ。何のことだかわかりませんよね(笑)。順を追って説明しましょう。  今回は、「種類株」とは何か? についてお話しします。普段「株式」と言われるのは、正確には「普通株式」のことなんですね。1株の持つ権利は平等で、持っている株数に応じて株主総会で議決権を行使し、配当を受け取ることができます。でも、実は会社が発行できる株は普通株だけではありません。例えば「株主ごとに異なる配当ができる」(剰余金の配当)といった、ある特徴を持った株も出すことができるのです。これが種類株です。
 種類株には、表に示した9つが認められています。かつては発行制限があったのですが、今は撤廃されました。ですから、これを最大限、有効活用するわけです。

(1) 剰余金の配当
(2) 残余財産の分配
(3) 株主総会において議決権を行使できる事項(議決権制限種類株式)
(4) 譲渡制限(譲渡制限種類株式)
(5) 株主から会社への取得請求権(取得請求権付種類株式)
(6) 会社による強制取得(取得条項付種類株式)
(7) 総会決議に基づく全部強制取得(全部取得条項付種類株式)
(8) 定款に基づく種類株主総会の承認(拒否権付種類株式)
(9) 種類株主総会での取締役・監査役の選任(選解任種類株式)

 ちなみに、(8)の「拒否権付種類株式」は、別名「黄金株」と呼ばれ、これを持つ人間は、たとえ総会や取締役会で決まったことであっても、特定の事柄について「ノー」を宣言することができるんですよ。総会で決議された他社との合併を止めることもできる。例えば、今の社長がこれを持ち、息子に自社株を譲りながら、未熟なための行き過ぎがあったら行使して会社を守る、という使い方もできるんですよ。
うまく使えば、経営の大きな武器になりそうですね。
さらに、非上場会社には、今の種類株の他に「剰余金の配当」「残余財産の分配」「株主総会における議決権」の3項目について、株主ごとに異なる権利を設定した「属人的種類株式」(属人株)を定款に定めることが認められているんですね。例えば、「配当と残余財産の分配は認めるけれど、総会の議決権は与えない」というような株式を発行することができるわけです。

第2のポイント=「従業員持株会」を駆使する

ところで、お話しのスキームには、さきほど説明していただいたどの種類株を、何のために使うのでしょう?
「株主総会の議決権は認めない」属人的種類株、ないし「議決権制限種類株式」(上記表(3))を使います。これを発行して、従業員持株会に持ってもらうのですよ。わざわざ種類株にするのは、持株会に総会の議決権を与えないために他なりません。これならば、持株会の持株比率が高まっても、経営に影響力を持つことを防げるのです。次期社長の持株比率が仮に30%だったとしても、実質的には議決権を100%持つことが可能になるわけです。
なるほど、それならば、従業員との間でなにか不測の事態が起こったとしても、次期社長の経営権は守れますね。では、「種類株を発行し、従業員持株会に持ってもらう」ことで、事業承継がスムーズに進められるのは、なぜでしょう?
今回も、「従業員持株会とは何か?」の説明から始めましょう。「持株会」はその名の通り、従業員の団体を作って、そこに自分の会社の株を持ってもらう、という社内的な制度です。社員は、賞与や給与から拠出金を天引きされて自社株を共同購入し、拠出額に応じた配当などを受け取ります。一般的には、主な目的は福利厚生で、「自社の株を持ち利益が上がれば配当を受け取れるようにすることで、従業員のやる気を引き出す制度」だと説明されたりしますよね。私自身は、その言い方には異議もあるのですが、それについては、あらためて述べることにします。
 さて、本題です。ポイントになるのが、非上場会社の株価の評価方法なんですよ。実はそれは1つではなく、①純資産価額方式、②類似業種比準価額方式、③配当還元方式の3種類があるのです。簡単に言うと、①は会社の資産と負債の差額に着目して株価を求める方法で、当然プラスが大きいほど高く評価されます。②は類似の業種の上場企業の株価に準じるやり方ですね。この①か②、ないし両者の併用が「原則的評価方式」で、通常、自社株はこのやり方で株価が決められるのです。これに対して、③は「特例的評価方式」で、年間配当金額をベースに自社株を評価します。配当額が多いほど、株価は高くなります。
 ここで重要なのは、一般的に言って、株価は③→②→①の順に高く評価される、という事実です。
以前おっしゃった、「資産が膨らんでいる会社の事業承継は厳しい」というのは、①を適用されてしまうからなんですね。
そうです。多くの資産が、株価に反映してしまう。でも裏を返せば、そんな会社であっても、もし「特例」の配当還元方式による評価が使えたら、株価を下げることが可能になるでしょう。従業員持株会に自社株を持ってもらう意味は、まさにそこにあるんですよ。

安い価格で、自社株を持株会に渡していく

特例的評価方式である、自社株の「配当還元方式」について、もう少しかみ砕いて教えて頂けますでしょうか。
これは、「株主が会社から受ける配当金」のみを指標にして、その非上場会社の株価を決めるやり方です。具体的には、「(1株当たりの過去2年間の平均配当金額/10%)×(1株当たりの資本金等の額/50円)」という式で計算されるのですが、いずれにせよ、純資産価額方式などの原則的評価方式に比べ、格段に株価を安く評価することができるんですよ。配当金額を低く抑えたり無配を続けたりすれば、「値下げ」効果がさらに大きくなるわけです。
 とはいえ、そういう値決め方式であるだけに、「特例的」にしか認められません。これを使えるのは、「少数株主」が持つ株式に限定されるのです。
「少数株主」の定義は、何でしょう?
単に持っている株式の数が少ないというだけではなく、会社の経営に対する影響力が非常に希薄であることも、要件とされています。例えば、社長と親族、いわゆる同族で過半数を超える株を持っていたら、その他の株主が結束しても、できるのはせいぜい3分の2超の賛成が必要な、定款変更など総会での特別決議を阻止することぐらいですよね。こういう場合には、残りの株主は少数株主とみなされるわけです。
 具体的なルールとしましては、株主の一人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が全議決権の30%以上である場合に、その株主及び同族関係者のことを同族株主といい、この同族株主以外の株主については、少数株主として「配当還元方式」による株式評価が認められています。
 お話ししてきたスキームでは、そもそも持株会に議決権はありませんので、同族株主が別にいる限り、彼らは立派な少数株主。つまり、持株会に渡す自社株については、有利な配当還元方式が適用できることになります。
 ただし、これを使うためには、同族以外にできれば10人近いプロパーの方がいて、持株会に参加してもらう必要があります。従業員持株会は、末永く維持しなければなりませんので、多くても、1人10~20%くらいを保有してもらうのが理想で、人数が多いほど「低い持株比率で、安定的に持ってもらう」ことができるからです。
 さて、全体をおさらいしましょう。自社株を100%持つ社長が、息子に事業を継がせたいと考えました。ところが、純資産が膨らんだことなどにより、1株5万円だった株が、30万円にも跳ね上がってしまった。年に110万円まで無税の生前贈与を重ねても、渡せる株は知れている。さりとて、高い贈与税を支払う余裕はありません。
 そこに、従業員持株会を活用したスキームを適用します。持株会の株主は少数株主ですから、配当還元方式が使えます。その結果、彼らに対しては、1株2万5000円で自社株を渡すことができました。そうやって、例えば現社長の持つ自社株の70%を「議決権のない株式」に変えてから持株会に移し、議決権のある30%の株式を次期社長である息子に渡す。持株会の株には、総会の議決権がありませんから、次期社長は100%の経営権を維持しつつ、会社の舵取りに励むことができる。加えて70%の自社株は、社長の相続財産から外すこともできる――。そんな組み立てなんですよ。
実際に、そのスキームを使われたことはあるのですか?
今手掛けている案件では、時価評価で総額3億円近い自社株の7割を持株会に移すのに、2000万円で済む計算になっています。効果のほどがわかっていただけるでしょうか? けっこう複雑なのですが、ある程度汎用性があることも、この方法のいいところだと私は思っているんですよ。

「従業員持株会」には、注意すべきこともある

2億円超の自社株が2000万円に!?  ~事業承継最大のネックは「高い自社株」~
これまで「従業員持株会が、事業承継に活用できる」という話をしてきました。ただしこれは、「非上場会社の持株会は、事業承継に使う以外にはほとんど意味がない」と言い換えることもできる、というのが私の考えなんですよ。渡したぶんだけ相続財産が減ったりする社長はまだしも、特に従業員の側には、自社株を持つメリットは、多くの場合ありません。
 ものの本やネットの記事では、「社員の会社への帰属意識、仕事へのモチベーションを高める」「株を持つことで、社員の資産形成に寄与する」といった話が語られるのですけど、実態とかけ離れた空論に聞こえて仕方がないのです。考えてみてください。配当してくれるというのなら嬉しいけれど、毎日のように顔を合わせて叱咤激励されている社長に対して、「利益が出たなら配当してください」なんて、口が裂けても言えないという人がほとんどのはず。中小企業が置かれている現状を見れば、配当を期待すること自体、難しいのです。「資産形成」できる可能性があるのは、上場企業の話であって、非上場の中小、零細企業の従業員にとって自社株を持たされるのは、迷惑でさえあるのです。ですから、お話ししてきたスキームを実行するうえでも、例えば賞与などを多少上乗せしつつ、「持株会への加入をお願いする」というイメージになると思います。
あえてうかがうと、持株会を作ることによるデメリットはあるのでしょうか?
今回のケースでは、議決権を奪っていますから、経営権に関しては問題ありません。でも、財産権は付与されたままになります。その多数を従業員持株会に握られているという状態は、あまり好ましいことではないでしょうね。ちなみに、「社員の経営への参加意識を高めてもらおう」といった思惑から、議決権も付与したまま渡す時には、当然、その比率を考慮しなければいけません。
 また、万が一自社株が散逸するのを防ぐために、「持株会の社員が退社する場合には、株は手放さなければならない」旨の規約を作成しておく必要があるでしょう。その買取価格でトラブルにならないように、例えば「購入価格で買い取る」といった一文も、約款に盛り込んでおくべきですね。まあ、何かの拍子に持株会との関係が悪化したり、一生懸命入会を勧めた社員をリストラせざるをえなくなったり……。何事もそうですが、リスクを考え始めたらきりがありません。
 繰り返しになりますが、そうまでして「持株会を作りましょう」というのは、事業承継、それも抜本的な手を打たないと大変だという、やや切迫したケースでも、それが役立つからに他なりません。とりあえず、目前の事業承継を無事終わらせよう。後のことは、それができてから考えよう、というスタンスなんですよ。私は、めでたく新社長が誕生したら、持株会の自社株を計画的に経営の側に買い戻すのがいいと思っているんですよ。
そのためには、ある程度の資金が必要になりますね。
それを確保するためにも、経営をきちんとやって利益を上げる。それが一番大事なことではないでしょうか。

上場を目指す会社の株は魅力的だけれど……

さきほど、非上場会社の従業員持株会は、当の従業員にとってほとんどメリットはない、という話をしました。当事務所は税理士法人ですから、株の持分というのはないのですけれど、試しに社員に、「もし株式会社だったら株を持ちたいですか?」と聞いてみたことがあるんですよ。「欲しい」というメンバーは、1人もいませんでした(笑)。私が従業員だとしても、そう答えるでしょう。ですから、「社員に株を持たせて、モチベーションのアップを」などというのは、お題目に近いと思うのです。
 ただし、同じ非上場企業でも、IPO(株式公開)を目指しているのだったら、事情は違います。私もいくつかIPO支援をして、実現させた経験があるのですが、安定株主の確保に向けて、持株会の設立をアドバイスしたこともあります。株に関しては、ストックオプション(※)を使って、上場への士気を高めるような手立ても講じました。
そういう場合は、自社株を持つことが、会社を成長させるモチベーションに、直接結びつくわけですね。
その通りです。ところが、それでも問題の発生することがあるんですよ。私の近しい人間は、こんな想定外の事態に見舞われてしまいました。彼は別の仕事をやりながら、親族の経営する会社の役員に名を連ねていたんですね。ある時、その会社が株式公開を目指すことになり、社長に頼まれてたくさんの自社株を買い、保有することになりました。ところが、準備の途中で、社長がIPOを断念してしまったのです。その先、あらためてチャレンジする予定もありません。
それは困りましたね。IPOを目指す会社の株だったからこそ「価値」があったのですけれど、「普通の非上場会社」に戻ってしまったら、売るに売れないでしょう。
その人は、なにもIPOで大儲けしようとかいうのではなく、株を買うことで上場準備の資金調達に協力し、晴れて目的を果たした後は、すぐに市場で売って現金化しようと考えていました。ところが、方針転換でその予定が狂っただけでなく、思わぬ「荷物」を背負わされることになってしまったんですね。
 前にも話したように、非上場会社の株は簡単には売却したりできないにもかかわらず、資産として評価されるわけです。例えば、もし今の状態で知人が亡くなったら、相続財産としてカウントされ、相続税の課税対象になるのです。
 とはいえ、会社側に買い戻す余力はありません。仕方がないので、責任を感じる社長に私も力を貸して、関係する企業に株の買い取りを交渉したんですよ。その結果、買ってもいいというところが現れました。ただし、買い取り価格は二束三文、さらには一定以上の株式数を揃えることが条件でした。
それでも、「お荷物」を下すことができれば……。
そう思いますよね。ところが、その知人を除く出資者の多くが、首を縦に振らないわけです。「買った金額以下ではダメだ」と。現実には、その会社以外に買い取ってくれる者などいないことが明らかにもかかわらず、です。「損切」がいかに難しいものなのかも痛感させられた一件でした。

※ストックオプション:
会社の取締役や従業員が、一定の価格で会社からその株式を取得できる権利。IPOなどで株価が上昇すれば、利益を得ることができる。

ベテラン税理士が語る、
「節税をやり過ぎれば、会社はダメになる」

2億円超の自社株が2000万円に!?  ~事業承継最大のネックは「高い自社株」~
事業承継は、ずっとお話ししてきたようなテクニックも大事なのですが、やっぱり成否は“人”にかかっているんですね。どんなに苦心惨憺して後継者へのバトンタッチができたとしても、言うならばそれは「形を整えた」段階。肝心のトップに魂が宿っていなかったら、先代の築いた事業を維持、発展させることはできないでしょう。現社長からも、自社株対策などとは別に、「息子が早く一人前になれるよう、“教育”して欲しい」といった依頼を受けることが、よくあるんですよ。
どんなアドバイスをなさるのですか?
例えば決算書の見方をレクチャーしたり、こういう数字が上がっている時には、会社の中でこんなことが起こっているのです、という話をしたり。あとは、「会社を経営するとはどういうことか」という話もします。私自身、30歳くらいで独立して事務所を構えたのですが、今から考えると最初の10年ぐらいは「営業マン」だったんですね。自ら仕事を取ってきて、自らこなし、そのやり方を若手に教える。自分ではそれが経営だと思っていたのですが、そうではなかった。もっと人を動かして、チーム力で運営していく必要があると気づいたのは、40歳を過ぎてからです。そんな経験も踏まえて、語るわけです。
先生は、数多くの企業を見られていますから、そういう生きた事例も参考になりそうです。
もちろん守秘義務があるので、細かいことまでは伝えられませんけど、例えば同じ年代で社長になって、うまくいった人とそうでない人がいるんですね。それに照らし合わせて、「こういう点には注意したほうがいいですよ」といったアドバイスをすると、「それは気づきませんでした」という反応が返ってきたりします。
 まあ、身も蓋もない言い方ですが、会社がうまくいかない全責任は、経営者にあります。売り続けても儲からないのだったら、儲かるものを見つけるのが社長の仕事で、営業マンを叱っても売り上げは上がりません。
新社長にも、そういう自覚を持ってほしいということですね。
あえて付け加えておけば、これは後継者に限らず言うのですが、あまりに「節税、節税」が頭にある経営者が舵を取ると、危ないです。やっぱり私も若い頃は、「できるだけ税金を安く」と依頼を受けたら、その意に応えるべくあの手この手で節税策を講じました。それをやって社長に喜ばれたら、税理士冥利に尽きると感じたものです。ところが、そうやって儲かっているのに利益を出さずにきた会社が、リーマンショックのような事態に見舞われると、意外に脆かった。
 考えてみれば単純な話で、会社が大きくなれば設備も増え、売掛金も在庫も増える。要するに賃借対照表の総資産が大きくなっていくわけです。そのぶんをある程度自己資本でカバーしていかなければ、残りは借金です。実は、これが「節税ができている」状態なんですね。でも、それでは今はよかったとしても、未来は見えません。
 きちんと利益を出して、ある程度の税金を払ったうえで、少しずつ内部留保を積み上げていく。それに勝る会社はないというのが、ここまで税理士をやってきた私の結論なんですよ。
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