仕事を「見える化」する ~大企業のノウハウ、
問題点を中小企業経営に活かす・その3~

仕事を「見える化」する ~大企業のノウハウ、  問題点を中小企業経営に活かす・その3~

2019/3/5

 
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あなたの会社はどこで儲けているのか、反対に何がネックになって利益の頭を押さえているのか? そこを明らかにすることで、経営改善に向けてやるべきことも見えてくる――というのが前回のお話でした。ところで、会社の中で見えにくいのは、利益だけではありません。今回は、「社員1人ひとりがどんな仕事をしているのか」を明確化する重要性を、吉野拓朗先生(吉野拓朗税理士事務所)にうかがいます。

「働き方」の実態を明確にする

みんな忙しく働いているのに、トータルとしてみるとイマイチ成果が上がっていない、というようなことも、ありがちな話です。
そうですね。今回も、事例からお話ししましょう。ある電気通信事業者に対するコンサルティングの案件です。
 企業には、営業部隊などが使うデバイスを総務で一括管理したいというニーズがあるんですね。共通のアプリケーションを入れたいとか、紛失した時には総務がコントロールしてロックをかけたいとか。その通信事業者は、そうした要請に応えて、ユーザーの求める要件に従ってカスタマイズし、提供するサービスを始めたわけです。
ユーザーによって、必要なアプリケーションやセキュリティレベルなどが異なるわけですね。
そうやって開通した後の、例えば「オプションを追加したい」といった要望については、それまでの営業のラインとは別にコールセンターが受け取り、運用部隊がその数千台に反映させる作業を行っているのです。つまり、このビジネスの現場には、開設とサポートという2つのラインが稼働しているんですね。ところが、サービスを始めてみると、予想しえなかった状況になりました。
何か問題が起こったのでしょうか?
ユーザーニーズが、非常に多彩だった。考えていたよりも、オーダーメード型のビジネスだったわけです。そこに2つのラインの大人数の人間が入り組んで関わることで、結果的にコストが大きく膨らみ、顧客管理のハードルも上がる、という問題が発生しました。
想像するだけで、大変そうです(笑)。どういう方策を講じたのでしょう?
ひとことで言えば、仕事の「見える化」です。まず、営業、コールセンター、運用部隊それぞれに何人ずつが従事していて、具体的にどんな仕事をしているのか? それにどれくらいの時間を費やしているのか? を明確にする。
前回の利益の「見える化」と同じように、ある意味愚直に、実情をリアルに掴むことが大事なんですね。
それなしには、改善は進まないと言っていいでしょう。このケースでは、「見える化」によって、各部署がもっと合理的、効率的に連携できる具体策が見つかるはずだと考えています。
 中小企業でも、規模は小さいとはいえ、こうした「働き方」が成長のネックになっているケースは、少なくないと思うのです。

自分の会社を「わかって」いますか?

あえて付け加えておくと、コンサル業務では、このように従業員の仕事を「整理」し、その効果測定、要するに「どれだけ収益に貢献しているのか」を評価することがあります。その際、見落としてはならない要素があるんですよ。
どんなものですか?
その人が現在関わっている業務に直接費やしている時間だけでなく、その業務を始めるために必要な教育コストや、引継ぎ時間、業務のエラーによる追加作業時間も含めて効果測定する必要があります。1人でできる単純作業と、複数人で進める複雑な作業では、かける時間が同じだとしても評価が異なるためです。
広い視野を持って、事業全体を見ていく必要があるということですね。ただ、お話しいただいた利益や仕事の「見える化」にしても、中小企業の経営者が自らそれをやるのは、なかなか難しいように感じます。
そうですね。日々の仕事に忙殺されていて、そこまで考える余裕などないというのが実情だとも感じます。「何かおかしい」とお感じになるような場合には、プロを頼っていただくのもいいのではないでしょうか。
 お客さまの中には、「自分の会社のことはわかっているよ」とおっしゃる方もいます。お話を聞くと、確かに数字はきちんと押さえているんですね。でも、「では、本当に儲かっているのか?」となると、話は別だと思うのです。多くの会社は、工夫すればもっと利益を伸ばせるのに」というのが、私の偽らざる感想なんですよ。
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