税額の計算方法は2通り。その雲泥の差
~不動産譲渡所得が生む「悲劇」・その1~
税額の計算方法は2通り。その雲泥の差  ~不動産譲渡所得が生む「悲劇」・その1~

2019/2/13

 
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今年も所得税の確定申告の時期を迎えています。「私はサラリーマンだから関係ない」という方、ちょっと待ってください。もしも昨年不動産を売っていたら、やはり申告が必要になるかもしれません。しかも、申告のやり方を「間違える」と、大きな損をする可能性があるのです。どういうことなのか、不動産の税金に詳しい三園明先生(三園明税理士事務所)に解説していただきましょう。

譲渡所得にかかる税金は、こう計算される

今回は、不動産を売って利益を得た場合の税金についてお話しいただきたいと思います。そもそも、それを申告して税金を払わなければいけない、という認識が曖昧な方もいらっしゃいます。
そうですね。不動産などを売って得た利益を「譲渡所得」と言います。所得である以上、基本的に確定申告が必要になりますから、注意してください。ちなみに、売買が成立して不動産を登記すると、その情報は自動的に所轄の税務署に送られます。
隠しおおせる所得ではないわけですね。
はい。ただし、すべてのケースで申告しなければならないわけではないんですよ。減価償却のない土地を例に以下お話しします。例えば7000万円で買った物件が売った時に5000万円に値下がりしていたら、「利益」は出ていませんので、課税されることはありません。つまり、譲渡所得は、不動産を売った価格から買った価格や譲渡にかかった費用などを差し引いた金額をベースに計算され、その額を基に課税される仕組みになっているのです。
差益が大きければ大きいほど、高い税金を支払うことになる。
式で表しておくと「課税譲渡所得金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」となります。この場合の特別控除というのは、例えば公共事業のために不動産を売ったといった、一定の要件を満たす取引の場合に認められる特例です。
 不動産を譲渡した年の1月1日現在の時点で、その不動産の所有期間が5年を超える場合には、この金額に20.315%が課税されます。5年未満だったら、39.63%です。
「譲渡費用」には、どのようなものが認められるのですか?
不動産屋さんに払った仲介手数料、譲渡に必要な測量や立退料、場合によっては建物の取り壊しにかかった費用なども計上できるんですね。反対に譲渡費用に認められないものとしては、建物の修繕費、固定資産税などの維持費、抵当権抹消登記にかかった費用などがあります。
 さて、こう説明すると、さきほどの計算式にはすんなり答えが出るようにも思えるのですけれど、現実には大きな問題が起こることも少なくないんですよ。ネックは「取得費」です。

「実額法」か「概算取得費」か? 運命の分かれ道

それはどういうことでしょう?
今回売った不動産をいったいいくらで買ったのか、「わからなく」なっているケースが、けっこうあるのです。長い時間が経つうちに、売買契約書などをどこにしまったのか思い出せなくなってしまった。私が扱う譲渡所得の申告のうち、5分の1くらいは、そのようなお客さまです。
なるほど。不動産を買った親はすでに他界していて、契約書の類をどこにしまい込んだのか、わからないとかいうことも、大いにあり得ます。でも、困りましたね。買った価格が不明では、譲渡所得を求めるための「引き算」ができなくなってしまいます。
実は、その場合でも計算自体は可能なんですよ。取得費の算出方法には、実際にその不動産を購入した金額などによる「実額法」の他に、売った金額×5%で計算する「概算取得費」という2つのやり方があるからです。
 実額法について補足しておけば、これには原則として不動産の購入代金、建物の建築代金、購入手数料をはじめ取得の際に支払った対価がすべて含まれます。不動産取得税、登録免許税、立退きや測量、建物取り壊しの費用なども、場合によっては含めることができるのです。
そうした金額が明確にわかれば、実額法でやればいい。そうでない場合には、概算取得費で申告するしかない、ということでしょうか?
そこから、とんでもない「悲劇」が幕を上げるわけです。譲渡費用などは省くとして、仮に4000万円で購入した不動産が5000万円で売れたとします。実額法ならば、譲渡所得は5000万円-4000万円=1000万円。一方概算取得費を適用すると、取得費は5000万円×5%で計算されますから、250万円ということになります。この場合の譲渡所得は、5000万円-250万円=4750万円! これにさきほどの税率がかかってくるんですよ。これも単純に20%とすれば、前者は200万円、それに対して後者は950万円也です。
先生が「悲劇」とおっしゃる意味が、よくわかります。
次回も怖い話を続けましょう。
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