成長のステージが明確な美容室。
その「階段」を上るために必要なこと

成長のステージが明確な美容室。  その「階段」を上るために必要なこと

2018/9/25

 
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どの町にもある美容室。飲食店同様、息長く続く「繁盛店」もあれば、いつの間にか消えている店もあります。美容業に特化したベネフィットグループの田崎裕史先生によれば、「成長ステージが明確」なのが、この業界の特徴だそう。ただし、多店舗展開の前の段階で足踏みしているケースがほとんど、という現実があるようです。今回は、そんな美容業界の現状と課題、成功のための「勘どころ」などについて、先生にお話をうかがいます。

美容室は“ピラミッド”である

コンビニよりも多い店舗数


美容室は、コンビニの店舗数(約5万5000軒)よりも多いと聞いたことがあります。


信号機よりも多いらしいです(笑)。全国で約24万軒あって、年間2万軒ぐらい新規開業して、同じくらい減るという状況なんですよ。

けっこう入れ替わりがあるんですね。


そうですね。開業に関して言うと、もちろん「自分の理想の店を出したい」という方も多いのですけど、「消極的独立」のようなケースも、けっこうあります。

「消極的独立」ですか?


若い人は、まずアシスタントとして店に雇われて、スタイリストになっていくわけですね。で、そこそこの年齢になってくると、そこに居にくくなることがあるのです。店側からすると、扱いにくくなるというか。「だったら自分でやろうか」みたいな感じで、独立する。
 かつて独立と言えば、5人とか10人とかで“旗揚げ”することがあったのですけど、今はそんな感じで、1人、2人でという形がほとんどですね。そんな事情もあって、全体として店の小規模化が進む傾向にあります。

「業界環境」はどんな感じなのでしょう?


ひとことで言えば、市場は成熟し、過当競争の状況にあります。その中でも、数は多くはないけれども、右肩上がりの成長を続けるところと、十年一日の商売を続けている店との差が大きくなっている感じですね。まあ、これはこの業界に限った話ではないと思いますが。
 直近で一番業界が盛り上がったのは、1990年代後半から2000年ぐらいまでの、“カリスマ美容師ブーム”の頃でしょう。オーナーさんがフェラーリとかを乗り回して……という話を聞いたりもしますけど、今はそんなノリはありませんよね。
 ただし、なかなか潰れないのも、この業界の面白いところなんですよ。「小規模化が進んでいる」と言いましたが、1人、2人でやっているぶんには、なんとか食べられるのです。

美容業界の“ピラミッド”とは?


その「1人、2人で」という美容室は、比率で言うとどれくらいになるのですか?


美容業界って、「3層構造の“ピラミッド”」なんですよ(下記図参照)。

美容室のピラミッド

「1人~2、3人くらい・売上1000~2000万円」のゾーンが、比率的に言うと70%くらいを占めていて、その上に「5~7、8人くらい・売上3000~5000万円」のゾーンがあり、ここが全体の20~30%。頂点は、「2、3店舗から多いところで10店舗くらいの多店舗経営をしていて、売上は1億円超」。比率は5~10%といったところ。大まかに言って、こんな構造になっているのです。
 この7割のゾーンには、もちろん開業したてで、これから事業を大きくしていこうと意欲満々の人たちもいますが、「なんとか食べられる」状態に安住している方たちも多くいます。その方々はあくまでも美容師で、経営者の感覚はありません。


「町の床屋さん」に近いイメージですね。


誤解なきように申し上げておけば、私はそういう仕事の仕方が間違っていると言うのではありませんよ。当然のことながら、人を雇うのには、人件費をはじめ多くのリスクを伴います。立地や客層などを考えれば、1人か2人、それも夫婦で店を営むのがベターというケースは、いくらでもあるでしょう。

増える「面貸し」スタイル


今、伸びている美容室って、どんなところなのですか?


業態的に目立つのは、いわゆる「面貸し」ですね。スタイリストを雇うのではなく、美容室のスペースを貸して働いてもらう、というシステムです。店にとっては、空きスペースの有効活用ができ、雇用による固定費のリスクを減らせるといったメリットがあり、一方独立して働きたい美容師は、自分の店を持つのと違い、家賃負担の必要がありません。

双方、Win・Winの感じがしますけれど。


そうとも言えない現状もあるんですよ。実は「面貸し」にもいろいろあって、時間や月決めで給与を支払い、スペースをレンタルする美容室もあれば、完全歩合制で「稼いだお金の何%があなたの取り分」というところもあるのです。
 後者は、多くの場合、「安売り系」の店なんですね。とにかくスタイリストを集めて、数をこなす。今増えているのは、このスタイルの美容室です。指名とかリピートとかの概念もなく、ひたすら1人でも多くのお客さんの髪を切る、というイメージ。

それでも美容師さんが集まるのですか?


普通の美容室よりも、目先の手取りはいいんですね。頑張れば40~50万円稼ぐこともできるでしょう。ただし、あくまでも「頑張れば」です。無理のきく30代ならば可能でしょうけれど、長続きするかといえば、大いに疑問だと私は思います。
 他方、店のほうは、仮に半分スタイリストに渡すとしても、残りは確実に収入になります。儲けるビジネスモデルとしては、「正解」かもしれません。

さきほどの“ピラミッド”でみると、先生のクライアントには、どのゾーンの美容室が多いのでしょう?


いや、まったく業界の縮図のようなもので、現在250ほどのクライアントの構成は、あの比率そのままなんですよ。ただ、オーナーさんのタイプで言えば、真面目に人を入れて育てていこうという方が大半です。

偶然そういう人たちが集まったわけではないですよね。


当事務所のマーケティングの基本戦略は、ずっとメルマガだったんですね。顧客になってくれそうな方々のリストを作成して、メルマガを送るわけです。自分自身で、土日も書きました(笑)。
 その内容が大事で、例えば「人をこう使えば、こんなに儲かります」というような記事を書いていれば、そういう方が集まってくる。私は、「社員を大切にして、事業も伸ばしていきましょう」という基調で発信し続けましたから、やはり「それが大事だ」と考える人がクライアントになってくれたというわけです。

美容室の「生産性」とは何か?

とにかく「人」が命の経営


「業界は過当競争」というお話がありましたが、ここからは、美容室が抱える具体的な課題についてうかがっていこうと思います。経営者の方が、今一番頭を悩ませていることは、何ですか?


ズバリ、「人」ですね。みなさん、美容師の確保に四苦八苦しています。我々のような税理士事務所だったら、税理士でなくてもお客さまと対応することができますけど、美容室では、美教師の資格がないと仕事はできません。
 その美容師さんですが、美容学校の生徒者数自体が減っているのです。文部科学省が昨年暮れに発表した「学校基本調査」によれば、2017年度の入学者数は約1万8000人で、5年連続で最低数を更新しています。卒業者数も約1万6000人と、ここ10年間で最低を記録しました。卒業者数は、2005年には約2万4000人でしたから、10年ちょっとで35%減ったことになります。まあ、少子化の影響もあるとは思いますけど、「不人気」ぶりは明らかでしょう。

どこが敬遠されているのでしょうか?


やっぱりかつての“カリスマブーム”の時のような華やかさも薄れ、長時間の立ち仕事のわりに給料はそんなに高くなさそうだ、というところがネックになっているように感じます。昔と違って、そのあたりの詳細な情報が、どんどん入ってきますから。
 いずれにしても、その少ないパイを美容室同士が奪い合うような状況になっているんですね。育てたくても、人がいない。集客ができても、店舗展開がなかなか難しい、という環境にあるのは事実です。

それは大変ですね。機械を入れて省力化できるような仕事ではないですし。


そう、AIでは取って代われないのです(笑)。お客さまに来てもらえなかったら商売あがったりですから、集客は大事です。ただ、こちらは、例えば初回割引のカードを配るだとか、比較的容易に様々な工夫ができるでしょう。それに比べると、人材採用は骨が折れます。見方を変えると、「集客よりも採用が成功のカギを握る時代になっている」と言えるのではないでしょうか。

時間は、お客さまに合わせるのではなく、自らコントロールする


美容院の経費って、何が大きいのですか?


ここでも「人」、人件費です。次いで家賃、広告費、水道光熱費の順ですね。けっこう経費が出ていきますから、すごく利益率が高い商売とは言えません。

それだけ人にコストをかけるのだから、少しでも効率的に働いて、利益を生んでもらうことが大事ですよね。


その通りです。考えなくてはいけないのが、美容師さんの「生産性」です。
 生産性という言葉自体は、この業界ではよく使われるんですね。ただ、その意味をよくよく聞いてみると、「1人当たりの売上高」なのです。この定義だと、生産性を上げようと思えば思うほど、“ブラック”になっていく可能性が高い(笑)。

長時間働くほど、売上は上がります。


ただし、今は世の中もそれを許してはくれない流れになっていますから、労働時間を短縮しつつ、ちゃんとした儲けが出るようにしなくてはなりません。
 ここで意識すべきは、「人時生産性」なんですよ。「1人当たり・1時間当たりの生産性」です。クライアントには、これを強く意識するようにアドバイスします。

時間の概念が大事だということですね。


そうなんです。さっき“ブラック”うんぬんと言いましたが、逆に雇われている美容師さんは、出勤して店にいれば働いている気分になりがちなんですね。でも、実際にお客さまに対応せずにただ立っているだけの時間は、美容室には1銭のお金も入っていないのです。給料だけが出て行っている。

私も経営者ですから、よくわかります(笑)。


だから、その空き時間をいかに少なくするか、「人時生産性」を向上させるのかが、売上を伸ばすための大きなポイントになるわけです。

具体的に、どのようにしたら向上させられるのでしょう?


もちろん、集客を伸ばすというのが前提ですが、美容室のような業態の場合、重要になるのが予約の取り方なんですよ。2時間単位できちんと時間予約が取れていれば、ロスは極限まで抑えられるでしょう。中途半端に30分の空きができたりすると、その次の予約が入れられなくなったりするわけです。
 例えば、「明後日の午前中は空いてますか?」という電話がかかってきた時に、「空いてます。何時にしますか?」という対応では、アウト。そうではなくて、「10時からではいかがですか?」と誘導して、埋めてしまうことが大事になるのです。

確かに、そうすればそれ以降の予約も取りやすくなるでしょう。


お客さまの時間に無条件に合わせるのではなく、店の側がそれをコントロールするのです。そういう細かなところをきちんとやらないと、売上はなかなか積み上がっていきません。ところが、意外にそれができていない美容室が多いわけです。
 繰り返しになりますが、今まではそんな感じでやっていても、20時、21時まで営業して、トータルで結果オーライになったかもしれません。それが、「働き方改革」で18時、19時で終わりですとなったら、とたんに苦しくなるのが、目に見えています。

そうならないように、発想の転換が必要ですね。

「普通」にやっていれば、税務上問題になることは少ない


一般的に言って、美容室の税務ってどうなんですか? 業種ならではの難しさがあるとか……。


いえ、特にそういうことはありません。真面目に、「普通」にやっていれば、税務署に目を付けられるようなことも、まずないですね。まあ、「現金商売」なので、二重帳簿を作って売上を抜いていたなんていう話もあるようですけど、少なくとも当事務所のクライアントには皆無です。

そうすると、税務調査(※1)もあまりないのでしょうか?


全体的には少ないですね。業界自体、8割が個人事業で、そもそもここにはほとんど調査は入りません。法人になっていて、そこそこの規模だと、普通の企業のように3年に1回とかの調査はありますが、それで多額の所得隠しが見つかったというような話は聞いたことがありません。
 この前、当事務所のクライアントが税務署に指摘されたのは、「友人の髪をカットした分を、売上に計上していないのではないか」というものでした。

わざわざ税務調査で指摘されるようなものなのかどうか(笑)。


そこで喧嘩してもしょうがないので、修正申告しましたけれど。あとは決算賞与(※2)の書類が残っていないとか、期ずれ(※3)の指摘とか。いずれにしても、少なくともこれまで私が経験した税務調査で出てきたのは、他の業種で問題になるような事例に比べたら、スケールの小さな話がほとんどです。

※1 税務調査
国税局や税務署が、納税者の税務申告が正しいかどうかをチェックするために行う調査。任意調査と、国税局査察部が行う強制調査がある。

※2 決算賞与
冬や夏の賞与とは別に、企業の業績が良かった時に支給される賞与。

※3 期ずれ
売上や経費が、本来計上されるべき年度とは異なる年度で計上されている状態のこと。

設備投資は、飲食店より少なくてすむけれど……


美容室は経理自体もそんなに複雑ではなく、パターン化もできるんですね。例えば、基本的に資金繰りを考える必要がありません。仕入代金の支払いが、売上代金の回収よりも早い卸売業や建設業などの場合は、「運転資金」を借りて支払いを行うこともあるわけですが、美容業はその必要がないのです。仕事が終わったらその場で入金され、材料費などの支払いは先でいい「現金商売」だからです。

まとまった資金が必要になるのは、開業したり、あるいは店舗を増やしたりする時ということになりますね。


そうです。でも、そのお金は「運転資金」ではなく、「設備資金」です。金融機関から見ると、内装工事費とか美容機器の購入費用だとかの使途がはっきりしているため、融資は比較的受けやすいのです。半面「運転資金」のほうは、基本的に「いらない」お金のはずですから、美容室への融資のハードルは高いんですよ。

なるほど。開業時には、そうしたことも頭に入れておく必要がありますね。ところで、美容室の設備投資額というのは、飲食業などに比べてどうなのでしょう?


厨房などに何千万円単位でお金のかかる飲食に比べれば、安いですよ。広さ20坪(約66㎡)、セット面4つくらいで1000万円前後、外装まで含めて2000万円といったところでしょうか。
 ただし、今のはあくまでも平均値です。のちのち成功する人を見ていると、この時点でいかにコストを下げるかを考えていますよね。質素だけどおしゃれな雰囲気を、半分の金額でつくり出すとか。逆に、内外装にやたらお金をかけたがる人がいます。「これが夢だったんだ」っていう感じで。

気持ちはわかるけど……。


考えてみて欲しいのですが、1000万円を5年で借りたら、月々の返済額は16万円ですよね。それが2000万円になったら、33万円にハネ上がる。それだけで、アシスタントが1人雇える金額です。
 そこを我慢して500万円とかに抑えられれば、そのぶん人も雇えるし、広告宣伝費に回すこともできる。開業してから軌道に乗るまでの展開を速くすることができるのです。「本当に夢をかなえたいのだったら、そこを考えましょう」ということは、開業時には必ずアドバイスしています。

やはり“王道”を行くのが一番早い

「社長の考え方」が成長を左右する


さきほど、「集客よりも人材採用が、成功のカギを握る時代になっている」というお話がありました。厳しい環境の中で、いい人材を確保していくためには、どうしたらいいとお考えですか?


「人材難」について1つ補足しておくと、従来は美容学校を出たら美容室へというのが当たり前だったのですが、今はそうではありません。まつ毛サロンとかエステサロンとか、選択肢が広がり、しかも引く手あまたなんですね。立ち仕事の長時間労働、しばらくは「修業」で給料もよくない美容室にわざわざ行くよりは、そちらのほうが楽に稼げるんじゃないのか? 事実かどうかは別として、そんな感覚で類似業種に就職するという流れが生まれていることも、美容室が苦戦する一因になっているようです。
 さて、そうした競合にも打ち勝って、美容師さんを確保していくためにどうするか? 第1に、今は若い美容師たちにとって「売り手市場」なのだということを、しっかり認識すること。そのうえで、やはり“王道”を進むしかないというのが、私の答えです。

この場合の“王道”とは、何ですか?


まず、当たり前のことながら、働く人のことを真剣に考えるということですよね。それなしに、自分の儲け優先で、例えば「数をこなしさえすれば儲けられるよ」といったスタンスでいたら、一時的に人は集まっても長続きはしないでしょう。将来的に自分を支えてくれる幹部も育ちようがありません。
 もちろん、気持ちだけでは足りません。それをいろんな労働条件、労働環境に反映させる必要があります。

そういう「良さ」を、どうアピールしていくのかも大事になりますね。先生は、どんなアドバイスをなさるのですか?


例えば、「自分は、社員のことをこんなに思っています」「そのためにこうします」というパンフレットを作る。何度も説明会を開く。実際に職場を見学してもらう場を設ける――そういった努力を愚直にやることが大切だ、と話すんですよ。テクニック的には、紹介ルートを開拓する、広告に力を入れる、とにかく「入りたい」という人がいたら採用して見極めるなど、その店やオーナーに合ったやり方を提案します。
 ともあれ、これも成功する人を見ていると、事業の先を見つめられる人であり、心から社員やお客さまのために頑張るんだ、と思える人なんですね。そういう「利他」の精神を備えた人のところに、人は集まるのではないでしょうか。

あらためて、法人化のメリットは?


さきほど、「美容室は8割が個人事業」というお話がありました。当然、ある規模になったら、法人化を考えるということになると思いますが、あらためてそのタイミング、メリットについて教えてください。


順を追って説明すると、当事務所は美容院の開業からご相談に応じるケースが多いのですが、よほどの理由がない限り、個人でのスタートをお勧めします。法人をつくるのにも、コストや手間はかかりますから。
 法人化の話が出るのは、売上が伸びてきて、経費などを除いた利益でだいたい700~800万円ぐらいになった頃ですね。個人の所得税は、累進課税といって所得が増えるにつれて税率も高くなっていくので、「増税感」が大きくなるんですよ。

法人税の税率を逆転するんですね。


そうです。加えて、法人化すれば所得を分散する効果も生まれます。どういうことかというと、法人になると、オーナーは会社から給料を受け取る形になります。会社の儲けと個人の儲けが分かれて、それぞれに税金がかかるわけですね。
 会社は、オーナーに報酬を支払うことで、儲けが減ります。個人のほうも、丸々自分の利益にするよりは、給料にすることで大幅に所得を減らすことができるでしょう。また、法人のほうが給与を支払う人間を増やしやすいこともあります。1ヵ所に所得が集中するよりも、このように分散したほうが、基本的にトータルで支払う税金は少なくてすむ可能性が高いです。

利益が増えるほど、法人化のメリットも大きくなりますね。


法人化のメリットは、節税効果だけではありません。「株式会社」になれば、対外的な信用力もアップするでしょう。厳しい環境にある人材採用でも、プラスに作用するはずです。

あえてデメリットを挙げるとすれば?


社会保険の加入義務が生じるので、個人事業ならば必要なかった社会保険料を負担しなくてはなりません。決算書類や申告書類が複雑化し、提出先も増えるなど、事務作業が煩雑になるほか、前に触れた税務調査に入られる可能性が出てくるというデメリットもあります。まあ、これらは美容室に限ったことではありませんが。

美容室成長のステップを知ろう


「開業時からお手伝いすることが多い」ということですが、そういう方たちに対して、どんなお話をなさるのですか?


「どんな店をつくるのか」、コンセプトを明確にしましょう、という話をしたり、具体的な資金調達の仕方をアドバイスしたり、等々、ここではとても語り尽くせません(笑)。
 ただ、美容業界に特化している事務所の強みだと思うのですが、我々にはその先の「成長のステージ」が見えるんですね。途中で挫折したり、あえて現状に留まったり、というケースももちろん多いわけですが、順調に売り上げを伸ばして多店舗展開を実現させるところは、みんな同じステップを踏んで成長していくのです。そういう流れも踏まえて、展望を語るようにしているんですよ。

どのような「流れ」になるのか、簡単に説明してください。


実は、最初にお話しした「ピラミッド構造」にも重なっていくのですが、開業して1店舗を軌道に乗せるのが、最初のステップです。数人のスタッフを抱え、このステージで法人化する場合もあります。

「ピラミッド」の一番下の段階ですね。でも、ここに70%いるのが現実なんですよね。


開業前には、大部分の人が多店舗展開を夢見ています。それがなかなか実現できないのは、この段階で「疲れて」しまうことが、最大の理由なんですよ。自分もスタッフも、なんとか食べられるところまで来た。でも、正直“いっぱいいっぱい”で、この倍の仕事をするなんてとても無理だ、ということになるわけです。
 ですから、成長ステージにおける最大の壁は、「2店舗目に行けるかどうか」というところなんですね。

なるほど。その壁を破る人は、どこが違うのでしょう?


自分の仕事量が倍になってしまうのでは、店舗を増やすのは不可能です。ですから、カギになるのは、自分の代わりができる人=幹部の育成ということになります。

ここでも、やはり「人」が重要なんですね。


技術だけでなく、人間性も大事です。新店を任せたとたんに辞められたり、スタッフを連れて独立されてしまったりしたら、目も当てられません。そうならないためには、第2、第3の幹部も育てて、1人に依存しない組織体制を築くことも大事になるでしょう。

そうなると、かなりマネジメントに力を割く必要がありそうです。


そうです。2店舗目を実現して、さらにその上の多店舗展開のステージ、数字で言えば年商1億円、授業員10人超のレベルに進む頃には、自らはスタイリストから経営者に、完全に脱皮する必要があるのです。
 「2店舗目が壁」と言いましたが、店舗が増えてくれば、単純に言って財務面でのリスクは軽減していきます。失敗して撤退となっても、既存店の売上でカバーできる部分が増えていきますから。

1店舗で留まるか、そこから踏み出すのかが、分かれ道になるというのがわかります。


私が「多店舗経営を目指すべきだ」と言う大きな理由は、みんな歳を取るからなんですよ。今はバリバリ働いていても、いつまでそれが続けられるかわかりません。1店舗でやっていて、将来にわたって現在の収入を確保できる保証があるでしょうか?
 年を取るのは、店のスタッフも同じです。従業員の幸せを考えるのなら、やはり会社の事業を拡大させていくのが、経営者の使命だと思うのです。
 なにより、みなさん多店舗展開したいという思いを秘めて開業するわけですね。その夢を叶えるために、今後も蓄積したノウハウを駆使しつつ、お手伝いしていきたいと考えているんですよ。
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